退魔の領域 第05話 伊吹咲菜⑤ 肉洞窟①白濁粘液行進①

「最悪...最悪よ…」

 

霊力で強化した脚力で走ること数分。

咲菜は肉の洞窟を見下ろす位置に立っていた。

霊力を放出した影響で、ピッタリとサイハイニーソックスに包まれた脚が甘くしびれているがそれはまだいい。我慢できる。

 

 

「早く入らないんですかぁ?時間はどんどん過ぎて行きますよぉ?」

 

領域に満ちる魔力と淫気のおかけで飛べるようになったリーリエは、咲菜の後方二メートル程度の位置を自分の定位置として定めたようだ。

どうやっているのか、翼をはためかせず、滞空しながらニヤニヤと咲菜を急かす。

 

「くぅ…っ!」

 

咲菜の嫌な予感は当たってしまった。

 

最初の地点から洞窟付近のこの位置まで、地形全体が傾斜して、洞窟を中心としてみると緩いすり鉢状になっていた。

今、咲菜が見下ろすこの肉洞窟はそのすり鉢状の地形の中心に位置する。

全てのものが肉で構成され、基本的に媚薬効果のある白濁粘液を吐き出す領域において、このようなすり鉢状の地形の中心には、当然、吐き出された白濁粘液は流れをもって集まり、溜まる。

 

肉の洞窟は咲菜の眼下、十メートルほどの位置にポッカリと口を開けていた。

そこへ、溜まった粘度の高い液体がびちゃびちゃと音をたてて洞窟へと止め処なく流れ込んでいる。

 

「あの流れの強さだと洞窟のなかの水深は大体五十センチから七十センチくらいなんじゃがないですかぁ?咲菜ちゃんよかったですねぇ。白濁液で窒息死って言う最悪の死に方だけは避けられそうで」

 

リーリエが背後からケラケラと咲菜を煽る。

今だけは絶対に振り向きたくない。

無駄だと思っても貴重な霊力を全開で使って、その首を切り落としてしまいそうだ。

 

「くぅうううっ…〜っ…」

(ほ、本当にあの汚い白濁液の流れの洞窟の中に入っていかなきゃならないの!?ブーツにつくだけでも嫌だったのに…それが七十センチ…?こ、腰まで沈むじゃない…)

 

咲菜は声にならない声を上げて応能する。

白濁液に腰まで浸かり、洞窟を進む自分の様子を想像すると、淫紋を刻まれたあたりがじゅん、と快感に打ち震えるのがわかった。

 

「さぁさぁ〜早くいっちゃいましょう〜。それにぃ〜あんまり焦らすとぉ〜、向こうはもう我慢できないみたいですよぉ?」

 

リーリエがそういったとき、咲菜も一瞬遅れて気づいた。

下、周囲の肉床から一斉に触手が立ち上がった。

ピンク色の女性の手首程度の体をうねらせる。先端は人間の唇のような器官がパクパクと開閉し、白濁した粘液をよだれのようにぼたぼたとたらしている。

その数、見える範囲で数百。咲菜を囲むように周囲二十メートルを囲んでいる。

 

「こいつら...上等じゃない...」

 

咲菜は、左手に握った刀の鞘の安全装置を外し、柄に手を当てる。

膝を曲げ、腰を落とし、抜刀の構え。二の腕まである滑らかな極薄グローブに包まれた掌を通して霊力を刀に流し込む。

 

「…っぅ〜!」

 

咲菜は、掌から霊力を放出する快感にわずかに眉を寄せ、奥歯を駆使ばり、長く細い指をピクンと震わせる。

 

その瞬間、触手が動く。

淫魔生物にとってごちそうである霊力の発露に興奮して周囲の肉床から生えたの触手たちが蛇のように一斉に咲菜へ襲いかかる。

だが、咲菜のほうがずっと早い。

霊力で強化された脚力で、肉床を力強く蹴り、低い姿勢で触手の群れに突進し、刀を振り抜く。

一閃。咲菜の背後で、彼女に飛びかかった五本の触手が一気に切断される。

 

「咲菜ちゃんつよ〜い!でもいいのかぁそんなにバシバシ斬っちゃってぇ」

 

リーリエが咲菜の刀捌きを褒めながら両手を叩く。

 

切断された触手の断面から盛大に白濁粘液が吹き出す。強靭な触手の血管をバッサリと切断してしまったのだ。その勢いは尋常ではなかった。

 

「し、しまっ!....っぅうう〜〜〜!!!」

 

咲菜豪雨のように降り注いだそれをもろに浴びる。

耐水コートから露出している、霊力を豊富に含んだシルバーピンクのつややかな髪や紅色の頬、桜色の唇に白濁液がべしゃべしゃと付着する。

 

「くぅううう〜〜〜〜〜っ!!!」

 

生理的な嫌悪感が危機意識を一瞬上回り、咲菜はその場で空いている左手で唇を拭う。

それが致命的な隙になった。正面から触手がまっすぐ、突っ込んでくる。

 

「っ!」

 

咲菜はギリギリで反応し、右手の刀を正面に構え、峰に左手をそえ、触手に対し防御的に向けた。触手はそこに突っ込み、自分の勢いにより縦に切り裂かれる。

引き裂かれた肉からはもちろん白い白濁液が濡れたスポンジを絞るように弾け出る。

白濁液は、触手と整体していた咲菜にべっしゃりと付着する。

 

「きゃぁああああーーーー!」

 

至近距離からホースで水をぶちまけられたようなものだ。

思わず普通の少女のような素の悲鳴を漏らしてしまった。

ぶちまけられた白濁液は、耐水コート、そして、隠しきれていなかった前腕や脛、装甲ヒールブーツを真っ白に染める。

 

「いいですねぇ〜わたしの見たかった光景です。咲菜ちゃん初めての雑魚淫魔生物との戦闘大ぴーんち〜〜!」

 

リーリエが安全な空中から咲菜を見下ろし、煽ってくるが、最早、咲菜にそれを聞いて半輪するだけの余裕はない。

反射的に肉床を蹴って、後ろに下がる。

 

(これぇ〜〜〜〜!!!やっぱり媚薬効果がぁ...!)

 

白濁液のついた唇がじんじんと痺れる。障壁を張っていても淫魔生物の体内から出た白濁粘液の原液をかぶれば媚薬効果の中和が追いつかない。

 

(叩ききれば、粘液が吹き出してそれをかぶっちゃう...!最悪じゃない!)

 

切断はまずい。咲菜は刀を返し、峰で近づいてきた触手を叩き落とした。

だが、触手は全く堪えた様子をみせずにすぐさまぐねぐねと身悶えして起き上がってきた。

 

「くっ!こいつら!!」

 

(骨がない相手に峰打ちじゃダメだわ…全然効果がない…それにこの数っ!)

 

咲菜は、髪や顔についた白濁液を拭いたい欲求に耐えながら、腰だめに刀を構え、考える。

周囲は同様の触手に囲まれている。これだけの数を相手にするには、切断して殺し、確実に数を減らして行くしかない。霊力も体力も有限なのだ。

だが、切断すればさっきのように白濁媚薬粘液をかぶる。それはもう嫌だった。

あんなものを身体に受け続ければすぐに障壁の媚薬中和効果はオーバーフローする。

そして、筋肉と肉の化物にみねうちは効果が薄い。もろに当ててもさっきのようにすぐ起き上がってくる。残る手段は...

 

「咲菜ちゃぁん〜もう諦めて肉洞窟に入りましょう〜?悩みながらこの子たちと戦って、白濁媚薬をかぶるのはバカみたいだし、時間のむだよぉ〜?」

 

リーリエがまさに今、咲菜が直面し悩んでいる問題を妥協して解決するために考えていたのと同じことを囁いてくる。

 

「うるさいわよ!!!ちょっとだまっていてよ!!」

 

咲菜は触手郡から目を切らずに怒鳴り返す。

 

(こいつには、本当にイライラさせられるわ...でももうそれくらいしか方法は...)

 

咲菜が背後で口を開ける肉洞窟を横目で見やり、逡巡する間にも肉床からは続々と触手が立ち上がり、その数を増やしている。時間も霊力も無駄に使うわけにはいかない。

 

「くぅぅぅぅ〜〜〜〜っ!」

 

咲菜は声にならない声を絞り出すとハイヒールブーツで肉床を蹴り観念して、蟻地獄のように口を開ける肉洞窟に飛び込んだ。

 



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