退魔の領域 第02話 伊吹咲菜② 戦闘準備

咲菜は連絡を受けた集合地点へと到着していた。

領域の入り口が確認されたのはオフィス街の地下駐車場だ領域。

そこには、領域へ突入する退魔師をバックアップするために退魔機関のありとあらゆる専門家が集っていた。

退魔機関の現地スタッフは全員が女性である。

領域へ突入するのは、淫魔から見初められ、淫紋を刻まれた女性退魔師だ。

そして、領域へ入る退魔師は『そういう』目に合うことが決まり切っているため、スタッフが全員女性なのは彼女らへのせめてもの配慮だ。

バックアップスタッフである彼女達はそれぞれの専門ごとに天幕を張り、咲菜のために領域突入装備を整えていた。

 

「栞梨と玲衣は?」

 

咲菜は彼女の所属する撫子班の残りのメンバーの到着状況を各種通信を受け持つ通信天幕の担当者に尋ねた。

 

「咲菜さん、お疲れ様です。お二人とも直前の任務が長引いていまして到着まで少しかかります」

 

「そう、わかったわ。突入可能になるまであとどのくらい?」

 

「現在領域の出入口を開口、安定処理に入っています。突入は2時間後です。彼女たちもそれまでには到着します」

 

「先に装備を整えてる。ついたら教えて」

 

咲菜はそういうと、装備天幕をくぐった。

装備天幕にはスタッフはいない。突入前の退魔師の邪魔をしないためだ。

 

天幕の中央には、水着のような素材のハイネックレオタードとタクティカルハーネス、太ももまでの長さで極薄のタイツ素材で作られたサイハイニーソックス、サイハイニーソックスと同様の極薄タイツ素材で作られた二の腕までを包むグローブ、そして、いくつかのコンテナケースが用意されていた。

まるで、新体操の衣装に見えるが科学と退魔の融合によって作られた超軽量、極薄、強靭な新素材によるハイテクスーツだ。

霊力を流すことで、皮膚にピッタリと張り付き、まるで何もつけていないかのように軽快に動くことができ、ちょっとやそっとの攻撃では破けない。

平安の時代とは全く違うデザインだが、これが科学の粋をもって作られた退魔師のための戦闘装束、狩衣だ。

 

咲菜は無言でコートを脱ぐと、シャツ、スカート、タイツも同様にした。

そして、ハイネックレオタードを手に取る。

光沢を放つそれに両方のつま先を通し、引き伸ばしながら一気に胸元まで引き上げる。

お尻の食い込みを直し、背中のジッパーをうなじまで引き上げる。

ハイネックレオタードは胸から首にかけて、半透明のタイツ素材で構成されている。

そのため、咲菜の身体、胸元を透かしてみせ、形のいい胸の谷間が丸見えだ。

また、ハイネック型のため袖がなく、綺麗な肩と脇は強調丸見えだ。

彼女が腕を動かすたびに無毛の腋窩までもがちらちらと見え隠れしている。

首や背中のラインが半透明のタイツ素材で中途半端に隠されている分、全裸より卑猥に見えるかもしれない。

 

次にサイハイニーソックスを手に取ると、くるくると小さくまるめ、そこへつま先を差し入れ、右の美脚に滑らかな黒いタイツ布地を被せていく。右脚がサイハイニーソックスに包まれると左足も同様にした。

 

ニーソックスの次は、グローブだ。ニーソックスと同じ生地でできたグローブを手に取り、脚と同様に右側の手から通す。左手にも同じようにした。

黒の極薄半透明の生地に包まれた両手の指を伸ばし、反らせ、手に生地をなじませる。

最後にハーネスを腰にまくと、形状記憶合金でできたそれは、腰まで切り上がったハイネックレオタードでは全く隠れていない鼠径部にピタッと食い込んだ。

 

「っん...」

 

股間に近い位置への刺激は淫紋で敏感になった身体には毒だ。

咲菜は、下腹部に広がるジュンとした感覚を努めてそれを無視し、すべての装備が整ったことを確認する。

そして、少し逡巡してからベルトのタッチスイッチに触れた。

 

「あっ!」

 

今度こそ、咲菜の桜色の唇が薄く開き、明確な熱い呼気を伴った声が漏れた。

すべての衣装が2割程縮み、咲菜のスレンダーでありながら出るとこは出ている身体に締め付け、ぴっちりと食い込んだ。

 

「ふぁ...っ...くっ」

 

全身から感じるスーツの密着感に思わず顎が上がり、声が漏れる。

咲菜は目をつぶり、歯を食いしばりそれに耐える。

サイハイニーソックスに包まれた太もも、ハイネックレオタードから露出した脇と横乳、サイハイニーソックスに包まれた太腿、グローブに包まれた二の腕、胸の谷間、そういった部位が引き絞られる。

咲菜の身体は日頃からのトレーニングで見事に磨き上げられ、全く無駄な肉がない。

だが、そこから、スーツにより肉が絞りだされ、衣装と肉体の境界線にむにっと乗る。

ニーソックス、レオタード、グローブは光沢を増し、咲菜の身体をぴっちりと彩った。

淫紋で敏感になった身体をなめらかなスーツに締め付けられる感覚はたまらなく甘美だった。

 

「はぁ、はぁ...っ...」

 

(くそっ...いつもより...感じる...)

 

咲菜は普段より数倍敏感になっている自分の身体を恨めしく思う。

思わず漏れたいやらしい声を恥じながら身体とスーツの密着具合を確かめる。

腰をひねり、腕、脚を上げ下げる、胸を反らす。キュッキュッっとスーツと肉がこすれる音が数分続く。

狩衣が問題なく自分の身体へピッタリと装着されたことを確認した。

 

咲菜は、サイハイニーソックスに絞り出された太腿やハイネックレオタードに締め付けられ強調された胸の谷間、クロッチの食い込んだ股間を見ながら顔を赤らめる。

淫紋の影響が身体の変化にも現れているのだ。.胸もワンサイズ大きくなったし、股間と太腿にも脂肪がつき、身体が以前よりも丸みを帯びている。

 

(くぅぅぅ...スーツの食い込みがやっぱりきついぃ...リーリエ、絶対に許さないわ)

許さないわ

スーツの密着感で乱れた心と呼吸を整えると、先ほどのボタンの横にある別のスイッチに触れてつぶやく。

 

「着装!...くっ!あ、あ、あ、ふぅぅっ~~っ!」

霊力を急激に吸い上げられる感覚にまた声を漏らす。

 

(おお〜〜〜っ?!これっ、淫紋の…おぉぉ…???影…っ響…っ...霊…力……使うのっ…!思ったより...きっつい〜〜〜!狩…衣…着…るうう…ぅだあ…あ!け……ぇぇっな…あぁのおおっに…いぃっ!!)

 

咲菜は快感を逃すために無意識に顎を上げ、喉を開きながら霊力を放出する快感に耐える。

咲菜の身体はリーリエによって施された淫紋の効果で霊力を放出するときに快感を感じる異常体質に改造されてしまった。

淫紋を刻まれてからは、霊力を放出するような術は控え、霊力を刀に流して使う戦闘スタイルを取っていた。

そのため、今の身体で霊力を放出することがここまで快感を伴うということに気づいてなかった。

 

「ふぁゎぁぁ....!?」

(い、一旦装着をとめ、とめて...ぁあああ!もう止まらない!!!霊力吸われてる!!!)

 

咲菜は狩衣に注ぎ込む霊力を止めて、着装工程を止めようとした。

しかし、狩衣は着装工程が異常終了することを許可せずに、咲菜が閉じた霊力の流れを強制的につなぎ直し、彼女から霊力を吸い取り始めた。

咲菜は、身体の中心がどこまでも落ちていくような感覚に床に膝から崩れ落ち、長い手脚を引きつらせ、背筋をのけぞらせた。

 

彼女の霊力で、狩衣が淡い青色に光る。

さらに、手首、肩、腰には装甲状のパーツが現れ固い音を立てて彼女に装着される。

頭には顎を守るように装甲と同室の素材のヘッドギアが装着され彼女の首を締め付け、ニーソックスに包まれた脚には踝までの鋭利なヒールがついた装甲ブーツが履かされる。

今まで惜しげもなくさらされていた肩と二の腕、脇を隠すようにグローブやサイハイニーソックスと同様の素材と装甲素材で構成されたケープがふわりと覆い被さる。

 

そして最も大きな変化は、咲菜の黒かった髪が輝くようなシルバーピンクへと変わったことだ。

霊力がスーツによって強化された結果だ。

着用者の霊力の性質によって最も霊力の影響を受けやすい髪が変質する。

 

「はぁ...はぁ...」

(霊力吸い取られるのだめだ...この感覚はダメ...)

 

咲菜は霊力吸収による感覚に放心状態だ。

だが、淫紋による疼きはさっきまでと比較すると格段にましになった。

狩衣による霊力の強化の恩恵だ。

一時的に淫紋の浸食に拮抗し、リーリエの魔力から咲菜を守ってくれる。

 

咲菜はデスクに手をかけてフラフラと起き上がると、狩衣と一緒に用意されていたコンテナケースを開ける。

中には、タクティカルベルトにおさまった二丁のハンドガンと大小二振りの刀、ガーターベルト型のホルスターでまとめられた投敵用ナイフ八本が二セットと単眼タイプのシースルーHMDが一台。

 

咲菜は武器に問題がないことを確認すると、それを身体のいつもの位置に装着していく。

レオタードの上からタクティカルベルトを巻き、銃の位置を確かめる。

ナイフは左右の太ももにニーソックスの上からきつく巻き付ける。

最後に背中のタクティカルベルトを巻き、短いほうの刀を背中に、長い刀を右手に持つ。

これですべての準備が完了だ。

 

咲菜は全身に感じるきつめの密着感をいつもより敏感に感じながら、気持ちを突入のために戦闘状態へと切り替える。

自分の今の格好は露出は太ももから鼠径部、ケープからちらちらと見える脇だけだが、いかんせん全体の密着度が高く、身体のラインがもろに出ている。

戦闘以外でははあまり人に晒したくない格好だ。

その身体を隠すために天幕に用意されていた膝まである耐水性のコートを羽織ると、外に出た。

あとは、栞梨と玲衣の到着を待って、自分が領域への最初の突入者になるだけだ。

 

領域。

縛った隠魔の理りが支配する空間。

発生する領域のすべてが、淫魔の敷く理により女性しか突入を許さない。

そして、悪辣なことに淫魔の許可の出したもの一人づつしか入ることができない。

許可とは、咲菜の腹部に刻まれ彼女を苛んでいる淫紋だ。

皮肉なことに、彼女たちを蝕み、苛む、これが淫魔の巣である領域への入館証なのだ。

 

領域は魔界から召喚される魔界の肉でできており、現世の空間的な制約を受けない。

その中は、淫魔の魔力によってどこまでも広がり、高温多湿、媚薬の海、淫魔の使役する様々な魔界の生物が生息し、そして、霊力のない物質は侵食され淫魔の理の下に置かれる。

そして、退魔師にとっては最悪なことに、霊力は一箇所にとどめておくのが極めて難しく、常に拡散に向かう極限の環境。

領域へ二人目の女性が入ることができるのは、最初の一人が淫魔に霊力を搾り取られたときだけだ。

退魔少女が最新の退魔装束を着用していても常に霊力による障壁を身体に纏っていないと、侵食と淫気、霊力の拡散により瞬く間に霊力を搾り取られ、行動不能になる。

退魔少女は常に自分の周りに霊力で障壁を作らなければならず、力を防御に割かれるため領域内では実力の半分程度しか出すことができない。

また、領域内では退魔スーツや武器だったとしても、障壁を乱せば侵食が進んでしまうため、一瞬たりとも気を抜くことは許されない。

そして、領域の中は、外と比較して十倍程度の速さで時間が流れている。ただでさえ、外からの干渉を拒否する領域だが、この外との時間差のせいで中に入った退魔少女の救援は極めて困難だ。

これらに加えて、上級の淫魔は独自の理を敷き、淫紋で縛った退魔少女へさらなる淫らな枷を強いてくることも珍しくない。

そんな淫魔の領域では、咲菜が葬った淫魔の雑魚眷属との戦闘さえ全く油断はできない。

 

 

咲菜は領域突入にそなえて、待機天幕に移動していた。

ベンチに座り、片膝立ちで刀を抱いて待機していると、咲菜は外が騒がしいことに気づいた。

事態を確認するために、羽織ってた耐水コートの前を閉じながら天幕の外に出る。

 

騒がしい理由は尋ねるまでもなく明らかだった。

退魔機関が発見した白いシミのような領域の入り口にリーリエが立っていた。

 

「リーリエ!」

 

咲菜は腰を落とし、刀の柄に手をかけ、一瞬で戦闘態勢を取る。

 

「やっほ〜早かったね。咲菜ちゃん、そんなに私に会いたかった?」

 

「貴方、一体何しに出てきたの?ここで勝負をつける気?」

 

咲菜はリーリエのペースに乗らずに斬りかかるタイミングを見定めながら答えた。

 

「残念〜〜〜〜!咲菜ちゃんには領域に入って、ぬるぬるのぐちゃぐちゃになって悶え苦しんでもらう予定なの、「これで領域に入らなくていい!」とか期待しちゃった?」

 

「っぅう...!」

 

咲菜は他の退魔機関のスタッフがいる前で、これからの自分の恥ずかしい運命を予告され、顔を赤くする。

リーリエは続ける。

 

「私は咲菜ちゃんと〜お話したかったの〜」

 

咲菜の我慢は限界だった。

そこまで聞いた瞬間、一気に距離を詰めてリーリエの首を刃で切り飛ばした。

一瞬の早業。

狩衣は単なるぴっちりとした恥ずかしい衣装ではない。装着者の霊力をブーストして戦闘を補佐する装備だ。狩衣を装着した退魔師にはたとえ上級の淫魔だったとしても不用意に近づくべきではない。

翻った耐水コートがもとに戻るより前にリーリエの首は地面に落ちていた。

 

「っ!」

 

だが、咲菜は違和感を覚えていた。手応えが薄い。そして、あまりにもあっけなさすぎる。

リーリエがこんなに簡単に倒されるわけがない。

 

「残念〜!人の話はちゃんときかないと〜それも影を使った分身よぉ〜?本物の私は領域の一番奥!」

 

咲菜が先程まで立っていた位置に何事もなかったようにリーリエがたっていた。

 

「...どういうつもりなの...?」

 

咲菜は警戒を解かずに彼女に話しかけ、真意を探る。

 

「せっかく咲菜ちゃんが自分から領域に入ってくれるのよ?やっぱり案内してぇ、苦しんで悶える姿をぉ〜すぐ横でぇ〜みたいじゃない?ちなみに、この私、幾ら斬っても簡単に新しいの出せるから無駄よぉ〜?」

 

「貴方、本当に...いい趣味してるわ...」

 

咲菜は本当に嫌そうにその整った顔を歪めながら吐き捨てる。

 

「よく言われるわぁ〜。でも咲菜ちゃん、この前よりちょっとだけ速くなったわねぇ。首きられちゃった。そのぴっちりスーツのおかげかしら?」

 

リーリエは首をなでながらなんでもないことのように言う。

 

「いつまで笑ってられるかしらね?絶対に貴方を殺すわ」

 

「その強気なところ、やっぱりいいわ〜。中に入っても絶対に折れないでね?そうすれば最後まで優しくじっくりねっとりしゃぶり尽くしてあげる。じゃあイキましょうか!一名様ご案内!」

 

リーリエは加虐趣味に歪んだ顔で告げ、白いシミのような領域の入り口の横に立ち、ドアマンのようにそれを示す。

 

「くっ…うぅうっ...」

 

咲菜は本当に嫌そうな顔をしながら、入り口へ近づく。

だが、そこで止まってしまう。

 

「一度入ったら、ぐちゃぐちゃのドロドロにされて、霊力からっぽになるまで搾り取られないと出られないよ?咲菜ちゃん、淫紋のせいで普通に霊力使うだけでも気持ちいよねぇ〜?そんな身体で本当に大丈夫?やっぱりやめておく?」

 

動かない咲菜を横から覗き込みながらリーリエが本当に嬉しそうな笑顔を浮かべて煽ってくる。

一瞬、リーリエの言った状況を想像してしまい、淫紋を刻まれた下腹部がジュンと疼く。

 

「んっ〜〜〜〜?どうしたの?入らないの?」

 

その様子が愉快でたまらないのだろう。リーリエは更に咲菜を煽る。

 

「う、うるさいわね...入る...入るわよ!」

 

咲菜は思わず叫び返す。

先程から退魔機関の補佐スタッフである少女たちの心配そうな視線を背後に感じる。

そうだ。ここまで来てやめるわけにはいかない。

リーリエを倒し、この忌々しい淫紋を消すのだ。

咲菜は覚悟を決める。

 

「貴方、絶対に殺すわ」

 

咲菜は震えそうになる声をなんとか抑え、横で愉快そうに笑うリーリエをにらみつけ、それだけ言う。

 

「咲菜ちゃんの不安な態度を隠して強がっちゃうところ本当に好きよ。できるといいわねぇ〜?私は絶対に貴方のその偽りの態度を絶対に引き剥がしてあげる」

 

リーリエは本当は余裕のない咲菜の強がりとは違い、本当に余裕のあるゆったりとした態度で咲菜の行く末を告げた。

 




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