第31章

◆第31章 神祇院◆

◆31-1 ナーナ

『東部中将・大局を操る者・ナーナ』五ツ星軍師。
 スペック14歳女、猫族。この時代を代表する天才軍師。

 猫族でも10~12歳くらいの見た目で成長が止まってしまう小型種のため、愛らしく他種族からも人気がある。獣成分は耳と尻尾。耳は獣耳と人耳の両方を持つが、人耳部分の聴力はほとんど機能していない。
 どうでもいい話だが、幼い頃、発音が“ニャ”になってかわいいという理由で、猫族には名前に“ナ”が付けられる者が多い。

 ナーナは元々は算術が得意だった少女。戦術を数値化したマニュアルを作成したことにより、算術が得意な者ならば誰でも熟練四ツ星軍師相当の戦術を扱えるようになるという戦術革命を起こす。
 熟練軍師でも判断に悩む“逃げるべき”の選択───軍師にとっては責任問題や心労に繋がるところであるが、ここに客観的な判断基準を与えたのが画期的であり、まずは軍師たちの絶大な支持を得る。そして内容の的確さが評価され、急速に広まることになる。

 そして、神を数値化しようとする者が現れる。無限大に収束する神の戦力値に、無理だと思われていた神の攻略は、やはり無理だと証明されたかに思えた。
 そんな中、数値化を提唱したナーナ自らが神討伐理論を発表。人類はそれを実行するための準備段階に入った。

 ▼

 ウル王国・ベンガル市。
 猫族の国の小規模都市。ナーナの故郷。

【子供】「ニャーニャだ。ニャーニャだ」
【子供】「ナーナねーちゃんだ。お帰り!」
【ナーナ】「ただいま。皆、元気にしておったか?」
【子供】「はーい」
【子供】「元気!」
【年長の娘】「おかえり、ナーナ」
【ナーナ】「またしばらく世話になる」

 ナーナの実家とも言える長屋。わらわらと子供たちが集まってくる。

【護衛】「第1隊は北と東を」
【護衛】「第2隊は南と西だ。交通の邪魔にならないように配置を」
 ナーナの護衛隊が周囲を警戒する。

【子供】「すげー、ナーナにも護衛がついてる!」
【ナーナ】「ん? も」
 ナーナは外をちらりと覗く。騎士らしい甲冑を付けた者を発見する。
【子供】「今や人類の偉人なんだもん、当然だ」
【子供】「さすが姫」
【ナーナ】「姫、言うな!」
【年長の娘】「部屋はきれいにしてあるよ」
【ナーナ】「済まないな。滅多に帰らないのに部屋を残しておいてもらって」
【年長の娘】「何言ってるのよ。ここん家の子なんだから気を使わないの」
【年長の娘】「いつでも好きな時に帰ってくるんだよ」
【年長の娘】「むしろずーっとこのままにして、ナーナの部屋の匂いを嗅ぐツアーなんてやったら儲かると思うんだけどどう?」
【ナーナ】「やめんかー!」
【年長の娘】「駄目? 残念」

【ナーナ】「さてと」
 部屋に入ったナーナはチラリとベッドに目をやる。不自然に膨らんでいた。
【ナーナ】「とうっ!」
 ベッドに向かってダイブ。
【─?─】「んぎゃっ!」
【ナーナ】「何をしておる、イリナ!」

【子供】「すげー、王女にフライングボディアタックを決めた!」
【子供】「さすが姫!」
【年長の娘】「あらあら、あっさりバレたみたいね、王女様」

【イリナ王女】「お、驚かそうと思ったのに逆に驚かされた! さすがはナーナなのだ」
 ウル王国のイリナ王女・16歳。現王ナターシャ女王の孫王女である。
【ナーナ】「護衛らしい者を見たのじゃ。護衛が付くような知り合いで、こんなアホな事をするのはお主くらいじゃ!」
【イリナ王女】「むにー」
 ナーナはイリナ王女のほっぺをむにむにする。そのナーナの背後に忍び寄る影。
【イリナ王女】「にゅふふふっ、だがもう一人はどうかなのだ」
【─?─】「とうっ」
【ナーナ】「なぬ? んぐっ!」
【イリナ王女】「むぎゃっ」
 イリナとナーナにまとめて、小柄な少女がフライングボディアタックを決めた。
【─?─】「どわーれだ?」
 と、その少女はナーナの目を塞ぐ。明らかに声色を使っている。
【ナーナ】「ミミルはこんな子供じみた戯れには付き合わん。長屋の子供らは、流石に王女を相手に分別は付く。ぬぬぬ、儂の知っている者か?」
【イリナ王女】「何度か会っているはずなのだ。これはさすがのナーナも予想できなかろう」
【─?─】「にゅふふ~」
 少女のしっぽがもふもふとナーナを叩く。猫族のものではない。ふさふさでボリュームのあるしっぽだ。
【ナーナ】「狐・・・・・・もしや、お主、巫女か?」
【巫女】「おー、あたりー。やー、おひさ」
【イリナ王女】「おー、さすがナーナなのだ」

 巫女・・・・・・本名は不明。10歳女、狐族。
 大雑把に言うと“神の言葉”を聞くことのできる超知覚能力者を“巫女”と呼ぶ。神や超人絡みの案件でナーナとは何度か顔を合わせていた。

【巫女】「任務完了~。ふぁぁぁ~」
 巫女は眠そうにナーナの胸、お腹、ももをぷにぷにと押す。
【巫女】「おやすみ。すぴー」
 そしてナーナのお腹を枕にして寝息を立てた。
【ナーナ】「寝るな! というか、イリナ、巫女とは面識が合ったのか?」
【イリナ王女】「いや、ナーナへの面会を求めて城に訪れたので、案内ついでに儂も顔を見に来たわけなのだが。おーい、巫女。ナーナをビックリさせるのが任務ではないのだ。本来の任務を果たすのだ」
【巫女】「おおっ」
 鼻ちょうちんが割れて巫女が目を覚ます。
【巫女】「そうだー。お使いに来たよー。ナーナを連れて来いって」
【ナーナ】「ん? 教会か?」
【巫女】「教会じゃなくて、じん、んぐっ!?」
【イリナ王女】「あわわわっ。巫女! それはおいそれと口にしては駄目なのだ!」
【巫女】「んぐぐ~。そうだったー」
【ナーナ】「ああ・・・・・・いよいよ、という事なのじゃな」
【巫女】「のじゃのじゃ」

【子供】「なんの事だ?」
【年長の娘】「大人の話みたいだから、みんなはこっちに来ましょうね」
【子供】「あー、エッチな話か」
【子供】「ナーナもお年頃か」
【子供】「お年頃、お年頃~」
【年長の娘】「えっと・・・・・・うん、だから聞いちゃいけませんよ」
【ナーナ】「こらー、面倒くさがらずに、ちゃんと説明せんかーっ!」



◆31-2 対神最高機関

 国を超え人類を先導する三大機関「世界評議会」「教会」「戦士連合(ユニオン)」。世界評議会は国同士で世界の方針を決める会議。教会は冠婚葬祭、魔法の研究、学校など、市民の日常に根付いている。戦士連合は言うまでもなく。この三大機関が人類の最高権力機関と一般的には認知されている。
 しかし、戦士連合の中将を務め、一国の王女と親しく、世界評議会に参加するなど広い視点で世界を見てきてナーナは勘付いていた。まだ頂上が見えないと。

【ナーナ】「戦士連合にしても、人工衛星マザー・エンビアの機能を借りてるだけじゃ。制御しているわけではない。この方向から推理していけば予想が付く。
 もし、制御する者がおるならば・・・・・・旧エンビア国の叡智を受け継ぐ者。そして、その叡智を授け、協力関係にあった・・・・・・」
【イリナ王女】「わ、儂は知らないのだ。ひゅーひゅー(口笛)」

 かつてイリナ王女にカマを掛けてみたこともあるが、すっとぼけられる。これによって、一般には秘密にされる権力機関があるとナーナは確信に至る。王族のイリナ王女はその存在を知っているが、門外不出の情報となっていることも察する

 ▼

 ナーナ帰郷から5日後。
 ナーナと巫女を連れた一行は鉄道で移動。列車は途中から地下に潜り、大陸東方の離島の地下深くにある巨大施設に到着する。

【ナーナ】「地下にこれだけの施設とは。これは想像を超えるな」
 列車から降りたナーナは施設を見回す。地下大空洞を利用して建造した、機械の要塞。高さ制限がある地上の建築物とは違い、深い方向へと縦に重なる高層建築に、ナーナは圧倒される。
【巫女】「ナーナを連れて来たのじゃよー」
 ナーナとしばらく一緒に行動をしていたために語尾が変わった。
【受付嬢】「ナーナ様。“神祇院(じんぎいん)”へようこそ」
 狐族の女が出迎える。戦士ギルドで見慣れた制服を着ている。
【ナーナ】「ここは神祇院と言うのか」
【受付嬢】「アドミニストレータの間にご案内します。プレートにお乗り下さい」
 転落防止の簡易な柵が付けられた板───人を乗せ空洞内を移動するエレベーター的な魔法具だ。上下方向だけでなく、水平移動も可能である。更に地下に進み、一室の前に止まる。
【受付嬢】「ナーナ様がご到着しました」

 鉄製の扉がゴゴゴゴと重そうな音を立てて開く。研究室を思わせる室内に二人の人影があった。一人は機族を思わせる全身鋼鉄で、天井からぶら下がるいくつものケーブルと繋がっている。もう一人は黒い翼を背負っている。

【ナーナ】(黒い翼は天使・・・・・・いや、悪魔と呼ばれている第1世代の堕天使。直接対面するとは思っていなかったのじゃ。そして機族を思わせるこの人型は、旧エンビア国の叡智であろう)

【二人】「ようこそ、姫」
【ナーナ】「姫はやめんか!」
【二人】「・・・・・・」
【ナーナ】「むっ、しまった! つい脊髄反射で!」
【機械の方】「うむ、なるほど。話に聞いた通りの反応だ」
【黒翼の方】「映像ではない本物のナーナだ。生ナーナだ。撫でていいかい? 触っていいかい?」
【ナーナ】「・・・・・・お断りするのじゃ!」
 ナーナは雰囲気を察した。「あ、これ、いつも通りでいいやつじゃ」と。
【機械の方】「うむ、話に聞いた通りの塩対応だ」
【巫女】「ただいまー」
【機械の方】「おかえり、エミュレーターよ」
【黒翼の方】「お二方、外から帰ってきたら、まずはうがいと手洗いを」
【巫女】「はーい。ナーナ、こっちじゃよー」
【ナーナ】「うむ。それなりに緊張していたのじゃが・・・・・・緩いな」
【巫女】「うん。みんな、ゆるゆるじゃよー。巫女がしっかりしないとー」
【ナーナ】「そ、それほどか!」
【巫女】「いや、そこまでじゃないかー。がらがらがらがら」
【ナーナ】「ないのかひ! がらがらがらがら」
【受付嬢】「うふふふ、タオルをどうぞ」

 ▼

 自走式の床が接客室をセッティングする。畳のような床に、ちゃぶ台(金属製)に座布団。そこに機械の男、巫女、ナーナがちょこんと座った。黒翼の男は、奥の小部屋へと入っていった。

【アドミニストレータ】「私はアドミニストレータ。旧エンビア国から続く、未来予想システムを担う10賢人のうちの3賢人から構成される複合意識体である」
【巫女】「長いからアドミンでいいよー」
【悪魔王ヘル】「僕は悪魔の王が一人、ヘル。盟約により人類とは協力関係にある」
 黒翼の男は茶の用意をして戻ってくる。
【ナーナ】「悪魔とは思っていたが、まさか悪魔王の一人が直々の登場とは!」
【悪魔王ヘル】「どうぞ。僕オリジナルの健康茶だよ」
 ヘルもちゃぶ台を囲む人員に仲間入りする。
【巫女】「ヘルは本当はヘルシイって言って、健康を司る天使なのじゃよー」
【ナーナ】「そうであったのか!」
 ちゃぶ台にお茶と茶菓子が置かれ、ますます雰囲気はゆるくなった。巫女は座布団からはみ出し自由にゴロゴロしている。

【アドミン】「ウル王国の王女から、色々と勘付いているとの報告を受けている。予想通り、ここが人類と悪魔共同の意思決定機関。つまりは人類の枠を超えた対神の最高機関である。そして、ナーナ、君をここに迎い入れたい。いや、これは選択権のない決定事項である」
【ナーナ】「ああ、断る気はない。よろしく頼む」
【巫女】「おー、よろしくなー」
【アドミン】「ではまずは、ほとんどの王族にも秘密にしている最大の禁忌から話そう。神は真人類が完成し次第、我々、現人類を滅ぼすことを決定している」
【ナーナ】「!? ゆるゆるなムードから、さらっと、とんでもない爆弾発言が来たのじゃ!」
【巫女】「新しい人類じゃなくて真の人類で真人類なのじゃよー」
【ナーナ】「神の言葉の一節にあったな。三神のいずれかが人類の作り直しをしているなんて話が」
【巫女】「創造神カリレルじゃよー」
【アドミン】「大陸の真裏の孤島にて、真人類は成長している。人工衛星マザー・エンビアの観測によると、現在は木や石を用い道具を作り始めた段階だ」
【ナーナ】「まだそんなものか・・・・・・いや、まだも何も、神は何をもって真人類を完成と考えておる?」
【アドミン】「それについてはわかっていない。言語の獲得か、あるいは哲学の習得か。もしくは生み出すアリエル量によるものか。最悪を考えるならば、すでに真人類は完成したと判断し、現人類滅亡に向け計画が始まっている事も想定しなくてはならない」
【ナーナ】「つまり、儂ら現人類は、明日にも滅ばされる可能性があると言うことじゃな」
【巫女】「創造神カリレルはのんびりさんだから、のんびりしていると思うけど、安心できないんじゃよー。これが」
【アドミン】「現状、神に対抗ができる可能性がある唯一の手段は、ナーナの神討伐理論だ。まだ多くの仮定を埋めなければ入れない状況であるが、いざの時は不確定なままでも発動しなければならない。これを『最終作戦』の主軸とし、今からでも準備段階に入る。
 『最終作戦』とは・・・・・・まぁ言うまでもないであろうが最初にて最後になるであろう『神討伐作戦』である」
【ナーナ】「して、実行に必要なだけのA砲の準備には、どれほど掛かりそうじゃ?」
【アドミン】「200年以内には」
【ナーナ】「それは予想以上に早い」
【悪魔王ヘル】「僕たちの体もよろこんで提供させてもらうよ」
【ナーナ】「! そういえばA砲のエネルギー源はお主ら悪魔の体を切り刻むという話だったはずじゃが・・・・・・いいのか?」
 A砲のエネルギー源であるAユニットは、切り刻んだ天使(悪魔)の肉体が回復に使うアリエルを奪うという仕組みで巨大なアリエル・エネルギーを得る。
【悪魔王ヘル】「うん。いいよ」
【ナーナ】「あっさりといいのか!」
【悪魔王ヘル】「うん」
【ナーナ】「うむ・・・・・・まぁ、いいのならば、よろしく頼む」
【悪魔王ヘル】「うん」
 ヘルはニコニコしていた。

【ナーナ】「まずは200年の猶予があることを祈ろう。そして、実行の時に良い剣聖と戦士たちに恵まれることもじゃな」
【アドミン】「それに関しては、旧・最終作戦のために行ってきた準備が役立つであろう」
【ナーナ】「ほう」
【アドミン】「その事も含め、伏せられている真実がここには多々ある。まずナーナには、それを知って貰わないといけない。そうだな、まずは寿命制限のシステムだが───」

 ▼

【ナーナ】「やれやれ。色々と常識を改めねばならんな」
 アドミニストレータから人の世界の真実を教えられた後のナーナは流石に疲れている様子だった。世界はナーナの想像以上に欺瞞に満ちていた。
【巫女】「ナーナのお部屋に案内するのじゃよー」

 神祇院内、生活区画。
 ナーナは数日滞在し、人の世界の真実について詰め込み教育される事となる。

【巫女】「ナーナだ~」
【巫女】「あっ、ナーナだー」
【巫女】「よろしくね~、ナーナ」
【巫女】「遊ぼ~、ナーナ」
【ナーナ】「巫女が沢山!? どういうことじゃ!」
【巫女】「巫女たちはクローン体で初代巫女のエミュレーターなんじゃよー。言ってなかったっけ?」
【ナーナ】「エミュ? ・・・・・・そう言えばアドミンは巫女の事をそう呼んでおったな。色々と常識を改めねばならんな」

【─?─】「くっくっくっ、貴様がナーナだな」
 ───と曲がり角から現れた黒い翼を持つ男。
【ナーナ】「悪魔か」
【悪魔王ベルゼル】「我が名はベルゼル。悪魔王ベルゼル!」
【ナーナ】「! 人類との協力を良しとせず、悪魔王ヘルと敵対したもう一人の悪魔王! なぜここに!?」
【悪魔王ベルゼル】「くっくっくっ、この小娘が人類の希望の星か」
【ナーナ】「もしや儂の命を狙い、ここに侵入したのか!?」
【巫女】「ベルゼルだー。遊ぼー」
【悪魔王ベルゼル】「笑止! 我は人類と馴れ合わぬと言ったであろう、巫女よ」
【悪魔王ヘル】「あっ、ベルゼル。また曜日を無視してゴミを出しただろう。規則は守らないと駄目だよ」
【悪魔王ベルゼル】「笑止! 人の決めた規則などに我が従う道理はない」
【悪魔王ヘル】「規則を守ることは心の健康なんだよ」
【ナーナ】「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・敵対関係にあると聞いていたのだが、一緒に暮らしておるのか───い!」
【巫女】「そうじゃよー」
【悪魔王ヘル】「共存しろというのが神の命令だからね」
【悪魔王ベルゼル】「神の命には従う。神に造られた我らの道理なり。それよりもナーナよ。貴様は人間にしては見どころがある。頭を撫でてやろう!」
【ナーナ】「お断りじゃ───! まったく、色々と常識を改めねばならんな!」

 ▼

【巫女】「ナーナは巫女と一緒の部屋じゃよー。そっちのベッドを使っていいよー」
 と、2つあるベッドの片方を指差す。
【ナーナ】「ふぅ、今日はゆっくり寝よう。さすがに疲れたのじゃ」
 ナーナは用意された部屋のベッドに、前のめりに体を沈めた。4日間の鉄道の旅の後、色々と世界の最高機密を詰め込まれ、ぐったりのナーナだった。
【巫女】「のじゃのじゃ」
 ナーナのベッドに潜り込む。
【ナーナ】「何のためにベッドを決めた。はぁ、突っ込む気力もないわ」

 回想───

【アドミン】「ナーナは現在、人類で最重要の要人である。伝承者として寿命制限を免除する。これも選択権のない決定事項である」

 ───回想終わり。

【ナーナ】「寿命免除は覚悟しておったがのぉ。それ以上に、普通に寿命を迎えた後の真実の方が衝撃じゃったわ」
【巫女】「徴兵を選ぶと戦ってウオーって死ぬよ。死を選ぶと色々されてギャーって死ぬよ」
【ナーナ】「アリエルを効率良く得るために、激情を伴う死を与えているとな。とは言え選べるのならば、寿命通りの死、寿命免除───どちらを選んでいたかのぉ」
【巫女】「30歳が寿命なんて常識、すぐになくなるのじゃよー。死ぬまで生きるのが普通で、それのことを普通は寿命というのじゃよー」
【ナーナ】「そうは言うても、30歳の寿命に合わせた社会じゃからのぉ」

 30歳が寿命。10歳の頃に親を見送り、年長者を見送りそして自分も寿命を迎え、子や年少者に見送られる。その環から外れることは、友を見送り、年少者を見送り、やがては自分の子供も孫も見送ることになる。悲しみの多い人生となるだろう。
 不老長寿ネタの登場人物の心境を、普通に寿命通りに生きるだけで味わえる世の中である。

【ナーナ】「更には、寿命免除だけで済むのかわからんからのぉ」

 回想───

【アドミン】「願わくば、最終作戦の指揮をナーナに執って貰いたいと考えている」
【ナーナ】「なぬ? 寿命免除と言えど、寿命が永遠になるという訳ではなかろう・・・・・・まさか?」
【アドミン】「方法の1つはこれだ」
 とアドミンニストレータは部屋の最奥に視線を送る。ゴゴゴゴゴと十センチほどの厚みがある鉄の蓋が開くと、3つの水槽の中に3つの脳みそが浮かんでいた。
【アドミン】「私の本体である」
 人型は端末、本体はこの3賢人の脳である。

 旧エンビア国を支えた、未来予想システム。中心になるは10賢人。全てを捧げた10人の科学者が生体コンピューターとなり中枢となった。人工衛星『マザー・エンビア』に7賢人、地上のアドミニストレータに3賢人の脳がある。
 10賢人の脳そのものではなく、それを加工したものから何度かの複製を経るなどし、同等の機能を半永久的に維持している人造物である。
 天のマザー・エンビアが7人で多数決。地のアドミニストレーターが3人で多数決。人の決定。天地人の3意見からの多数決。───と、物事を多数決で決める民主的システムとなっている。

【ナーナ】「・・・・・・これも決定事項なのか?」
【アドミン】「さすがにこれは自然に反すること。強制しない」
【ナーナ】「ふぅ・・・・・・それは良かった。すまないが、そこまで自分を捧げる気にはなれん」
【アドミン】「それは残念だ。だが、その考えも数年、数十年後には改まるかもしれぬ。もし考えが変わったならば言うがいい」

 ───回想終わり。

【巫女】「脳みそは巫女もパスじゃのー」
【ナーナ】「目下の問題はあやつ、ミミルをどうするかじゃ。こうも常識はずれな世界に巻き込んでいいのかどうか」
【巫女】「巻き込んじゃえ、巻き込んじゃえ」



◆31-3 猫忍者

 ウル王国・ヤマガクレ村。またの名を猫忍者村。ミミルの故郷である。

『ナーナ姫親衛隊隊長・山に愛されし軍師ミミル』五ツ星軍師。
 ミミルの戦士カードが更新された。ナーナの苦悩を無視し、すでに巻き込まれているミミルだった。

【イリナ王女】「いよいよ二人とも“こっち”の仲間入りなのだ」
【ミミル】「親衛隊長と言うと、どれほどの権限なのでしょうか」
【イリナ王女】「まず親衛隊の主は王族かそれ以上の立場だな。ナーナの場合、もはや世界で最重要人物。親衛隊を持っていて当然なのだ。
 で、親衛隊長と言うと、主と同程度の極秘事項の解禁、寿命制限の免除は当然なのだ」
【ミミル】「はぁ・・・・・・ただの猫忍者の小娘がすごい人たちと友達になったものなのです」

 今度はミミルの家に押しかけ、ちゃぶ台を囲んでいるイリナ王女。この王女、暇人である。
 ウル王国が小国なこともあり、イリナ王女の住む王都、ナーナの住むベンガル市、ここ猫忍者村は、馬で日中に一回りできる距離である。

【イリナ王女】「これからは色々と隠し事を気にせずに相談できるから楽になるのだ。もっともミミルはすでに色々と知っていそうなのだが」
【ミミル】「さてさて、何のことやらなのです」
【イリナ王女】「何をすっとぼけておるのだ。我が国の誇る諜報組織・猫忍者が、儂が隠している程度の事を知らぬのでは困るのだ」
【ミミル】「なにか矛盾してるのです。まぁ、ほとんどの事は知っていると思うのですが」

 ウル王国は小国でありながら結構な存在感を持つ国なのだが、その理由は猫忍者という諜報組織を持ち、他国の秘密などを握っているためである。尚、ウル王国の忍者は主に仕えるという考えはなく、単に諜報組織である。その辺が忍者のお約束からは外れる。
 ミミルがどの程度の知識を持っているかと言うと、まだ説明途中のナーナよりは世界の秘密を知っている状況だった。

【イリナ王女】「残念なのだ。ナーナが遠慮したらミミルは儂の親衛隊にと狙っておったのに。マザー・エンビア認定では諦めるより仕方がないのだ」
 と改めてミミルの戦士カードを見る。
【イリナ王女】「おっ・・・・・・姫?」
 そして気付く。

『ナーナ“姫”親衛隊隊長・山に愛されし軍師ミミル』五ツ星軍師。

【ミミル】「そこもマザー・エンビア認定なのです」
【イリナ王女】「にゅふ~。これはナーナの反応が楽しみなのだ」
【ミミル】「くすくす。楽しみなのです」

 ナーナが15歳になったこの月、色々と周辺が動き始めた。




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