韓国が特使派遣で北朝鮮核開発完了への時間稼ぎに利用された件

韓国の特使が北朝鮮の金正恩と面会をし、北朝鮮側が対話に応じる用意があるというメッセージを伝えたと報道されています。

この報道を受けて、日本の報道各社のニュースは緊張の度合いを増す北朝鮮情勢に対し、対話による非核化と言う融和路線がクローズアップされ、緊迫が薄らいだかのような報道になっています。

しかしこの報道の内容を精査すると、過去の北朝鮮の言動並びに北朝鮮の行動並びにアメリカ側の求める北朝鮮への要求が全く噛み合っておらず、むしろ韓国がスタンドプレーを行ったことによって対北朝鮮問題の解決は事実上物理的な解決しか残されていない状況になってしまったことが浮き彫りになっています。

まず今回の特使派遣の成果に対する報道内容は以下の通りです
(なおソースとして朝日新聞の記事を利用しているのは「朝日新聞の記事が最も融和路線に近い可能性が高い」と考えられるからです。ぶっちゃけて言えば「朝日新聞よりも融和的な内容の報道は日本では見られないだろう」という話)
 

韓国と北朝鮮、4月末に首脳会談 「米と対話用意」表明】(朝日新聞デジタル)

韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が4月末、南北軍事境界線上にある板門店の韓国側施設「平和の家」で南北首脳会談を行う。正恩氏と5日に会談した韓国大統領府の鄭義溶(チョンウィヨン)国家安保室長が6日夜に合意内容を発表した。韓国側の説明によれば、北朝鮮は非核化の意思を表明し、対話が続く間は核実験や弾道ミサイルの試射を行わないとした。

 実現すれば、南北首脳会談は2000年6月、07年10月に続いて3回目。正恩氏にとっては初めてだ。

韓国側の発表によると、北朝鮮は「軍事的脅威が解消され、体制の安全が保証されれば、核を保有する理由がない」とした。また「非核化問題の協議と米朝関係の正常化のため、米国と虚心坦懐(たんかい)に対話する用意がある」とも表明したという。

 実現すれば、南北首脳会談は2000年6月、07年10月に続いて3回目。正恩氏にとっては初めてだ。

 

報道では、北朝鮮が非核化の意思を表明したとしていますが、実際には非核化の意志を表明した部分は皆無です。

上の記事を読んでも分かる通り、北朝鮮が提示している内容は「対話が継続する間は核実験や弾道ミサイルの試射を行わない」 というものだけです。
対話継続中にやめるのは核実験とミサイル発射だけ。

韓国側の発表と日本側の報道が「非核化の意志を表明した」としている原因となっていると考えられる部分は、記事最後の北朝鮮側の発言(記事引用の青色部分)と考えられます。

とした。また「非核化問題の協議と米朝関係の正常化のため、米国と虚心坦懐(たんかい)に対話する用意がある」とも表明したという。

「軍事的脅威が解消され、体制の安全が保証されれば、核を保有する理由がない」発言ですが、軍事的脅威が解消され金正恩体制が保障されるならば、 当たり前ですが核を保有する理由はなくなります。

その意味においては、北朝鮮は至極当たり前のことを発言しています。

問題は、核を保有する理由はなくなるとする前段にある「軍事的脅威が解消される」「大勢の安全が保証される」この2点です。

北朝鮮は、過去に何度も「核保有国として対等の対話」というメッセージを出しています。
北朝鮮にとって、アメリカをはじめとする西側諸国は全く信用ならない国々であり、約束を守らないと思っています。

金正恩政権は、父からの権力委譲が盤石ではなく、発足時から対内対外共に疑心暗鬼の状態で、自らの立場を確立するためには武力と恫喝をもって権力の意地を行わなければなりませんでした。
このような状態ですから、アメリカ側がなんと言うおうが、北朝鮮は核開発を継続してきました。

一方、過去の記事等で何度も述べていますが、アメリカが北朝鮮問題を本気で危険だと考え始めたのは、一昨年の SLBM発射実験成功が発端です。

潜水艦からの発射可能なミサイルが開発されると、潜水艦の到達点+およそ1000キロの範囲が射程圏内になります。
仮に北朝鮮の潜水艦がアメリカ近海までたどり着けた場合、アメリカの主要都市は全て北朝鮮の核ミサイルの射程圏内に入ります。

国家としてはマッチョであり、常に強者の立場に存在しているアメリカの国民にとって、自分たちが弱者になる恐怖は計り知れません。

今までは反撃されないから好き放題ができたのに、もしかしたら自分達は殺されるかもしれないという恐怖を感じたのです。
この時点からアメリカの方針は確定しています、北朝鮮を核保有国に絶対にしないということです。
北朝鮮の場合、既に経済制裁等で国際秩序から隔離されている状況ですので、国際ルールを無視することに対して何の痛痒も感じていません。
当然ですが、テロリストや犯罪組織に対して核兵器やミサイル技術の供与を行っても何ら不思議ではありません。
むしろ行って当然と言えます。

ですので、アメリカにとってみれば、北朝鮮との対話というのは「核兵器の完全放棄、朝鮮半島の非核化」が無条件で行われること=何をするか分からない北朝鮮の無力化が前提です。

アメリカにとって、北朝鮮は対等の対話相手ではありません。

アメリカ側が北朝鮮側の求める体制の安全を保証する場合、それは保証以前に核兵器を放棄してから、という条件になります。
この条件を北朝鮮は受け入れることができないでしょう。
北朝鮮はアメリカを全く信用していないからです。
アメリカ側も、口先だけの非核化など信用しませんし、査察や核放棄プロセスの実行を迫るでしょう。
これほど立ち位置が離れているのに、この報道内容で融和とか不可能です。

同時に、報道において非常に重要な点が見落とされているのは、北朝鮮の核開発が現在どのレベルにあるかという点です。

北朝鮮の核開発の状況はあと数ヶ月で完了する段階です。

北朝鮮の核開発が完了してしまえば、金正恩は“核保有国同士の対等の立場”でアメリカと交渉を行うことが可能になります。
つまり、あと数ヶ月時間を稼ぐことができれば屈辱的な上下関係のある対談ではなく、対等の「交渉」が可能だと考えているわけです。

そのために、これまであの手この手を使って時間稼ぎをしてきました。

平昌冬季五輪への参加のゴタゴタや北朝鮮美女応援団の派遣等による工作活動も、目的は「核開発完了までの時間を稼ぐ」この一点に集約されます。

実際問題オリンピック、パラリンピックの合わせて2ヶ月ほどの時間は、北朝鮮にとって極めて貴重な時間です。
この間、世界の目がオリンピックにいっている影で、プルトニウム工場の稼働再開を行ったり、崩落したと思われる核実験場の整備等を実際に行なってきました。
その兆候はアメリカ等の研究機関で分析され、北朝鮮の動きに対する警告が出されています。

このような視点から見た時、北朝鮮との合意で特に注目すべきなのは「来月末(4月末)に南北首脳会談を実施すると決めたことです。

3月の初めの特使面談で、4月末の会談を合意する。

結果として、3月、4月のまるまる2ヶ月の時間を稼ぐことが可能になります。
数ヶ月必要だと言われている核開発ですが、オリンピック・パラリンピックと南北会談を合わせると、おおよそ4ヶ月の時間を稼ぎ出したことになります。

合同軍事演習に対する北朝鮮の態度軟化も、韓国が同盟国の方針に背き「対話路線」というスタンドプレーに走ったことでかなりの時間稼ぎができる目処がついたことから、「合同軍事演習が実行されても北朝鮮にとってあまり不利益ではない。むしろ譲歩の余地があると見せかけて、時間を更に稼げる可能性もある」と判断したといえます。

合同軍事演習を容認しておいて、南北会談を開催し、その裏で核開発を完了することによって、南北会談終了後に北朝鮮は核保有国としてアメリカと直接話し合いをすることが可能になります。
もちろん、技術開発は目論見通りにいかない場合も多く、南北会談の後すぐに核開発が完了するとはならないでしょうが、核開発が目処がついた状態であれば北朝鮮としては残された時間を稼ぎつつ強気の交渉が可能になります。

独裁政権が世界の中で生き残るには、最低でもこのぐらいの強かさは必要になってきます。
ましてや世界最強のアメリカを向こうに立ち回るのですから、使える手段は何でも使うと考えるのが当然の動きです。

現在の状況から考えると、電撃的な韓国の特使派遣は北朝鮮の思惑に踊らされた、極めて危険な行為だったと言えるでしょう。

このスタンドプレーが、韓国の命運を絶ってしまった可能性は十分にあります。
アメリカは自国の危険が迫るのであれば韓国の国民等は見捨てる準備があります。

また 韓国が融和路線に邁進している以上、韓国に入ってくる情報は北朝鮮に筒抜けであるという認識をしなければならず、同盟的にも韓国はのけ者にされる形にならざるを得ません。

いずれにしても、今回の特使派遣は危機をあおることにはなっても、危機の回避には全く役に立たなかったといえます。




 

 

 



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  • コメント
  • 匿名
    [2018/03/09 17:55]

    米国の鉄鋼・アルミ輸入制限は、対中赤字改善の他に、
    (同盟国らしからぬ)韓国のお尻を叩く意図があるように思うんですが、ちがいますか。
    https://www.nna.jp/news/show/1732487
    https://jp.reuters.com/article/usa-trade-steel-aluminum-idJPKCN1GE0H3

  • 青木文鷹
    [2018/03/10 17:08]

    お尻叩く意図なら、範囲が広すぎるのです。あれは純粋に経済戦略ですね。

  • 匿名
    [2018/03/10 18:08]

    ありがとうございます。


"青木文鷹" is creating "鑑定人、情報分析"
鑑定人と情報分析のプロです。マスコミが知らない報道の真相等執筆してます。書籍の監修や自著も出してます。
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