Direct Voice 第6章

第6章 挨拶の重要性


「おはよお」
「おはよ~」
「はよー」
 教室に入り、あーことさゆに挨拶。
 光也はと言うと、自分の席で、背中を丸めて座っていた。
 光也に挨拶したい。光也をまるはだかにひん剥いて、口犯してやりたい。
 ……ここじゃ、無理だよね。
 私は、いつものように、あーことさゆと話す。
 じゃあ、やっぱりだめだ、光也。私は、あなたに話しかけられないよ。話しかけたら、あなたを辱しめたくなっちゃう。もし、話しかけてみろ。あーこやさゆや野尻くんや沢村くんやみんなの前で、光也をふるちんにさせる。これは、決められたことなのだよ。だって、私は、てな様を愛しているのだから。
「そーいえば、くろちー。先輩が、合コンするんだよ~」
「ふうん」
「悪いんだけど、ついてきてくれないかなぁ……? その合コンで、先輩ゲットしたいの~。協力してくれない?」
「えぇ……」
「あー、いいじゃん、くろち。くろち、彼氏いないんしょ~。もしかしたらいい男いるかもよ~」
「いや……、興味ないし」
「じゃ、いい女いるかもよ~」
「そういう意味じゃない」
「でも、どうして? くろちー、いつも恋愛に“我関せず”って感じ……。年頃の娘は、男の子と愛を育まなきゃ」
「ぶっ、“愛”だってよ」
「さゆだって、育んでるくせにぃ」
 “愛”か……。
 てな様愛してる。

「ねえ、くろちーは、どんな男の子がタイプ?」
 てな様一筋。
「あ~、気になる! 教えろ、くろち!」
 てな様のことは、内緒だ。私とてな様しか知らない秘密なのだから。あと光也。
 何て言ってこの場を誤魔化そうか。
「うーん……、わかんないよ~」
「年下か年上だったら?」
 もし、てな様が年下だと、いたたまれない気持ちになるから……。
「年上かな?」
「男の人のパーツで好きなところは?」
 てな様と言えば……。
「手……かな」
「おっと。手ときましたか。どんな手が好き?」
“まくるさんへ
いつもありがとう
手也”
「……優しい感じの」
「……ぬくもりが感じられる手ってことかな?」
「でかいのとかー?」
 とりあえず、笑っておく。笑っておけばいい。こういう時は、笑えば終わる。
 さりげなく時計を気にする。まだチャイムが鳴らない。じれったい。
「まあ、くろちーの好みは、ひとまず置いといて……。合コンは、金曜日なの。今週のね。来てね」
「はいはい……」
 合コンには、行かなきゃならないのか。気が重いが、仕方ない。光也とのことをばらすわけにはいかないし。
 いや、いっそのこと、ばらそうか? そうすれば、気兼ねなく教室でおっ始められる。光也を犯せる。
 あ、でも……、光也と付き合うのは、本当は、てな様との浮気だから……。
 浮気は、人目を気にしなくては。やはり、ばらせない。

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 授業中も、休み時間も、光也とは話せなかった。このままでは、今日も怒られてしまう。まずい。
 今日は、バイトがある。授業が終わっても、うかうかしていられない。なのに。
 どうしようどうしようどうしよう。
 バイトなんかもう辞めてやりたい。でも、てな様に貢ぐ金のためにしなくてはならない。
 なら、どうする?
「じゃあ、今日はこれで終わり」
 先生の声を合図に立ち上がり、礼。
 授業が、終わった。
 ざわめき出す教室。光也は、のろのろ教科書類をかばんにしまっている。
「じゃーね、くろち~」
「ばいばーい」
「うん、また明日」
 さゆは、陸上部。あーこは、吹奏楽部。部活のある二人と、基本一緒に帰ることはない。
 だからと言って、光也に話しかけるのは……。
「ぁ……」
 かばんに持ち物をしまい、それを持ち上げた光也は、私を見た。一瞬だけ。
 すぐに視線を逸らし、去っていく。
 光也は、怒っている。この場で、私が話しかけてこないことに。
 なんとか、校舎を出るまでに声をかけないと、嫌われてしまう。
 どうしよう……。
 私も、教室を飛び出した。
 光也は、どことなく足取りが重いものの、一歩一歩確実に階段を下りている。
 人は、当然のごとく多い。どこで、話しかければ……。
 私は、とにかく光也を追いかけた。
「横手くん」
 光也の後ろで、声をかける。びくっと、彼の肩が跳ねる。
「先生が呼んでたよ」
「……ぇ……」
「こっち」
 光也を連れ出す。
 普段、誰かと一緒にいることがない彼。なのに、私といれば、目立つだろう。
 私は、早足で階段を上がっていく。光也は、戸惑いながらも、ついてきている。

 私は、屋上の扉の前で止まった。屋上は閉鎖されているため、ここは、行き止まりだ。だから、こんな場所に来る人間なんて、いないはず。
 少し遅れて、光也がはぁはぁ言いながら階段を上ってきた。
「……先生……?」
 いないよ。
 私より一段低い場所で、息切れしている光也。その腕を取って、私と同じ高さへ導く。
 そして、壁に光也の背中を押し当てた。
「おはようございます」
 今日の挨拶をして、光也に口付ける。これで、光也に怒られない。
「な、なに……」
「昨日は、挨拶しなかったからさ……。ごめんね、今日からは、ちゃんと挨拶するね」
「え、え……?」
「でも、光也に話しかけたせいで、むらむらしちゃったなぁ……。脱いでみよっか」
「え……」
「脱いでごらん。光也のはだか、今、私に生で見せて」
「い、いや……」
「光也のいやらしいところ、彼女の私に見せよう。脱いでごらん」
「ここ……家でもホテルでもないし……」
「脱いでごらん」
「まくるさ……」
「脱いでごらん」
「………………」
「脱いでごらん」
 えろい光也は、自分から脱ぎ出した。誰が来るか、わかったもんじゃない場所で……。
 かばんをその場に置いて、震える手で、学ランのボタンを外していく。
 今日も腰穿きズボン。私も、脱がすのを手伝ってあげる。ずるり、ズボンを下ろす。
「……これで……」
「全部脱いでね」
「………………………………」
 ズボンを足から取り、靴下や上履きも脱ぐ。
 学ランもかばんの上に置く。シャツのすそから伸びる、少しだけ肉のついた生短足が、やたら色っぽい。
「し……、静かに、してね……」
「じゃあ、キスしながら脱がせてあげる。どっちも黙るから、静かになるね」
「んんっ……」

 光也にキスをする。舌を侵入させながら、シャツのボタンを外していく。
「ちゅ、ちゅぱ……、お、お……と、がっ……ちゅぷ……っ。キスの……音ぉ、ぱちゅっ……」
 シャツを脱がせる。キスも中断し、離れた。くすんだ青のグラデーションがかったトランクスが、あった。もう、それだけ。
 私は、それも躊躇なく下ろす。半分ほど勃起したそれは、ゴムに引っかかって、びよんと飛び出た。
「最高だね……」
 膝上くらいまでパンツを下ろせば、あとは、呆気なく足元に落ちていく。
 私は、携帯電話を取り出した。しかし、光也は、慌てた様子で、力なく私につかみかかる。
「写真だめ……! 音、が」
「わかった。音は、立てない」
 私は、携帯電話をしまった。
「じゃあ、その代わり、私にキスしてよ」
「え……」
「できるよね。私たち、恋人同士なんだから」
 私は、壁に背を預けると、その場に腰を下ろす。
「ちゃんと私を求めろ」
 光也は、恥ずかしそうにしゃがみ、性器を隠した。そして、おそるおそる私に近づく。
「……キス……するの……?」
「はい」
「……して、……いいの……?」
 光也は、ただただ不安げな表情をしていた。
 そうか。光也は、私の浮気相手だから、遠慮してしまうのだろう。てな様の代わりに、私にキスしていいのか、と。
 私は、悪い女だ。二股かけて。しかも、真剣なのはてな様で、光也とは遊びなのだから。
「したくない……?」
 光也は、少し考えて……、こくっと、頷いた。
 てな様、ごめん。てな様は大好きだし、愛しているけれど。目の前にいるこのぶすも、愛しく思う。
 でも、私には、てな様だけだよ。
「私は、したい」
「………………」
 うつむいたまま、光也は、黙っている。
 しかし、おもむろに顔を上げ、口を開いた。その時。

 ピリリリリ
「……っ!」
 お互いの肩が大きく跳ねる。特に、光也は、自分の体を抱きしめるようにして、おろおろしだす。
 私の携帯電話だ。しかも、これは、電話。
 私は、ポケットから携帯電話を取り出して、液晶に表示された名前を見る。……バイト先だ。
「はい、黒部です」
 私は、電話に出た。鳴り止む着信。
『今日のシフトわかってる? もう十五分も過ぎてるけど』
「すみません……」
『今どこにいるの?』
「実は、先生に呼び出されていまして……。まだ……」
『駅にも着いてないとか?』
「はい……、すみません……。連絡もできなくて……」
「誰かいるの?」
 先ほどからずっと口を噤んでいる光也が、真っ青な顔で私を見ている。
 『誰かいるの?』……そう言った声は、私の声でも、電話の向こうのバイト先の声でも、ましてや光也の声でもない。下からだ。しかも、ただ聞こえただけでなく、その声は、確実に投げかけていた。階段の上にいる、私たちに。
『困るわよ。いくら学生でバイトだからってね、仕事なのよ。責任持ちなさい』
「すみません……」
 とん、とん。
 光也が、私の袖を掴んで、そっと寄り添ってきた。がたがた震えている。
 とん、とん。
 すぐ下で、階段を上ってくる音。
「今から向かいます」
 私は、ばっと光也の手を振り払い、自分の荷物を持ってそそくさと階段を下りる。通話は終了する。
 そして、踊り場で、見知らぬ女学生にぶつかる。わざと。
「わっ……」
「あ、ごめんなさい!」
 よろけた女学生の腕を掴んで支え、これ以上の侵入を阻止する。その学生と一緒に、そのまま、それとなく下の廊下まで下りる。
「ごめんなさい、急いでいて。ケガとかありませんか?」
「あ、いえ……」
「そうですか? よかったー……。じゃあ、本当にすみませんでした。私はこれで」
 私は、階段を駆け下りる。
 目指すは、バイト先。

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 バイト先の店長に、かなり怒られた。正直、もう辞めてもいいんだけど。てな様のこともあるし、クビになるまでは、続けるか。
 バイトが済み、家に帰ってきた。自室に直行。
 私は、いらいらしていた。さすがに、怒られすぎた。爆発しそうというか。
 そりゃ、私が悪い。100%私が悪い。しかし、後悔するのは自由だ。私は、いらいらしていた。
 こういう時に、やることは一つ。
 てな様のお声を聞く。徹底的に。
 ノートパソコンを起ち上げ、早速秘蔵のてな様フォルダにアクセスする。特定のファイルを、指定のソフトで開き、26桁のパスワード入力。そこで、ようやくてな様フォルダが開く。
 私は、ヘッドホンを装着し、目についた音声を再生する。
「…………はふぅ……」
 相変わらず、なんという美声。例え罵声でも、てな様の声で紡がれる言葉なら、全てが癒し。そして、エロティック。
 まんこに触れる。癒しエロボイスによって、とろけたそこ。
『あーあ、べちょべちょ……』
「ん、んふぅ、う……」
『おまんこ、とろとろ……。俺のちんぽ、挿れちゃうね?』
「うんっ、うん……ぁ、ぁああ……!」
『ふ……ふっ、……あ、くうっ……。……はぁ……はぁ……っ……。……あは、入っちゃった……。キミのとろけまんこに、俺のちんぽ入っちゃったよ……。嬉しい?』
「嬉しいっ……、嬉しい……」
『かわいい。キスしよっか。キスしながら、動いたげる』
 てな様のキス。てな様のちんぽ。
 てな様に愛される。この時間は、至福だ。
「ぁ……あ! てな様っ……激しっ……」
『いいでしょ、これくらい……。……っあ、中に出していい? いいよね? もう俺たちは、夫婦だもんねっ……。キミの子宮に、精液流し込むよっ……! 妊娠させてあげるっ。孕んでっ。キミと、俺の子っ!』
「あああ~っ……! てな様ぁ……!」
 てな様に、絶頂へ導かれる。体ががくがく震えて、力が抜ける。

「……はぁ……はぁ……」
 ……すっきりした。
 しばらくぼーっとした後、呼吸を整えつつ、メールボックスを見てみた。メールは、何も来ていない。いや、来ているには来ているが、単なるメールマガジンが数件だ。
 インターネットに繋いで、“手也”と検索する。てな様のブログが出てくるので、それにアクセスする。更新は、されていなかった。
「…………」
 てな様にメールしよう。
“こんばんは、てな様。
今日もてな様の声聞いています。”
「――、――――」
“私、てな様のこと、もっといっぱい知りたいです。
てな様の、好きな女の子のタイプ教えてくれませんか?”
「………………!」
 はっとする。
 私ってば、なに書いてんだろ。
 てな様好みの女の子と、自分が、あまりにもかけ離れていたとすれば、立ち直れないくらい落ち込むくせに。
 てな様、今、何やってるのかな……。
 私みたいに、オナニーしてるかな。てな様のおちんちん、しこしこって、してるのかな。
 したいな。……見たいな。
 さすがに、セクハラだから、聞かないけれど。
 じゅん、と、下腹部に再び熱が灯る。
 てな様に、本当に、孕まされたいよ……。
 てな様は、どんな女の子が好きかなぁ……。
「……あ」
 ぼんやりしていたら、メールを送信してしまった。
 取り消しは、効かない。恥ずかしくなったが、すぐに『どうでもいいか』と考えいたる。
「……てな様」
 大好き……。
 私の彼氏になってください。私を彼女にしてください。
 あなたのことが、好きで好きでたまらない。

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 翌日。光也は、もたもたと日直をやっていたので、隙を見計らって挨拶。
 その翌日。光也は、もたもたと一人でトイレ掃除をやっていたので、隙を見計らって挨拶。
 どちらもバイトがあったせいで、キスして、おちんちんを見て終わっていた。
 光也は、何も言わなかった。ちょっとは抵抗の言葉を言っていたかもしれない。しかし、逆らうことはなく、おちんちんを出した。
 おしっこするわけでもないのに、ズボンの前を開けて、そこを外気に晒した。
 “嫌よ嫌よも好きのうち”……。光也も、いやいやと、泣きそうなわりに、その頭を少し持ち上げていた。
 否、“いや”とは、私が、さわらないことが嫌なのでは? そう察した私は、言ってやった。
『明日は、バイトないから……。光也の家に行っていい?』
 だから、私は、今日の放課後、光也の家に行くのだ。
 一方、てな様は、メールをくれない。しかし、ブログは、更新していた。新しい依頼が入ったらしい。
 てな様、忙しいんだろうな……。

 

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