Direct Voice 第3章

第3章  スタジオなんて真っ赤な嘘


 運賃を払い、タクシーを降りる。
 着いたのは、高速道路下にある、大きなカラオケ店。
 私は、歩く。カラオケ店とは別の方向へ。横手くんもついてくる。
 会話は、なかった。
 私は、薄ら笑いを浮かべたまま、カラオケ店の隣にある、城のような建物に入る。
 中に入っても、人はいない。いても困るので、ちょうどいい。
 部屋を選んで、エレベーターでそこに向かう。
「スタジオ……」
「………………」
「初めて、なんです……。すごい場所ですね……。ホテルみたい……」
 部屋に着くと、横手くんは、ぼそぼそとした知らない声で呟いた。
 ホテルだよ。
 答えず、にっこり笑う。
「まさか、てな様が知り合いなんてね。まずは、飲み物でも飲んでリラックスしよう」
 自動販売機で買った、リンゴジュース。コップに注いで、隠し味を入れて、横手くんに渡す。
 ベッドに腰かけた横手くんは、全く怪しまずにジュースを飲み始める。
 私も、横手くんの隣に腰かけて、リンゴジュースを口に含む。
「でも……、ダミヘは?」
「私の個人用をお頼みするので……、マイクを私の耳につけます」
「え……」
「台本も、特に必要ありません。私を口説いてください」
「………………」
 多分、てな様は、騙されたと思っただろう。ストーカーじみたファンの依頼を受けるとは、こういうことなのだ。
 とは言え、もし、今日てな様と“初めて”会っていれば、普通にダミーヘッドマイクのあるスタジオに行くつもりであった。
 てな様が、知り合いだったからいけない……。
 横手くんは、戸惑いを隠しきれないといった面持ちで、ジュースをごくごく飲んでいく。それなりに身長があり、太ってもいない彼。喉仏が上下する。いやらしいと、思う。

「いつも……、キスの音とかって、どうやって出してるんですか?」
 ジュースを飲み干した彼に聞いてみる。横手くんは、少し困ったようだが、傍らにあったウエットティッシュで手を拭くと、右手を口に持っていった。
 人差し指と中指で唇を押し割り、内部へ侵入させる。それから、ちゅ……、ちゅ、と、音を出す。
「ん……」
 最初は控えめだったが、指をしゃぶっているうちに、音がだんだん激しくなっていく。鼻も鳴り出す。吐息が忙しない。
 最後に、ちゅっと、かわいらしい音を立てて、キスの実演が終わった。
 ウエットティッシュで、自分の唾液にまみれた指を拭く。まだ肩で息をしている。それが緊張でないことを、私は知っている。
「へぇ……」
 ああ、彼は、本当にてな様なんだ。
 がっかりする。イケメンだと確信を抱いていたのに、こんなキモメンで、がっかりする。
 私も、ウエットティッシュで手を拭く。そして、右手を彼に差し出した。
「じゃあ、私の指でやってみて」
 彼の目は、ほとんど焦点が合っていない。ふちの太い黒のメガネの奥、切なさを映した瞳が揺らいでいる。
 多分、何も考えられていない。私の指を口に含んだ。人差し指と、中指。
「んん……」
 わあ、あったかい。これが、憧れ狂ったてな様のお口の中なんだ。
 自分の指でない、他人の指。だから、動きが意地悪だ。てな様の口内をかき回す。
「んっ、んんっ。ちゅ、ちゅぶっ」
 それでも、懸命にキス音を立ててくれるてな様。だけど、これは、キスというより、フェラだ。指フェラだ。
 人差し指と中指で、てな様の舌をつかまえる。そのまま外へ引き抜く。
「んぇ……、えー……」
「あはは、みっともない顔!」
 無理矢理あかんべをさせられた他人は、非常に滑稽で、私は、思わず笑った。横手くんは、悲しそうに眉尻を下げた。
 てな様の舌、本当にやわらかい。タンとして食べちゃいたいくらい。
「んえー」
 タンを引っ張って、私は、自分の口へ運んだ。
「んむぅ、んんう……」
 美味しい、美味しい。てな様のタン最高に美味しい。
 てな様は、今度は、私の唇を使って音を立て始める。私も、いやらしい音になるように、てな様の動きを真似てみる。
「んんぅ……、んん……」
 たっぷりてな様のお口を味わうと、横手くんは、私にもたれてきた。

 彼は、50kgくらいだろうか? 決して重くない重量に、私の下腹部が熱くなる。
「はぁ……はぁ……、てな様愛してる……」
「ふぁ……、まく……る、さん……」
 彼を、ベッドに寝かせる。整わない顔立ちながらも、しっかり発情した身体。てな様って、ほんとえろい。
「なん……で……」
「てな様のはだか……見ちゃうね」
「あ……、や……」
 はぁはぁと、欲情の熱に浮かされながら、私は、てな様のTシャツをめくる。横手くんは、抵抗しているのだろうか? 全く体が動いていないけれど。
 あの媚薬って本物なんだな。
「腰パンなんて、脱がせてくださいって言ってるようなものよね!」
「あぁ……。や……め……てぇ……」
 すでに、てな様のおちんちんの根元が見えている。こんなになるまで腰穿きなんて、てな様は、最初から私を誘っていたのだ。
「やらしー」
「はぁぁ……、だめ……」
 脱がせる。全部はだかに剥いてしまう。
 力の抜けた彼は、抵抗の言葉を呟くだけで、されるがままであった。
 全裸にさせて、再び寝かせる。ただし、足を立てて、M字にさせて。
「や……。まくる……さん……」
「包茎だ、包茎! てな様、被ってるんだ!」
 私は、携帯電話を取り出して、カメラを起動し、すぐさまシャッターを切る。シャッター音に弾かれたように、横手くんがびくっと体を震わせた。
「うそ……。写真撮らないって言った……」
「横手くんの下の名前って何だっけ?」
「な、なに……?」
「私と横手くんは、今日から恋人同士だよ。彼氏の写真撮るんだから、いいでしょ」
「ああ、うそ、いや……」
 ぴっ、ぴぴっ。ピントが合い、シャッターが切られる。ぴっ、ぴぴっ。ぴっ、ぴぴっ。何度も、何度も。

「……横手くんさあ」
 一通り撮影し終わり、携帯電話をしまう。
「足短いね」
「……っ」
 横手くんの表情が、強張る。悔しそうな、泣きそうな顔。
 気にしてるんだ。かわいい。ぶすのくせに。
 足の付け根に触れる。力の入らない両足が、必死にガードしようと内股になる。が、意味がない。足が短い事実は変わらない。
「腰パンなのも、短足に見えないようにしてたんだねぇ。無駄な努力じゃないの?」
 涙が溢れ出した。泣かせてしまった。男として最低だ。違う。私男じゃねえ。ファンとして最悪だ。
「ごめんごめん、泣かせるつもりじゃなかったの」
「んっ……ひっ……」
「ごめんね、許して」
 メガネをも外し、涙をべろべろ舌で拭ってやる。また唇も重ねる。
「大丈夫だよ。私は、大好きだよ。安心しろ短足」
「んっ……、んんっ……」
「愛してるよぶす」
「はぁぁぁ……」
 涙が止まらない。嗚咽も止まない。かわいそうに。
 頭を撫でて、よしよししてやる。しょっぱい雫を舐める。
「何かしてほしいことある? あれば聞くよ」
「も……やめて……」
「ああ、おちんちんさわってほしいんだね」
「言ってな……えくっ」
 皮を被った、てな様の小さなおちんちん。下にこき下ろせば、赤色の果実がぷるんと顔を出す。
「ねぇ、いつも気になってたの……。てな様って、作品では、おちんちんのこと、“ちんぽ”とか“ぺニス”とか言ってるじゃない? でも、あれって、台本に書いてあるセリフだよね? てな様は、おちんちんのこと、何て言うの?」
 しこしこ扱いていると、媚薬のせいか、すぐいってしまった。
「早漏っ」
 聞いていない。
 横手くんは、目を閉じてしまった。そんな。まだ聞きたいことがあるのに。

 まぁ、いいや。目が覚めたら、また相手してもらおう。
「好きよ、てな様……」
 素肌に、キスマークをつけていく。首、肩、胸……。いっぱいいっぱい。
 朱の痕が散ってゆく。しかし、腹から胸にかけて吐き出された白濁を見て、そんなことをしている場合でないと知る。
 白い液体をすする。不味い。舐める。不味い不味い。最高である。
 まだ媚薬の効果が残っているのか、おちんちんは、私の様子を見つめるかのように反り返っていた。鈴口から、たらりと半透明の糸が引かれている。
 私は、それに吸いついた。
「んっ……」
 え?
 今、確実にてな様の声がした。
 さっきまで、不明瞭なぼそぼそ声が喘いでいたくらいなのに。急に、てな様のよく聞く声になった。
 口角が吊り上がる。尿道にまだ残っているであろう精液を吸い上げる。ぢゅうう、と。相変わらず不味くて、まんこが疼く。
「はぁぁ……」
 てな様が、喘いでいる。
 このまま、セックスもしてしまおうか。てな様に孕まされたい。声でも孕むかと思っていたけれど、無理だったし。
 しかし、そうなったら、結婚式も挙げなきゃならない。てな様と、赤ちゃんも養わないと。学生アルバイトでは、とてもまかなえない。
 じゃあ、やっぱり、てな様と恋人でいなくちゃ。まだ結婚はできない。ちゅっちゅぱ、てな様のちゅぱ音参考に、横手くんのおちんちんで音を立てる。
「あああ……っ」
 びくびく震えたかと思えば、私の口に不味いあれが注がれる。少し薄くなったような気がしたが、口内に直接ぶちまけられて、かえって濃い気もする。
 飲み込んで、足にもキスマークをつけていく。
 足の間に潜ると、丸い袋と、すぼんだ穴が目に入る。袋の方に、痕はつけられるだろうか?
 舐めて、確かめる。不思議な感触だった。何かボールのようなものは入っているが、硬くはない。なら、キスをしてしまおう。
 私は、下から、袋に吸いついた。

「いいいっ!?」
「わっぷ」
 力の入っていない足が、たしなめるかのように私の頭を挟む。どうやら、痛かったらしい。
 はぁはぁ息を荒くするてな様。私は、吸いついた場所を撫でてあげる。太もも気持ちいいなぁおい。死ぬ時は、これで締めつけられて逝きたいなぁ。
「まくる……さん……」
 起こしたみたいだ。足の力がゆるまったので、その拘束から逃れて、彼の隣に寝転ぶ。口を中心に顔を舐め回し、まだ硬いそれを握る。
 彼は、されるがままだった。むしろ、口に舌を突っ込ませた時は、相手も舌で応えてきた。
 おちんちんを上下に扱く。そのうち、またびゅるっと、精子が吐き出される。もうほとんど色がついていない。
 私は、彼の体に飛び散ったその液体を、再び舐め取る。味は、格段に薄くなっていた。しかし、不味いことに変わりはない。
 息切れしている彼。全部舐め終わり、乳首を吸おうかと思っていると、声をかけられる。
「ちょっと……、お話しませんか……?」
 ピロートークか。てな様と猥談。何を話そうか。
「腕まくらしてあげます」
「………………………………」
 てな様の横に寝転び、布団をかけて腕まくらする。結構重たいもんだ。
「力……入らない……です……」
「腰くだけちゃったんだね。……気持ちよさそうにしてたよ」
 『かわいい声いっぱい上げてたよ』。一瞬、そう言おうとした。しかし、それを口に出すのは、どうしてか躊躇われた。
 てな様は、口を開いた。
「横手 光也(よこて みつや)……」
「ん?」
「手也の本名です……」
「いい名前ね」
「……好きじゃ……ないん、です……けど……。“ひかりなり”と書いて“光也”なんて……」
「確かに、身のほど知らずね。てな様じゃなくて、光也は、全く光り輝いていない」
 光也は、力の入らない口をへの字に結んだ。
 何か言い返してくるかと思ったが、彼は、何も言わない。悔しそうに、悲しそうに、天井を見るだけだ。
「教室でもいつもひとりぼっちだし、総じて成績良くないし、イケメンとは程遠いし」
「…………」
「ほら、その顔。ぶすなんだよ。だから、女の性処理にしか使えない体なんだよ」
 褒めちぎっているのだが、彼は、全く嬉しそうな顔をしない。なぜか震えている。

「ほら、こっち向ける? キスしよう」
 腕枕とは逆の手で、光也をこちらに向かせる。間近で見つめ合い、口付けた。
 深くすれば、彼もまたそれに応えた。
「……今日、は……」
「もちろん泊まりで、ずっと愛し合おうね」
「ん、んん、ぁ……」
 てな様のキスは、とても上手くて、音だけで昇天してしまいそうになる。しかし、光也のキスは、下手くそだった。
 腕枕している手が痺れてきたのもあって、私は起き上がる。まだ薬が効いているのであろう。光也は、虚ろな目で脱力したままだ。
「光也の体、見せて」
「も……散々見た……じゃ……」
「もっと見たい。だって醜いんだもの。……あ、そうだ」
 今は、昼間だ。電気をつけなくともいいと思ったので、部屋に人工の光は点っていない。
 私は、枕元にあった照明をいじる。ぱっ、と、白いライトが光也を照らす。
「あぁ……」
 惚けたように上げた声の意味は、知らない。布団を押しのけ、光也を隠すものを取り払う。
 まばゆくライトアップされた光也の裸体。くたっと力が抜けて、動きたくとも動けないその姿は、私の中に眠る劣情を叩き起こす。
 薄暗い時には気づかなかったが、乳首が綺麗だ。ピンクとまではいかないが、ほのかなベージュ色の、つんとした乳首。
 私は、吸いついてみた。
「あぁ……っ!」
「乳首……、感じるの?」
「あ、あ~っ……!」
 空いているもう一方をつねると、光也の声で、彼は喘ぐ。かわいい。ぶすだけど。
「気持ちいい?」
「……っ、っ……」
「正直に言っていいよ。誰かに言ったりしないから」
 両手でそれぞれ、きゅっとつまんでやる。小さく喘いだかと思うと、光也は、肯定した。
「……もち……いぃ……」
「へぇ……。光也は、えっちな男の子だね。乳首で感じちゃうんだね」
「……ぃ……じわる……」
「光也の乳首が、いじめてって言ってるもの。ほら」
 こりこりの粒を、つねるように回す。はぁっ、と、吐き出された悩ましげなため息は、まるで女の子のようだ。
 キスをする。メガネをしていない彼。新鮮だが、別にこれといって変わりなく、不細工なままだ。
 乳首を舐めて、軽く歯を立てる。
「んはっ……、ぁん」
「乳首でいける?」
「それは……無理……」
 じゃあ、と、私は、乳首をいじりながら、片手を光也のおちんちんに持っていく。
 熱を持った昂りを扱き、何度目かの精を吐き出させた。

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 寝る間も惜しんで、光也の身体を求めた。光也は何回か寝たけれど、私はずっと起きていた。
 光也は開発済みらしく、お尻でいかせた。しつこく乳首をいじっていたら、それだけでいくようになった。出すものがなくなったのか、おしっこまで出した。
 もうそろそろ、チェックアウトの時間。ふらふらしている光也をバスルームまで連れていって、なんとか体を洗った。
 おしっこもさせてから、ようやく服を着せる。携帯電話でタクシーを隣のカラオケボックスまで呼んで、ホテルを後にした。
「家まで帰れる?」
「ちょっと無理……」
「じゃあ、送っていこうね。家どこ?」
「駅の裏手の……、おっきいマンションの隣……」
 あの駅のかなり近くなんだ……。
 タクシーが来て、それに乗り込むと、光也の家に向かった。
 光也の家は、一軒家だ。私も、お金を払って降りた。
 まだよろよろしている光也を支えて、家に入った。
 音に気づいたのだろう。奥から、駆け足で誰か近づいてくる。
「あ……、えっと……」
 見る限り、彼のお母さんとお父さんだ。私の存在に動揺している。
「はじめまして! 私、光也くんのクラスメートの、黒部茉来と申します」
「は……、はじめまして」
「ちょっと私、昨日悲しいことがあって……、光也くんを一晩中カラオケに付き合わせてしまって……。申し訳ありません。一言連絡すらできなかったのも、私がずっと光也くんを解放しなかったせいです。光也くんを叱らないであげてください」
 親御さんは、納得してくれたようだ。
「光也くん、私のためにいっぱい歌ってくれて……、疲れきってて。光也くんのお部屋どこですか? 私、お部屋まで連れ添いますので」
 お母さんが、案内してくれる。
 光也の部屋は和室で、ベッドが見当たらない。寝具が布団なのだろう。ベッドに寝かせて、帰ろうと思ったんだけど。
 しかし、光也は、自室に足を踏み入れた途端、その場にへたり込んだ。
「大丈夫?」
 光也は、頷いた。震えていた。
「ごめんね」
「わざわざありがとうね」
「いえ、私がいけないのですから……」
 私は、光也の部屋から出る。
「光也くん」
 肩が、跳ねた。
「また明日ね」
 親の手前、一応体裁を気にしたのだろう。振り向いた彼は、怯えた瞳に私を映した。
 明日はもう、月曜日。
 単なるクラスメートから関係が変わって、初めての平日がやってくる。

 

第4章へ ⇒



報告する

0


≪ Direct Voice 第2章 作品一覧 Direct Voice 第4章 ≫
Twitterでシェア!



"カタナド(旧:塗木ちおり)" is creating "ゲーム,漫画,イラスト"
だいたい成人向け乙女ゲームが作りたい人。
カタナド(旧:塗木ちおり) is creating ゲーム,漫画,イラスト

だいたい成人向け乙女ゲームが作りたい人。
お支払い方法
 クレジットカード
 銀行振込
 楽天Edy決済
 デビット&プリペイドカード(Vプリカ等)
  支援はいつ開始してもOK!
  Entyで支援すると約1.5倍以上オトク!
詳細
DMM GAMES 遊び放題
DMM GAMES 遊び放題