Direct Voice 第1章

第1章 好きな声


 なぁ、お嬢様……。
 俺の気持ちわかってんだろ? わかってくれてるんだよな?
 なら……、なんで、他の男といちゃいちゃするんだよ!
 いつもちゃらちゃらしてるように見えるかもしんないけど、俺には、お前しかいないんだから……!
 ……ごめん? 何度言ってきた言葉だよ。さすがに、もう信じられねー。
 体でわからせてやるよ。他の男が近寄れないくらい、俺の匂いで満たしてやる。
 ……あっは……、かわいー下着。いいね、俺の好みだ。さすが、お嬢様。
 ん……、ちゅ。ちゅぷ、ちゅっちゅっ……むちゅ、ぷちゅ……。
 おじょ……さまの、舌ぁ……ぷちゅぅ、やわらか……いっちゅ、じゅぷっ。
 はぁ……ぁぁ……ちゅ、ちゅむ、ちゅうぅっ、ぷちゅ!
 ん、おいし……。
 あはは、お嬢様ってば、もう顔とろっとろ。
 だめだよ。これはお仕置き。まだまだとろけさせてやるから。

 

 

 

*   *   *

 

 

 

「ん……、てな……様……」
『…………、…………。………………!』
「ああっ、好きです……」
『……!』
「ん、んんっ!」
『…………? …………。………………!』
「はぁぁぁ……ん……」
 彼に犯されるのが好きだ。
 私のベッドの上で、小さなノートパソコンにヘッドホンを繋いで、彼に、耳を犯されるのが。
「………………」
 ああ……、終わってしまった……。
 もっと聴いていたかった。しかし、また最初から聴き直すのも億劫だ。
 私は、マウスパッドをさわる。暗くなっていたディスプレイが、光を放つ。
 “ヤンデレっぽい彼氏にたくさん犯される音声”、“CV:手也”。
 ……私は、手也(てなり)様が大好きだ。
 手也様、通称てな様……と、私は呼んでいる。てな様は、美声の持ち主だ。その素晴らしい才能を活かして、同人音声作品に声を当てている。プロ声優ではない。
 素人耳には、詳しいことは、よくわからない。でも、てな様出演の作品は、これで九作目。どれもプロに負けない……と思う。
 活動は、去年秋くらいから……。積極的に活動している方なのかな? それとも、していないのかな?
 私が、彼を知ったのは、運命的なことに、活動を開始して間もない時だった。
 なんとなく乙女ゲームを探していて、良さそうな新作同人乙女ゲームがあったので、購入してみた。
 プレイしてみると、あるサブキャラクターが気になった。攻略対象でも何でもなかった。キャラクターのイラスト、言動、特別魅力的にも感じない。
 唯一、惹かれたのが声だった。てな様を知ったきっかけだ。

 その時の私は、てな様の声にすごくはまり、勢いで応援メールを送ってしまった。
 お優しいてな様は、メールを返してくれて……、私たちは、メールでやりとりをするようになった。
 てな様は、声だけでなく、人柄も良い。一ファンの私に、きちんと返事をくれるのだ。てな様が好きだと、強く思った。
 そこで、調子に乗った私は、“顔見せてほしい”と頼んだ。てな様は、見せてくれなかった。それでも、頼んだ。普通なら、もう返信がなくていいと思う。
 しかし、てな様は、メールを返してくれた。添付ありで。
“やっぱり、顔は見せられません。ごめんなさい”
 添付されていたのは、写真だった。顔ではないが、写真だった。そこには、左手が写っていた。
“まくるさんへ
いつもありがとう
手也”
 手の甲に、赤いボールペンでメッセージが書かれていた。胸が熱くなった。
 綺麗な手。綺麗な心。
 メッセージは、左手に書かれているから、右利きなんだろう。骨ばっていて、しみもなく、いかにも青年の手であった。色は、白そうだ。
 ただ、ほくろがあった。ちょうど、人差し指の付け根辺り。本当に、てな様の手……。
 私は、すぐさまパソコンから自分の携帯電話に送り、待ち受けにした。
 とは言え、やっぱり……、顔が見たい。
 今回の九作目の作品。てな様は、その話を初めてブログに出した時、こんなことを言っていた。
“次はいよいよ十作目です!
記念して、何か新しいことに挑戦したいですね~”
 よし来たと、思った。

 私は、早速てな様に持ちかけた。
“十作目、私の依頼を受けてくれませんか?”
“どんな依頼ですか?”
“個人用をお願いしたいです。ダミーヘッドマイク使ってほしいです。”
“すみません。ダミヘは、持っていないんですよ…。”
“音質にもこだわりたいので、スタジオ収録お願いします。お金払いますから。”
 てな様は、この近くに住んでいる。てな様が時たまブログにアップする写真は、うちの近所のスーパーなどだからだ。確信はないけれど……。
“うちは田舎なので…。”
“この前のブログの写真、私の家最寄り駅近くのスーパーだと思うんですよ。”
 駅の名前を挙げると、てな様は、そこを知っていた。一気にたたみかける。
“てな様、十作目は新しいことしたいって言ってましたよね? なら、初めてのダミヘ経験してみましょうよ。”
“でも、顔がまくるさんにばれてしまいますし…。”
“私、写真撮らないって約束します。人も連れてきませんし。”
“私は、不細工なので…。まくるさんの夢を壊します。”
“てな様の声を最高音質で聴きたいのです。てな様のお顔が例え美形でなくとも、私は全く気にしません。”
 何十回か、こうしたやり取りが続いたが……。
“わかりました。お引き受けいたします。”
 折れてくれた。ついに、折れてくれた。
 しかし、心の準備などが必要だろうから、九作目が販売開始されるまで待つことにしていた。
 いよいよ……、いよいよ、だ。
 いよいよ、てな様のお顔を、お姿を拝見することができる。
 はやる気持ちを抑えつつ、私は、てな様へのメールを作成する。
 九作目の感想と……、十作目、私の依頼の話を書いたメール……。
 送信。
「楽しみだ……」
 てな様の声を、生で聴ける。この日のために、アルバイトも存分にした。お金は、十分にある。
 お金で買えないものはない。
 私の下腹部は、濡れていた。

 

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