シロクロパニック(2)

 そんなこんなでお昼。
 ユキを連れて街に繰り出す。
 行き先は隣町にあるケーキ屋さんのスイーツバイキングだ。概ね電車と徒歩で二〇分ほど。初めて電車に乗ったときは一騒動あったが、今ではスムーズに利用出来るようになった。

 白髪に耳としっぽ、白いワンピースとくれば目立つはずなのだが、全く気にとめられないのはいつものことだ。

 ユキはやはり怖いのか、外に出るときは相変わらず手を握ってくる。いつの間にかこの程度の事には慣れてしまった。

 

 駅前を歩く。
 隣町はちょっとした繁華街で、休日ともなればあちこち人で溢れていた。人混みに近づくと、ユキは決まって腕に抱きついてくる。柔らかい感触に包まれて否が応でも心拍数が上がってしまうが、こればっかりは仕方ない。

 

 しばらく歩いているとお目当ての店の前に着いた。外観はちょっとオシャレなカフェ風。ショーウィンドウにディスプレイされた色とりどりのケーキが目を引く。ユキはいつの間にか俺の腕から離れて、獲物を見つけた猫みたいにケーキを見つめている。

 と、ユキの真横に全く同じようにケーキに夢中な女の子がいた。全体的に黒い服を着ていて真っ白のユキとは対照的だ。しばらく二人の様子を眺めていたが、全く動く気配がないのでユキの肩をつつくことにする。
「ユキ? そろそろ入ろうか」
「きゃ!?」
「にゅ!?」
 ユキは急に触られてびっくりしたのか反射的に横に避け、そのまま隣の女の子にぶつかって一緒に転けてしまったのだ。
「ちょっとー? 急になんなの?」
「ご、ごめんなさい」
 ぺこぺこと頭を下げるユキ。転んだままの女の子は不満そうにユキを見上げる。その目が見開かれて、笑顔に変わった。
「え、ユキ? ユキじゃん!」
 ぱっと立ち上がると笑顔でユキに抱きつく。ユキは咄嗟のことでなされるがままだ。そんなことはお構いなしに女の子はシロの頭を撫でる。
「いやぁ、良かった良かった。最近見なくなったから心配してたんだ」
「ふぇ? クロちゃん……?」

 ユキも状況が飲み込めてきたようだ。

 どうやらクロという名前らしい。

 さっきは気づかなかったが、よく見ると猫のような耳としっぽがあることに気づいた。俺は一安心して様子を見守る。

 手持ち無沙汰になったので、改めてクロちゃんを眺める。一口で言うならスポーティな体型。目はクリっとしてやや釣り気味。肩にかからないくらいの短めの髪が艷やかだ。黒のセーターに黒いジャケットを羽織り、デニムのショートパンツに黒いニーハイソックスを履いている。絶対領域が眩しい。黒のキャップから耳が生えているのだが、どういう風になっているのだろうか。

 

 しばし久々の再会を喜ぶ二人。しかしながら、

「それで最近どうしてたの?」

「実はマスターに助けていただいて……」

 と、近況についての話になったところで雲行きが怪しくなってきた。

 話の途中でクロちゃんが急にこちらに近づいて、こちらを睨みつけると、

「マスターってあなたのこと?」

「そうだけど」
「ユキになにかしてないでしょうね?」
「いやいや、何もしてないって」
「本当でしょうね?」
 今にも掴みかかってきそうな勢いだ。

「待ってください! クロちゃん! マスターはとても優しい方です!」

 ユキが間に割り込んでくる。

 クロちゃんはユキの反発に驚いたのか、バツの悪そうな顔をすると目をそらした。

「マスターは命の恩人なんですから」

「……わかったわ。いきなり怒鳴ってごめんなさい」

「私じゃなくてマスターに言ってください」

「ごめんなさい」

 クロちゃんがそう言ってペコリと頭を下げる。

「いいよ。気にしないで」

 いつになく厳しいユキの表情に俺も毒気を抜かれていた。

 

 そんなこんなで、クロちゃんと知り合うことになった。話を聞くとクロちゃんはユキの先輩の猫らしい。ここ1ヶ月ほどユキを見なくなって心配していたそうだ。

「ところでクロちゃんはこんなところで何してたの?」

「えっと……」

 クロちゃんはケーキ屋にちらっと目をやる。と、同時にぐ~っと大きな音が不意に鳴り響いた。

「せっかくだし、一緒に食べようか? おごるよ」

 それを聞いたクロちゃんはキラキラと目を輝かせたのだった。



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