シロクロパニック(1)

 やわらかい。

 全身を包み込む感触。
 ほのかに甘い香り。
 ぼんやりとした思考が次第に形をつかみ始める。

 

 腕に感じる柔らかなもの。その感触に惹かれて抱き寄せると、俺はそのまま顔をすり寄せた。

「んみゅ…?」

 滑らかな肌触り。良い香りもする。俺はそれに満足してまどろみの中へ――。

「いやいやいや」

 一気に目が覚めた。
 目を開けるとユキの顔。
 寝ぼけた頭で頬擦りしていたのだ。
 ユキを拾って1ヵ月ほど、相変わらず朝は寒い。布団を買うほどの余裕があるわけもなく、結果的に同じ布団で寝ることになってしまっていた。

「んん……」

 どうやら隙間が開いて寒かったのかユキが密着してくる。全身を包み込む幸せな感触。反射的に固くなる息子。必死にそれを宥める俺。

 この一ヶ月でユキは概ね十八歳くらいの外見まで育ち、しなやかな印象の美人さんになった。本人によると、外見の変化はこのくらいで落ち着くらのだそうだ。食欲旺盛なこともあってか、肉が付くところには割と付いている。抱きつかれると柔肌の感触や押し付けられた胸の柔らかさで、理性を保つのが困難だ。

 俺は意識を逸らそうと、目の前にあるユキの耳に目を向ける。白髪の中からひょっこり生えた猫の耳。寝ていても絶えず動いていて可愛らしい。思わず手を伸ばして頭を撫でると、心地良い肌触りだ。ユキも目を覚ます様子もないし、むしろ嬉しそうな気配がする。

 その顔を眺めているうちに、いつの間にか二度寝してしまっていた。

 

 美味しそうな匂い。

 歯切れのよい包丁の音がキッチンの方から聞こえる。

 次に目を覚ますと、ユキは布団の中にいなかった。

 ユキはこの一ヶ月でメキメキと料理の腕を上げ、すこしの自炊歴しかない学生の腕などすぐに追い抜いてしまった。今では専らユキに料理を任せることにしている。

「……おはよう」

「あ、おはようございます。マスター。もう少したらできるのでお休みになっててください」

「いや、もう起きるよ」

 時計を見ると9時を回っていた。今日は休みだったので少し長めに寝てしまったか。

「今日はどんな予定だっけ?」

「む、お忘れですか?」

「ごめんごめん。ケーキバイキングに行くって話だったよな」

 料理の手を止めてユキが睨んできたので、あまり意地悪はやめる。包丁を持った女性を怒らせてはいけない。

 料理に戻ったユキの背中をぼんやりと眺めていると、機嫌よさ気に揺れる二本のしっぽが目に入った。いつも着ている白いワンピースの裾をピンと押し上げてしまっていてふとももの際どいところまで見えてしまっている。その尻尾と同じように息子は今日も元気だ。無防備過ぎて心配になってくる。以前教えたのだけど、何がダメなのかわかってくれなかった。ハリのあるふとももに視線を吸い寄せられながらしばらくしていると、朝ごはんが完成した。

 

 朝飯は焼き魚と味噌汁とご飯という極めて平凡なものだ。量もユキとで変わらない。とは言え体格の差はあるので、ユキのほうが食べているということになるか。

 ユキの食事風景はいつ見ても飽きない。とても幸せそうに食べるので、こっちも嬉しくなってしまう。と、いつもは二杯おかわりするのに今日は一杯だけだった。

「もういいのか?」

「はい」

「風邪でも引いた?」

「い、いえ。今日はせっかくケーキがたくさんいただけるというのでお腹を空かせておこうかと……」

 恥ずかしいのか、目をそらして少し頬を赤らめる。

「そんなこと言って、お腹空いて動けないとかいうんじゃないぞ?」

「大丈夫です」

 その意気は認めるがお腹はぐぅぐぅ鳴っていた。



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