第29章

◆第29章 大魔法使い◆

◆29-1 修道院

 イスタン王国・王都近くの森。
 キララのクラスが明日行われる魔法演習の準備に来ていた。

 そろそろメンバーの紹介。

『慈愛の光・キララ』四ツ星魔法使い。
 スペック誕生月が来て13歳に。女。超人アキラの妹。

『爪乱舞・ミルフィ』四ツ星魔法闘士。
 スペック12歳女。虎獣族。族長の娘。耳しっぽに加え、手足に獣成分を残す。

『螺旋の一閃・リズ』五ツ星魔法剣士。
 スペック14歳女。金髪縦ロールがトレードマーク。本名はリズ・ノーブレイ。イスタン王国の騎士隊に関わる家系。

『鎮魂の祈り・メグ』五ツ星除霊師。
 スペック14歳女。狐族。除霊師の家系。眼鏡が印象的だが、日常生活で霊が見えるのを抑えるためのアイテム。あだ名は“委員長”。あだ名であって委員長ではない。

『無邪気な烈風・アイカ』四ツ星魔法使い
『無邪気な疾風・マイカ』四ツ星魔法使い
 スペック14歳女・双子。名字はライトアームズ。オルル王国・軍部に関わるライトアームズ家の次女三女。ライカ少将の妹たちである。

 15歳以下の優秀な生徒を集めた(という名目)特待クラスの一つである。名目というのは、名家の出や兄が超人という訳あり生徒が集められたクラスなのが実態である。

 そして6人の担任教師が───

『カラネル』五ツ星魔法使い。
 スペック18歳女。狐族。

 このクラスはカラネル学級と呼ばれる。

【リズ】「この付近は魔法の演習に使われますわー」
【メグ】「もし人がいたら避難してくれー。危険だぞー」
【アイカ】「動物さんも避難してね」
【マイカ】「風よ、木々よ。立ち入る者を拒め。臭~い魔法。えいっ!」
【アイカ】「きゃぁ、マイカ、臭すぎだよ~」
【マイカ】「えーっ、私のせいじゃないもーん」

【キララ】「ミルフィ! カラネル先生を呼んで来てです!」
【ミルフィ】「どうしたのだ、キララ! おーっ!? 人面花なのだ!」
 巨大な花のつぼみの先に人の顔。
【─?─】「違います~。食中植物です~。たーすーけーてー」
 それは巨大食中植物の捕食花弁に飲み込まれそうになっている女だった。

【カラネル】「・・・・・・ドジなのは相変わらずね、タルト」
【タルト】「あはは~。久しぶり、カラネル」

 ▼

【カラネル】「この娘が明日の演習の特別講師に呼んでいたターナ・・・・・・今はスイートホームの風習でタルトと呼ばれています。この修道院のOB、かつての私のクラスメイトです」
【リズ】「スイートホーム!」
【メグ】「あの優秀な魔法使いが集められる。という事は、まさか・・・・・・」
【タルト】「ふっふっふ~、えっへん! 『必中の大魔法使い・タルト』です。よろしくね~」
【リズ】「やはり二つ名に“大魔法使い”ですわ!」
【メグ】「実質六ツ星魔法使いと呼ばれているその称号を、食虫植物に捕まっていたこの人がだと!?」
【カラネル】「はい・・・・・・残念ながら」
【タルト】「残念ってひど~い。カラネル~」
 カラネルをぽかぽかと攻撃。

『必中の大魔法使い・タルト』五ツ星魔法使い。
 スペック16歳女。兎族。本名はターナ。所属する大魔法使い育成機関スイートホームの習わしによりタルトと呼ばれる。
 大魔法使いの二つ名は実質六ツ星魔法使いと言われる実力者に付けられる。得意は運がいいことに起因する、絶対に外れない魔法攻撃。しかし『残念な大魔法使い』などとも呼ばれている極度のドジっ娘。

【カラネル】「タルトには大魔法使い級の魔法の威力が、どのくらいものかを実演して貰うために来てもらいました。明日の予定でしたが、準備も整っていますし折角なので今やってもらいましょう。さて、どのくらいの威力を想像しますか?」
【ミルフィ】「オババさんはすごいぞ。王都を一つ滅ぼして、悪い王様をカエルに変えちゃうんだぞ」
【キララ】「あれはおとぎ話です。脚色されているです」
【アイカ】「えーっと、小さな町一つを焦土に変えるくらい?」
【マイカ】「そのくらいなら行けるかな?」
【リズ】「いやいや。今から実演ということは何の下準備のない魔法だろ? 森一つ程度か?」
【キララ】「忌避魔法を掛けていた範囲で予想ができるです。そんなに広い範囲ではないです」
【ミルフィ】「おーなるほどだ」
【メグ】「キララは、またそういう悪知恵を」
【アイカ】「範囲は狭いけど、すごーく深いかも」
【マイカ】「星の中心まで地面をどろどろに溶かしてしまうとか。恐い~」

【タルト】「・・・・・・・・・・・・あはははは」
 なぜか乾いた笑いのタルト。
【カラネル】「それでは実演してもらいましょう。タルト、あの小屋を標的に一番威力のある魔法を撃って下さい」
【タルト】「行きま~す。爆炎よ、ああ爆炎よ、爆炎よ~」
 ピキピキピキと魔法石が割れる音がする。
【アイカ】「なんか残念な詠唱だね」
【マイカ】「だねー」
【メグ】「だが、オリジナルの詠唱だ。さすがは大魔法使い」
【リズ】「魔法石の消費は3つ。強攻撃が来ますわ」
【キララ】「おおー、立体積層型魔法陣を展開です」
【ミルフィ】「来るぞぉぉぉぉ!」
【タルト】「だーいばーくはーつ! とうっ!」

 ど───んっ! と小屋に火の玉が落ちる。半壊した焦げた小屋からはプスプスと煙が上がっていた。

【リズ】「えっと・・・・・・」
【ミルフィ】「えー、これだけか?」
【メグ】「ダイナマイト一本程度だろうか」
【キララ】「意外と普通です」
【タルト】「あ、あはははは~」
【カラネル】「これが大魔法使いレベルの魔法の威力です。もちろん、可燃性のガスで満たす魔法と組み合わせるなど、物理・化学の応用で威力を増すことはできます」
【アイカ】「なんというか・・・・・・意外と常識的?」
【マイカ】「現実的と言うか・・・・・・残念だねー」
【ミルフィ】「おー、残念だ!」
【キララ】「残念です」
【メグ】「残念だな」
【リズ】「残念ですわ」
【タルト】「わーん、残念って言うな~。比較がオババさんではハードルが高すぎですよ~」
【カラネル】「大魔法使いと言うと、『大魔法使いオババさん物語』を思い浮かべると思いますがあれは完全なフィクションです。高度文明期の人類が作った最強の兵器『A砲』の擬人化と言われています。モデルとなった人物は、タルトの師匠でもあるスイートホームの所長です」
【タルト】「大魔法使いプリン師匠です~」

 A砲とは高度文明期に作られ、大神罰の原因ともなった『人類大統一戦争』で使われたアリエルをエネルギー利用した兵器である。

【メグ】「逆に考えるんだ。あのくらいならば、もしや私達も大魔法使いになれる可能性があるのでは?」
【リズ】「ですわ」
【キララ】「でも、あの威力ならミノタウルを何匹かまとめて瞬殺できるです。やはりすごいのでは?」
【アイカ】「そう言われると」
【マイカ】「もしかして、すごい人?」
【タルト】「ふっふっふ~。やっと私のすごさに気付いたみたいね。えっへん」
【ミルフィ】「なーなー。オババさんの悪い王様をカエルに変えた魔法ってのもフィクションなのか?」
【タルト】「うーん、幻覚系の魔法? 変身って魔法は聞いたことないかな~」
【カラネル】「それは面白い質問ですね。変身と言う魔法はタルトの言う通りないのですが、実際に変身する例がありますね」
【タルト】「そうなの?」
【カラネル】「ほら、超人の神罰執行時の龍化。それと狼男の変身でしょうか」
【タルト】「あ~、そういえば」
【カラネル】「さて、これらは幻覚ではなく、ある馴染みのある魔法を応用して実際に変身しています。さて、どうやっているでしょうか?」
【キララ】「それ知ってるです」
【カラネル】「ではキララさんは、しーですよ」
【タルト】「う~ん、え~無理だよ~」
【カラネル】「どうして貴方は知らないのですか。習ったはずですよ」
【アイカ】「あっちこっちから力を掛けて変形? じゃないよね」
【マイカ】「龍は鱗が生えたり、狼男はもじゃもじゃになったり形だけじゃないもんね」
【ミルフィ】「うーん、わからないのだ!」
【リズ】「もしかして・・・・・・」
 リズはキララを見て答えに気付く。
【メグ】「ああ、そういう事なのか」
 メグはリズの視線で答えに気付く。
【カラネル】「キララさんがヒントになってしまったみたいですね」
【アイカ】「キララがヒント?」
【マイカ】「キララの得意なのは、シールドに回復に治癒にバフに攻撃に・・・・・・」
【ミルフィ】「なんでも得意だ! キララすげー!」
【タルト】「う~ん、なんだろ~?」
【カラネル】「さて、そろそろ答え合わせです。答えはキュア。治癒魔法です」
【リズ】「やはりですわ」
【メグ】「だな」
【ミルフィ】「治癒?」
【アイカ】「えー」
【マイカ】「どうして?」
【タルト】「どういうこと~?」
【キララ】「治癒魔法は、魂が憶えている形質に肉体を近付けるというのが原理です。だから術者に医学的な知識がなくても怪我を治すことができるです」
【リズ】「超人は人に龍の魂を加えて作られるらしいですわ。超人になると人と龍、二つの魂を持つことになるそうですわ」
【メグ】「狼男は一つの魂に人と獣の二つの形を持つ特殊な種族と言われている」
【アイカ】「なるほどー」
【マイカ】「面白いねー」
【ミルフィ】「いいなーそれ」
【タルト】「えっ? えっ? どういうこと? どういうこと?」

 この辺が伏線になる予定。



◆29-2 世界の構造

 A砲のこと。
 人類史上、最強の兵器『A砲』。読み方は『えーほう』。

 高度文明期にエンビア国が開発し、1都市を10分ほどで溶けた大地に変える出力を持つ大出力ビーム砲。エネルギー源は大規模『Aユニット』(えーゆにっと)から得られる人類にとっては無尽蔵とも言えるアリエルの力。
 実際は冷却の問題で10分もの長時間放射や連射はできないが、それなりの数が量産されたためにこの欠点はフォローされていた。
 元々、A砲はこの星『惑星ファースト』に衝突する巨大隕石を撃ち落とす目的でエンビア国が作ったもの。そして、それを成功する。これを当時の軍事大国・アムディ国が脅威と思い奪おうとするが、エンビア国は拒否。これにより戦争勃発。アムディ国は欺瞞を掲げ『人類大統一戦争』と呼ばせた。
 エンビア国は戦争の早期集結を望み、A砲を軍事兵器として転用する。

 『A』は天使『Angel』の略で、切り刻んだ天使の体が再生するために使うアリエルを奪いエネルギー利用する仕組みになっている───と、これは仕組みまで理解している者の知識で、『アリエル砲』の略と思っている者が大多数。
 戦時にアムディ国はA砲の仕組みを解明、対抗し『D砲』を開発。人類史上、二番目の威力の兵器であり、読み方は『でぃーほう』。DはDragon、つまり『龍』の略である。龍を切り刻みエネルギー源とする。
 龍は天使と比べると、アリエル供給の蛇口を絞られており、出力はA砲の1/100程度。それを数で補うために2千体近くの龍が狩られた。この龍たちは後の大神罰で神に冷凍処分される。この件により龍は人類を大いに憎んでいる。

 『A砲』『D砲』共に正しくはアリエル兵器だが、魔法兵器と間違って分類する書物や文献も多い。



◆29-3 スイートホーム

 イスタン王国、静かな森の中。
 ここに東部最高の魔法使い育成所『スイートホーム』がある。

「洗濯物が乾きましたよ」
「ふとんもふかふか」
 大魔法使いの少女たちが楽しそうに家事に勤しむ。
「平和じゃのぉ」
 少女たちの中、一人、見た目は初老の老人。
「プリン師匠、お茶をどうぞ」
「ありがとうよ」

『朽ちぬ大魔法使い・プリン』五ツ星魔法使い。
 スペック264歳女。狐族。多くの魔法の伝承者、スイートホームの所長として名を知られる。最も得意な治癒においては伝説級。そのせいか初老の頃で老化が止まり、この先何歳まで生きるか謎である。なお、プリンという名前は本名。

【プリン】「ふぅ・・・・・・お茶が美味い。」

「師匠、急に老けてない?」
「いやぁ、見た目は変わってないんだけど」
「何か気が抜けたような」
「まぁわかるけどねぇ」

【プリン】「タルトのやつがおらんと平和じゃのぉ」



◆29-4

 修道院。

【タルト】「はーっくしょん! はて、寒くもないのになんでしょう~? プリン師匠からの手紙にはなんて書いてあったの、カラネル?」
【カラネル】「・・・・・・・・・・・・はぁ。精密魔法の中級教育修了までを頼まれたわ」
【タルト】「誰の?」
【カラネル】「誰ってあなたよ。タルト」
【タルト】「え~聞いてないよぉ~。精密魔法は苦手~」
【カラネル】「苦手でしたよね。2年、いえ、3年は掛かるかしら。タルト、スイートホームで何かやらかした?」
【タルト】「えーっと~。・・・・・・色々?」
【カラネル】「はぁ・・・・・・学生時代の貴方を知っていれば予想は付くわ。押し付けられわね、これは」
【タルト】「え~、追い出されたみたいに言わないでよ~」
【カラネル】「いえいえ。絶対に追い出されてるから!」
【タルト】「カラネル、ひど~い」
 タルトはぽかぽかとカラネルを叩いた。

 ▼

【カラネル】「そんな訳で新しいお友達です」
【タルト】「皆さん、よろしくね~」

 カラネル学級にトラブルメーカーが一人追加となった。




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