2020年前期Vol.4 小説・旧(プロトタイプ)『妹の紋章』


 相羽です。

 今回は「2020年前期」のメインコンテンツVol.4のお届けでして、僕が書いた小説で平成に(笑)発表されたものでは代表作とも言えそうな、


『妹の紋章』

https://www.amazon.co.jp/dp/B00MKYZ23O


 の旧(プロトタイプ)版を初出ししてみる感じとなります。

 完結してないですし、序盤のみとなっておりますが、それでもけっこう書いてたんだな~と今になって自分で思います(笑)

 現在電子書籍にまとまってリリースされている完成版とはかなり、というか随分違うので、おお! って感じで楽しんで頂けるんじゃないかと思ったりです。

 ではでは、旧(プロトタイプ)・『妹の紋章』本文(前述の通り途中までしか書いてないものですが)は以下となります。↓


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[妹の紋章]

 我が家には家紋が無い。厳密には昔はあったらしいし、それはつまりは今でもあると言えばあるということなんだろうけれど、今では普段、家族のみんなは忘れてしまっているようなのだ。思い出そうとしたら、祖父ちゃんの実家を訪れて調べてみるとか、相応の労力を要する、といった状態である。

 家紋というものをまっとうに保持している、つまりは「正統」と言えるような歴史的連続性を常日頃から意識している家庭という方が現代ではむしろ少数と思われるので、このことは特に驚くようなことじゃない。俺の感覚としても、ま、いいかな、くらいの感じだ。こう言ってしまうと何だか賢しいような気もするけれど、家紋って言うのは、一種のラベルだろう、という思いもある。そう考えると、感覚的に俺は一定のラベルを貼って、それで人を判断するのが好きじゃない。されるのも好きじゃない。お家柄を表すラベルとしての家紋の意義が、現代でどれくらいあるんだろう。

 冬休みの予備校帰りに、今日はそんなことを考えていた。

 予備校帰りは、電車に乗らないで俺は結構な距離を黙々と歩く。電車には乗らない。特に強いこだわりがある訳じゃないんだけれど、単純に、色々と考え事をしながら歩くのが好きなのだ。机に向かって集団で教壇という一定方向に向かって退屈な話を聞いているよりも、ひたすら足を動かして考え続ける思索の中に、色々な発見があるものだよ、なんてこともそれなりに本気で思っている。

 また、この季節の街の風景が特に俺は好きなので、純粋にある種の美を嗜む時間でもあるのだ。

 列島の中では北の方に位置するこの街の冬は、ゆっくりと、静かに降り積もって行く雪と、ポツポツと外灯に明かりがつき始める時間が重なる時間帯が、一番美しいと思う、ちょうど、今のように。

「お兄ちゃん」

 聞き慣れた声が聞こえたので振り向く。

 顔が傘で隠れていたが、ピンクの素地に白い文様が入ったシックな傘と、見慣れた赤いコートで声の主を理解する。妹の、冬子だ。俺より三つ下で、中学二年生。

「部活の帰りか?」
「うん、今日は、バク転の感じがカチって感じだった」



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