第18章

◆第18章 西部・剣聖選抜大会1◆

◆18-1 ギャンブル都市

 大陸西部、最大の国『ウエスタ王国』。そのレキノ区レキノ市にて、『剣聖選抜大会』が行われる。
 神剣は12本、戦士連合区分の東西南北の各部で3本ずつ所有する。各部4年おき、1年ずらして選抜が行われるため、毎年いずれかの地区で剣聖選抜が行われる。選抜方法は各部による。

 西部では剣聖選抜戦。トーナメント戦による選抜と共に、観客は上位者を賭け、大々的なお祭りとなる。剣聖選抜戦トーナメントの参加条件は五ツ星の剣士であること。西部の生まれである必要はないが、剣聖になった場合は西部常駐になる。

 ▼

 レキノ市・戦士ギルド。

【ギルドお姉さん】「戦士ギルドにようこそ♪」
【ネロ】「剣聖の選抜大会の参加申し込みはここでいいのか?」

 その数秒後───

【ネロ】「なんだって!? わざわざ俺様が来てやったのに、四ツ星だと駄目だと!?」
【ギルドお姉さん】「参加条件は五ツ星の剣士であること。そう言う規則になっていますので」
【ネロ】「もしかしたら格付けの更新が来ていないか?」
【ギルドお姉さん】「残念ですが、来てないようですね」
【ネロ】「俺様は、そこらの五ツ星より強い! カードの更新の機会に恵まれないだけだ。ここは特例でどうだ?」
【ギルドお姉さん】「規則ですので」
【ネロ】「気付かなかったふりをすればいい。誰もが俺様の五ツ星オーラでは仕方ないと納得するだろう!」
【ギルドお姉さん】「そう言うわけには」
【ネロ】「そこをなんとか!」
【ギルドお姉さん】「残念ですが」
【ネロ】「そこらの五ツ星剣士を倒してくれば、格付けが更新されるか?」
【ギルドお姉さん】「それは、私の一存では・・・・・・。───戦士ギルドにようこそ♪」
 カランとドアに付けられた鈴が鳴る音。ギルドに男女の二人が入ってくる。

【ネロ】「ほぅ、あれは馬獣族・・・・・・ケンタウロス族とか言ったっか?」
 ヒートアップしていたネロが気を逸らすほど珍しい種族が入ってくる。男の方は馬の首から上が人の上半身になっている少数民族だった。
【ギルドお姉さん】「(ちらっ)」
 お姉さんはネロにアイコンタクトでお帰りを促す。
【ネロ】「話は後でいいぜ。さっさと済ませてくれ」
【ギルドお姉さん】「・・・・・・・・・・・・」
 察しの悪いネロだった。

【男】「先でいいのかい?」
【ネロ】「ああ、早めに頼むぜ」
【女】「ガチャを10連で」
 なお、女の方は普通の人。猿族である。
【ギルドお姉さん】「はい、こちらへどうぞ」
【男】「脱隊した剣士の補充を探しに来たんだ。ついでに剣聖選抜に向けての練習相手になってくれるといいなぁ。五ツ星の剣士を頼むよ」
【女】「私のくじ運、知ってるでしょ? 任せて」
【ネロ】(って事はこの男、五ツ星の剣士か・・・・・・そんなに強そうじゃねーな。こいつにケンカをふっかけて五ツ星昇格をいただくか)
 悪い顔でニヤリとするネロだった。

【ギルドお姉さん】「全ては運命です。あなた方に良い運命の導きがありますように」
【女】「いくわよ」
 女は慣れた手つきでガチャにゴールドをセットし、T字型の回転式のレバーを軽く掴む。未来予知魔法を利用し、適所に戦士をダブルブッキングしないように配置する人材登用システム。このシステムはその動作音から『ガチャ』と呼ばれる。
 なお、未来予知魔法が関与しない部分では本来の運という意味で運命である。よって、回数でゴリ押しして良運を掴むこともできため、機会の平等のためにシステムの利用には現金が必要になっていた。

 ガチャ☆
 今、運命のレバーが回される。

【ギルドお姉さん】「! これは・・・・・・強い運命の導きを感じます!」
 ギルドお姉さんが瞳が銀色に輝く。ガチャの装置も銀色に輝く。銀色に縁取られたカードが排出され、パーパパパパーパパパパー♪とファンファーレが店内に鳴り響いた。

【ネロ】「おおっ、なんだ!?」
【男】「来た! 来たのか!?」
【ギルドお姉さん】「おめでとうございます。『爆殺・ネロ』四ツ星の剣士です・・・・・・ってあれ?」
【女】「銀色演出は四ツ星。金色が五ツ星よ」
【男】「なーんだ、ハズレか」
【ネロ】「ああん? てめぇ、誰がハズレだって!!!!」
【男】「あっ、ごめん! 今のは四ツ星の全戦士に失礼だった。取り消させてくれ!」
【女】「あっ! って言うか、写真! 本人! この人が“爆殺・ネロ”だ!」

 ▼

 同じ頃、レキノ市の繁華街。
 キオとモリーとエンジの姿があった。

【エンジ】「西部では剣聖をトーナメント戦による大会で決定するでござる」
【モリー】「選抜戦と共に、観客は上位者を賭け、大々的なお祭りとなるんだ」
【キオ】「へー、面白そう!」
【モリー】「儲けさせてもらうぞ。エンジの目利きに期待してる」
【エンジ】「剣聖を狙うレベルになると、何個も奥の手を隠しているでござる。ちょっと見たくらいではわからんでござるよ」
【キオ】「エンジ師匠は参加しないの?」
【エンジ】「ニンニン。忍者は影。目立たないのが忍者でござる。まあ、拙者では全然相手にならんでござろうな」
【キオ】「師匠でも!?」
【モリー】「エンジの得意は多数の敵を相手にする時だからな。選抜方法が1人対1人の試合だから、単体敵向けの技を持っている剣士が有利なんだ」
【エンジ】「それを抜きにしても、剣聖のレベルはとんでもないでござるよ。実質の六ツ星剣士でござる」
【キオ】「そんなにすごいんだ! 俺も頑張らないと!」
【モリー】「おー、くじけないとは勇ましいヤツ。よしよし、頑張るんだぞ」
【キオ】「子供扱いするなー! おっぱい押し付けるな!」
【エンジ】「色々なタイプの剣士がいるでござるよ。きっとキオ殿の成長のキッカケになるでござる」
【キオ】「楽しみだ! 早く始まらないかな。予選開始までに10日もあるのかぁ」
【モリー】「前の仕事の儲けがあるし、それまでは観光を楽しもう。だが、この都市には一つ気を付けなければならない事がある。賭け事はほどほどに! ここレキノ市の別名はギャンブル都市!」
【エンジ】「この地域の超人は1級超人レキノ、ギャンブル狂の超人でござる。ここはレキノのギャンブル欲を満たすために作られた都市でござる」
【モリー】「そのためにギャンブルが大々的に解禁されているのだが、怪しいギャンブルやイカサマも多い。そうだね・・・・・・おっと、そこでキャンディーでも買っていこうか。この街の名物なんだ」

【キャンディー屋】「いらっしゃい。普通に買うと100ゴールド。だけどギャンブルで勝負した場合は、勝ったら半額の50ゴールド。でも負けたら倍額の200ゴールドだよ。さぁ、どうする?」
【エンジ】「どのようなギャンブルでござろうか?」
【キャンディー屋】「この街は初めてかい? 赤か青、好きな方に賭けて、サイコロを振るんだ。この街じゃ良くあるギャンブルだよ」
【モリー】「どうする、キオ?」
【キオ】「当たったら半額かぁ。うーん、でも、このサイコロがなんか怪しい! 赤が3面、青が3面。・・・・・・・・・・・・普通だなぁ」
【キャンディー屋】「そうそう。この街では常にイカサマには警戒しないとね。練習で振ってみてもいいよ。自分で色を決めて、自分でサイコロを振るんだ。これならイカサマのしようがないだろ?」
【キオ】「うん、そうだね! だったら面白そうだし、ギャンブルにする!」
【キャンディー屋】「はいよ。赤か青か好きな方を宣言してからサイコロを振るんだぞ」
【キオ】「うん、じゃあ赤! とう!」
【キャンディー屋】「おっ、おめでとう! 50ゴールドだ! 毎度あり!」
 カランコロンとベルを鳴らす。
【キオ】「やったー!」
【モリー】「あはははは」
【エンジ】「キオ殿はギャンブルには向いていないようでござるな」
【キオ】「えー、なんで! 勝ったよ!?」
【エンジ】「このギャンブルをずっとやっていると、どんどん損をするでござる。普通に100ゴールドで買うのが正解でござる」
【モリー】「アタリで50ゴールド、ハズレで200ゴールドだと、平均125ゴールドだろ? ギャンブルを選ぶ人が多いほど、キャンディー屋さんは大喜びだ」
【キオ】「えーっと、100が50と200・・・・・・あっ、ずりー!」
【キャンディー屋】「わははは、悪い店にだまされないようにな、少年」
【エンジ】「キャンディー屋さんがそれを教えるまでが、ここの名物でござるよ。拙者にもキャンディーを」
【モリー】「私にも1本」
 2人とももちろん普通に100ゴールドで購入。
【キャンディー屋】「毎度あり。3人ともいい旅を!」

 おさらいで、

『小さな竜巻・キオ』四ツ星剣士。
 スペック15歳男。近接アタッカー。攻撃・バフ。

『エンドラインの守護神・モリー』五ツ星軍師。
 スペック24歳女。守備バフ。副ヒーラーもこなす。ボイン。

『猿忍者・山の隊隊長・エンジ』五ツ星忍者。
 スペック23歳男。猿獣族の猿忍者。近接アタッカー。剣撃に麻痺効果。育成能力に秀でる。

 ▼

 その頃、ネロ in 戦士ギルド。

【ネロ】「会った早々、ケンカを売ってくれるとは面白ぇじゃねえか」
【男】「い、いやあ、失礼、失礼。ネロ君、どう見ても五ツ星だもん。風格ってやつ? てっきり五ツ星の凄腕の剣士かと」
【ネロ】「あ? ・・・・・・・・・・・・ギャハハハッ、わかってんじゃん! たまたまカードの更新のタイミングが悪くてよぉ」
 ネロの殺意が引っ込んだ。
【男・女】(あっ、意外と扱いやすいかも)

【女】「私が、ヒカリ。こっちがシュン」

『戦場に煌めく閃光・ヒカリ』五ツ星軍師。
 スペック18歳女。軍師と雷魔法、各四ツ星半で五ツ星認定の後衛もできる軍師。くじ運に定評がある。

『金色のケンタウロス・シュン』五ツ星剣士。
 スペック20歳男・馬獣族。またの名をケンタウロス族。近接アタッカー。

【シュン】「僕がこのパーティーの代表だ。ようこそ、シュン・パーティーに」
 パーティー名は軍師の名前を使っているパーティーが多いが特に規定はない。代表者名やあだ名をパーティー名にしているところもある。
【ネロ】「ああ、よろしくな。剣聖選抜って言ってたな。大会に出んのか?」
【シュン】「うん。初挑戦で予選からだけどね」
【ネロ】「俺様は練習相手として呼ばれたわけだな。じゃあ、早速やろうぜ。俺様が勝ったら、出場枠をいただく! ぎゃははははっ!」
【ギルドお姉さん】「お客様、店内での抜刀はご遠慮ください」
【ヒカリ】「ちょっと! この人、めちゃくちゃ!」
【シュン】「うん。いいよ」
 とシュンも剣を抜く。
【ギルドお姉さん】「お客様、店内での抜刀はご遠慮ください」
【ヒカリ】「いいの、シュン!?」
【シュン】「どっちにしても剣聖になるからには最強じゃないと。ルール的に出場枠がどうなるかは僕には保証できないけど」
【ネロ】「おっ、話がわかるじゃねぇか」
【ヒカリ】「待って! シールドなしじゃどっちかが大怪我するでしょ!」
【ギルドお姉さん】「その前に店内での抜刀はご遠慮ください」
【シュン】「そうだね、マフの所へ。マフはうちのヒーラーで・・・・・・」
【ヒカリ】「まずはパーティーのみんなと顔合わせしましょう!」

【ギルドお姉さん】「ありがとうございました。またのご利用を」
 面倒くさい客たちにも愛想のいいギルドお姉さんだった。

 ▼

 レキノ市・酒場ユーウィン。

【マフ】「やったぁ! 男じゃない!」
【ツクネ】「これは来ちゃった? 私かマフに運命の導き、来ちゃった?」

『畳み掛ける回復の圧力・マフ』五ツ星ヒーラー。
 スペック24歳女。巨乳。連続回復と全体バフを必殺技に持つ。

『暴風切り裂き注意報・ツクネ』五ツ星魔法使い。
 スペック24歳女。巨乳。風属性の強力な全体攻撃を必殺技に持つ。

【ツクネ】「ほほう。ルックスは目付きが悪いけど概ね良し。さすがのくじ運ね、ヒカリ」
【マフ】「でもちょっと若すぎ? ネロ、歳はいくつ?」
【ネロ】「うわ、酒くさっ! 18歳だ! 近寄るんじゃねぇ!」
【ツクネ】「お酒の飲めない歳か~。その辺は育てるとして」
【マフ】「育つのを待ってる余裕なんてあんの? 少年がお酒が飲めるようになる頃には、あんたもう26歳よ」
【ツクネ】「歳はあんたも一緒でしょ! ほお、さすが18歳の肌ツヤ」
【マフ】「いい筋肉してるね~」
【ネロ】「な、なんだ!? て、てめーら、撫で回すな! 揉むな! ベタベタすんじゃねぇ!」
 もみくちゃにされるネロ。

【シュン】「あーそれが」
【ヒカリ】「ネロ、奥さんいるんだって」
【ツクネ】「・・・・・・・・・・・・」
【マフ】「・・・・・・・・・・・・」
 二人の動きがピタッと止まる。
【ツクネ】「はぁ・・・・・・飲も飲も。マスター、一番強い酒を!」
【マフ】「私も~。ストレートで!」
 そそくさと店の奥で飲み始めた。

【ネロ】「な、なんだあいつらは!」
【熊】「つい先日まで行き遅れ24歳トリオだったんだけど、その一人、剣士のジューンが“ことぶき脱隊”してね。残された二人は焦ってるのさ」
 黒い巨体がのそっと現れる。

『駆ける過積載・ミーシャン』五ツ星サポーター。
 スペック28歳女。熊獣族。熊顔、熊のしっぽ、熊の手足。ほぼ人語を話す熊である。専業サポーターで、馬車並みの荷物を担いで山中を駆け回ることができる。

【ネロ】「全員が五ツ星のパーティーか。前のパーティーとは大違いだな。これなら、いい戦場を期待できそうだ。ギャハハハハッ」
【ヒカリ】(全員・・・・・・えーっと、自分ももう五ツ星扱いなのかな? とツッこむと面倒臭いことになりそうだからやめておこう)

【ネロ】「んなことより、シールドだ!」
【ツクネ】「シードル? だめだよー、お酒は20歳になってからだよー」
【マフ】「そんなジュースみたいな酒、飲んでられっか!」
 シードルとはりんごから作った果実酒である。
【ツクネ】「ったく酒も飲めない歳のくせに結婚するなんて、生意気だ!」
【マフ】「麦茶でいいから付き合え! 逃さないぞ~」
【ツクネ】「逃さないぞ~」
【ネロ】「ちょ! なんだこいつら、酒癖悪すぎだろ!? おい、こんなところで脱ぐな!」
【マフ】「うひひひ、18歳のくせに生意気な胸板してるじゃない」
【ツクネ】「こいつか、こいつで奥さんをメロメロにしてるのか?」
【ネロ】「ぎゃぁぁ! 脱がすな! 乳揉むな! この酔っぱらいが!」
 ネロは二人の巨乳にビンタを食らわす。
【マフ】「いたっ! いやん」
【ツクネ】「あんっ! だが快感? このテクで奥さんをモノにしたのね」
【マフ】「癖になりそう~」
【ツクネ】「もっと~」
【ネロ】「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

【ミーシャン】「あー、臨界超えてるね」
【ヒカリ】「これは近づいちゃいけない状況ね」
【シュン】「今日は駄目かな~。あははは」
【ミーシャン】「ヒカリ、あんたも種族違いの恋なんて早く諦めないと、将来あの二人みたいになるよ(ひそひそ)」
【ヒカリ】「そ、そういうのじゃないわよ!(ひそひそ)」
【シュン】「?」

【ネロ】「てめーら、見てないで助けろぉぉぉぉぉぉぉぉ!」



◆18-2 世界の構造

 『神の言葉』により語られるこの世界の歴史。

 超人の話。
 超人には1級から3級の級が付けられている。超人が作られた当初は1級超人は4人、2級12人、3級144人の160人だったが、現在は1級4人、2級13人、3級184人。計201人が存在。増加傾向にある。
 超人を過疎地に追いやった方が、暴走の際の被害が少ないのではなかろうか?・・・・・・という人類の浅はかな考えは失敗し、新たな超人が作られる結果になった。超人のいる都市から住民は逃げ出した場合も、人口密度が濃くなった所に新たな超人が作られ、超人は増やされる。転居の制限や人口を管理し、超人数を増やさないようにすることも人類の命題になる。

 級は見た目や強さには関係なく、暴走の連鎖にのみ関係があると考えられている。1級の暴走が付近の2級に、2級の暴走が付近の3級に波及し、広域的な大暴走に発展することがある。よって上級の超人ほど警戒される。
 東西南北で1級超人を1人ずつ担当する。東は超人ロード、管理欲。西は超人レキノ、ギャンブル欲。北は超人グルメ、食欲。南は超人エニルマ、狂った性欲。
 なお、今までに名前の出ている超人キュオスは2級、それを引き継いだ超人アキラも2級超人である。

 超人は人類にとって支配者であり暴君であり天敵であり、神が人類をコントロールする目的で作られる。
 肉体的には人をベースに龍の要素を取り入れ、支配者であるために欲望の解放と人肉嗜食、兵器としての『神の言葉』の流用、暴走のスイッチを設けることにより作られる。ベースに選ばれる人は、欲望の強い者と考えられている。

 人の5千年もの研究により、すでに超人は倒そうと思えば倒せる存在になっている。『神の言葉』は音を遮ることにより防げる。スペックは龍を同等なため、神剣を使いアリエル供給を断てば倒すことができる。
 神にとって超人は使い捨てであり、倒すことにお咎めはない。被害が大きくなりそうな場合、人は超人を討伐する。
 しかし倒しても神が新しい超人を作るだけであり、また多く倒した場合は、いかなる神罰が下るかわからない。よって、無闇矢鱈に討伐することはできず、超人は相変わらず人類の天敵であり続けている。

 龍を流用したことにより、超人も龍たちと念話による遠隔会話に参加できるが、龍も超人もその機能を利用している者は一部のみである。



◆18-3 ギャンブル・シティ

 レキノ市・酒場ガッツーリ。
 モリー隊のメンバーがここで集合。

【カローラ】「やられた~。ごっそり~」
【ホルン】「ふぁぁぁ・・・・・・眠いし、もうやってらんない」
【ホーマス】「・・・・・・・・・・・・かみさん怒られる(ボソッ)」

『旋回する七本の矢・カローラ』四ツ星弓士。
 スペック26歳女。遠距離アタッカー。痺れ矢による広域攻撃。副ヒーラーもこなす。

『暗躍する癒やし手・ホルン』四ツ星魔法使い。
 スペック19歳女。主ヒーラー。夜にバフ。混乱魔法。夜にパワーアップする。

『気の優しい力持ち・ホーマス』四ツ星サポーター。
 スペック26歳男。サポーターが本業だが、投擲を特技とする。

【エンジ】「負けたでござるか?」
【キオ】「キャンディー屋さんだな! 俺もやられた!」
【カローラ】「あんたと一緒にすんな! カードゲームよ」
【ホーマス】「・・・・・・・・・・・・たぶん、イカサマ(ボソッ)」
【カローラ】「たぶん観客に私たちの手を教える役がいたんだね」
【ホルン】「頭の冴える夜を待つべきだった~。って言うか冴えてないから引き際を間違えた~。あーあれだけあれば、五ツ星レストランのディナーが食べられたのに。やってらんない。もう寝る」
【ホーマス】「・・・・・・コートを新調したかった(ボソッ)」
【カローラ】「鎧と弓も行けた。私も酒!」
【モリー】「キオ・・・・・・負けるとこうなるんだぞ」
【エンジ】「ギャンブルは冷静に。でござる」
【キオ】「うん、わかった!」
【モリー】「で・・・・・・どのくらい負けたんだ?」
【ホーマス】「・・・・・・・・・・・・ギャンブル予算の2割(ボソッ)」
【カローラ】「同じくらいかなぁ」
【ホルン】「私も~」
【モリー】「なんだ、有り金ごっそり持って行かれたのかと思った」
【カローラ】「いや、それ。有り金ごっそりやられた」
【ホルン】「手持ちがそれだけだったから助かった~」
【ホーマス】「・・・・・・・・・・・・かみさんには内緒に(ボソッ)」
【カローラ】「次にあった時は憶えてろよ~。あの子狸め!」

 少し離れた場所。
【少女】「ふふふ~ん♪ 儲けさせて貰っちゃった。よしよし、今日もグッジョブだったよ、ペリー」
【ペリー】「クエー、クエー」
 狸耳の狸しっぽの少女は肩に止まったオウムをなでる。鏡のようにピカピカしたアクセサリーを付けている。これで敵のカードを知るのがイカサマの手口である。
【少女】「旅行者はちょろいわ~。さて、次のカモは・・・・・・おっ、いかにも旅行者の一行を発見! ペリー、またお願いね」
【ペリー】「クエー、クエー」
【少女】「そこの旅人さん、ギャンブルはお好きですか?」

 ▼

 街の真ん中にあるコロシアムの前。
 檻の中の手枷・足枷を付けられた男たちが見世物にされていた。

【客】「今日もあんたたちに賭けるぜ」
【客】「応援してるぞ」
【ノーマ】「・・・・・・ふん」
【客】「なんだ、愛想ねぇな」
【客】「まあ、俺たちがいくら賭けても、報酬が変わる訳でもないんじゃなあ。まあ、頑張ってくれよ!」
【客】「いいゲームを期待してるぞ」
【手下】「いいゲームだってよ。観客は呑気なこって」
【ノーマ】「ふん、ただの見世物で終わってたまるか! みんな、生き抜いて死刑免除を勝ち取るぞ!」
【手下たち】「おおっ!」

 このような檻が二箇所に設けられる。その片方の檻の中には少し前、オルル王国西南辺境で起こった野盗逃走事件で、洞窟チームと呼ばれた者たちのボス・ノーマと手下たちが入っていた。
 寿命逃れで死刑のはずが、死刑囚同士の賭け試合のためにここギャンブル都市レキノ市に連れて来られたのだった。
 『デスゲーム』。死刑囚同士を戦わせ賭ける。この都市で日常的に行われている一番人気のギャンブルだ。1チーム5人を選んで出場、2チームで争い、1人対1人の剣による戦いを5戦行う。勝敗は片方の死により決まり、つまり最低でも1ゲームで5人死者が出る。

 各チーム、檻の中に戦う順に5人が並べられており、観客はそれを見て勝敗を賭ける。
 観客のルールは、2チームのうち勝つ方に賭ける「チーム」。5戦それぞれの勝敗を賭け、4戦(以上)を的中させる「デスゲーム4」。5戦全てを的中させる「デスゲーム5」。配当はオッズによるが通常「デスゲーム5」「デスゲーム4」「チーム」の順で高配当となる。

 選手側のルールは、初期段階では各チーム50人、これがだんだんと減っていき、戦える者が5人を割るとゲームオーバー。
 勝利条件は10勝。報酬には死刑を免れ、寿命をその時点から5年間延長されての無罪放免の恩赦が与えられる。これはチームではなく個人個人に与えられる。

【売り子】「いらっしゃいませ。今日はいかがしますか、レキノ様」
 賭け札売り場のお姉さんは、大きな常連客を見上げる。
【超人レキノ】「もちろん、デスゲーム5じゃ! 10万ゴールド!」

 1級超人レキノ。狸族。460歳男。このレキノ区レキノ市の名前の由来であり、ここがギャンブル都市になった原因であるギャンブル欲の超人。見た目は、顔は気の良さそうなおっさん。体は顔に不相応にでかい。

【売り子】「えっと、10万ゴールド1点賭けですか・・・・・・構いませんか?」
 売り子は、ちらっとレキノの背後にいるメイドさんに視線を送る。
【メイド】「・・・・・・・・・・・・レキノ様。1点賭けはあまりに確率が低いのではないでしょうか?」
 中央局・神事部・レキノ区超人管理課・お側役主任・キリン。スペック17歳女、眼鏡女史。超人アキラのお側役主任カトサと同じポジションだが、柔らかい笑顔のカトサに対し、キリンは眼光の鋭いメイドさんだった。
【超人レキノ】「今日のゲームは鉄板じゃ! これ以外は考えられない! ここは無駄な賭けはせずに一点集中、最近の負けを一気に取り戻すチャンスじゃい!」
【キリン】「鉄板・・・・・・これ以外は考えられない・・・・・・はて、昨日も一昨日も聞いた気がしますが」
【超人レキノ】「今日は特に自信があるんじゃ!」
【キリン】「3日に一度は聞いているセリフですが。デスゲーム5は一戦でも相打ちがあると、その時点で全賭け札が負け確定です。せめてデスゲーム4にして確率を上げるべきです」
【超人レキノ】「相打ちなど20戦に一度程度じゃもん。今日ほど鉄板じゃとデスゲーム4じゃオッズが5倍行くかどうか」
【キリン】「レキノ様・・・・・・現在5連敗中です。そろそろ一勝しておかないと暴走の危険があります。以前の暴走をお忘れでしょうか? 街を崩壊させてしまっては、レキノ様の大好きなギャンブルもしばらくできなくなってしまうのですよ? ここは的中金額よりも、確率にするべきと進言いたします。出過ぎた真似だと思いますので、これを最後の進言とさせていただきます。さあ、お選び下さい、レキノ様」
 キリンは淡々を意見を述べた後に、鋭い眼光を放ちながら超人レキノを見上げた。
【超人レキノ】「ぐ、ぐぬぅ~」
 レキノは渋々、キリンの意見通りにデスゲーム4に賭け札を変更した。
【観客】「あっ、レキノ様だ」
【観客】「最近調子はどうですか? 負けて暴走しないで下さいよ」
 気軽に観客達が声をかけていく。
【超人レキノ】「おう、今日は自信があるぞ!」

 ▼

 少し後。

【モリー】「おや、あの選手ってライカ少将の仕事の時の」
【エンジ】「そうでござるな。即、死刑になるところを免れてここに連れられてきたのでござるか」
【モリー】「運が良いのか悪いのか」
【キオ】「みんな強そうだ。どっちに賭けよう」
【カローラ】「ここで取り戻すわよ!」
【ホーマス】「・・・・・・・・・・・・おー(ボソッ)」
【ホルン】「お~」
【エンジ】「みんな、賭け札は買ったでござるな?」

「さて、本日のデスゲームは互いに3回戦目のルーキーチーム同士の対決───」

【モリー】「それじゃ、次はワンワンレースでも行ってみようか」
【キオ】「えー、試合見ていかないの?」
【エンジ】「あれは・・・・・・キオ殿は見ない方でいいでござる」
【モリー】「残酷ショーだからな。楽しいものじゃない。それよりも小さいワンワンは可愛いぞ。ニャンニャンに負けず劣らずだ」
【キオ】「見たい!」

 ▼

 ワンワンレース。早い話が競馬の子犬版である。

【子犬たち】「わんわん」「きゃんきゃん」「くう~ん」
【キオ】「かわいい!」
【モリー】「なぁ? かわいいだろ? かわいいだろ?」
【店主】「さあ、好きなワンワンに賭けてくれ。どの子も活きが良いよ」
 犬耳、犬しっぽ。犬族の店主が陽気に声を掛ける。
【キオ】「犬族だ! 敵だ!」
 キオ、剣を抜く。
【モリー】「こら、キオ!」
【店主】「おや、東のオルルの猿族の方かな? ここレキノは中立都市だよ。仲良くお願いするよ」
【キオ】「うん、わかった! よろしく!」
 キオ、剣を収める。
【モリー】「素直なやつだなぁ!」
【店主】「ははははっ、よろしくな。楽しんで行ってくれ」
【キオ】「犬族って別に恐そうじゃないんだな。もっと、鬼みたいな種族だと思った」
【モリー】「そんなもんだよ。どこの国だって、みんな誰かの親で子供で友人で。国の都合で争っているだけ」
【エンジ】「鬼族とは違うでござる」

 ─間─

 ワンワンレースの結果。
 エンジ、ホルン、少額の勝ち。他4人少額の負け。

【カローラ】「くそぉ! 本命はデスゲーム! 結果を見に行くぞ!」
【ホーマス】「・・・・・・・・・・・・今度こそ(ボソッ)」

 デスゲームの結果。
 エンジ、モリー、ホルン大勝。キオ、ホーマス少額の勝ち。カローラ少額の負け。

【エンジ】「にんにん♪」
【モリー】「エンジの目利きに頼って正解」
【キオ】「えーっと、ちょっとだけ勝ってる!」
【ホルン】「ふぅ、取り戻した」
【カローラ】「あああああああ、なんで私、エンジの目利きに頼らなかった! 私のバカバカ」
【ホーマス】「・・・・・・・・・・・・ふぅ、少し取り戻せた(ボソッ)」

 そして───

【キリン】「・・・・・・」
【超人レキノ】「・・・・・・・・・・・・・・・・・・orz」
 確率の高い賭け札に変えたにも関わらず、レキノ敗北。
【キリン】「推定暴走確率76%に上昇。困ったものです。くぅ・・・・・・」
 高まる暴走の危険性に、胃痛を覚えるお側役主任キリンだった。

 1級超人レキノ。狸族。460歳男。ギャンブル欲の超人。
 過去、ギャンブルに負けまくったストレスによる暴走は2回。被害は4万人、3万人。神罰執行による暴走は2回で下級超人への連鎖による被害も合わせると22万人、48万人。各暴走で街を崩壊させる。
 管理しやすい超人とされるが、1級であるために下級超人への連鎖により広域暴走に発展することが恐れられる。ギャンブルは下手の横好き。しかしギャンブルには勘が悪い癖に、接待的なイカサマには敏感という困りもの。

 余談ではあるが、キリンは親がギャンブルで作った借金返済のためにお側役になる。未婚。レキノは熟女好き・・・・・・というよりは若い娘が苦手なため、お側役主任は性格キツめの少女が務め、お目付け役を兼ねるのが習わしとなっていた。



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