第6章

◆第6章 大天使アノン降臨◆

◆6-1 ネロの出発

 大神罰───高度文明の終焉時の神の降臨を元年とし、それから既に五千年が経っている。今は神暦5257年。オルル王国の歴史にこの年の大きな事件が二つ刻まれることとなろう。一つは超人キュオスの死。もう一つは───

「まさかあのネロくんとはなぁ。ミリンをよろしく頼むよ」
 ミリンの兄・ミソウ、近隣の村里の農夫の青年、19歳、既婚、特筆する特徴はない平凡な農夫である───に、ネロとミリンは結婚の報告に行く。

 数日後。
【アキラ】「モデッタ市は初めてだ~」
【キオ】「俺も!」
【ネロ】「どこも大して変わんねーよ」
【ミリン】「人口に比例して石畳の面積が広くなるくらいかな」
 アキラ、キオ、ネロ、ミリンを乗せた馬車がモデッタ市。アキラとキオは馬車の運転手とミリンのボディーガード。ミリンはここにいるネロの兄に結婚の挨拶をし、2泊後ネロは長距離馬車で旅立つ予定だ。

【ネロ】「チッ・・・・・・兄貴に合うのは半年ぶりくらいか。苦手なんだよな」
【ミリン】「立派な建物・・・・・・ナロさん、大出世ですね」

 中央局・神事部・キュオス区総務課・課長ナロ。区内においては神事部総務課と縮める。神、天使、超人などの案件を扱う部所の課長を務める。
【ナロ】「超人キュオスによるガゼフ市の被害報告、修正を急げ」
【部下】「はい、早急に!」
【ナロ】「被災者の生活を第一に。予算は修正分を見込んでいい、私が話を付ける!」
【部下】「さすがナロ課長、頼りになる」
【部下】「厳しいけどな」
【部下】「失礼します。ナロ課長、ご家族の方が面会に来ました」
【ナロ】「ご苦労、通してくれ」

【ネロ】「・・・・・・よう」
【ミリン】「ナロさん、ご無沙汰してします」
【ナロ】「遠路はるばる、よく訪れてくれた。ネロ、ミリンちゃん」
【ネロ】「・・・・・・おう」
【ナロ】「でかした! あの小さくてヨチヨチ歩いて可愛かったネロが、もう結婚なんて! 兄さんは、兄さんは感激だぁぁぁ!」
【ネロ】「抱きつくな! 何十年前の話だ! 10歳の時には俺様の方が背ぇでかかっただろうが! くそ兄貴がぁぁぁ!」
【ミリン】「ナロさん、相変わらずネロにスキンシップ強いなぁ・・・・・・」
【ナロ】「しかも、私たちの世代にも人気があったミリンちゃんとは。この果報者! ミリンちゃん、ふつつかで可愛い弟ですがよろしくお願いします」
【ミリン】「はい。お義兄さんもよろしくお願いします」
【ナロ】「妻と子どもたちにも会いに行ってくれ。私も夕刻には帰れるようにする」

 馬車の番をしているキオとアキラ。空を見上げている。
【アキラ】「天使だ~」
【キオ】「2匹だ! 都会だと、天使も多いのかな?」
【アキラ】「どうなんだろ~」
【キオ】「あっ、3匹目発見!」
【アキラ】「匹って虫じゃないんだから~」
 天使は常に空を徘徊し人類を監視している。一日中、空を見上げていれば一回くらいは見る程度のレア度。しかし、2体、3体とまとまることは珍しかった。



◆6-2 アキラ悶々

 夜。

【キオ】「俺もミリンねーちゃんと同じ部屋が良かったなー。どうして? どうして?」
【アキラ】「キオは当分、僕にも質問禁止~。大きくなればわかるから~」
 宿を取るが、当然ネロとミリンの部屋、キオとアキラの部屋は別になる。
【キオ】「みんなそう言うんだよな! なんで・・・・・・って質問禁止だった!」
【アキラ】「う~ん、キオは・・・・・・いや、なんでない~」
 赤ちゃんがどうやってできるか知っているの~?と聞こうとして飲み込む。キャベツ畑やコウノトリ的な事をいまだに信じていて、その後の無邪気な質問攻めが目に見えていた。
【アキラ】(誰かキオに説明してくれるといいのに~)
 みな、こう思うためにいつまでもピュアなままのキオがいた。
【キオ】「ぐご───っ。すやすや」
【アキラ】「って、寝てるし~! 今日は疲れたからな~、僕も寝よう~」
 ・
 ・
 ・
<あっ・・・・・・>
<まだ、痛ぇのか?>
<ううん、いいよ>
 カッ! 普段、糸のようなアキラの目がかつてないほどに見開いた。
(こ、この宿、壁が薄い~。
 ミリンさんが恥ずかしがってる~。
 わぁ、ミリンさんがあんな声を~。声大きい~。
 キ、キオに聞こえちゃうぅぅぅ~?)
「すやすや! すぴー!」
(よかった~。元気に爆睡してるみたいだ~。
 キオが聞いたら、どうして?どうして?って大騒ぎしそうだもの~。
 ・・・・・・・・・・・・えっ?
 そ、そこってどこ~!?
 そんなってどんな~!?
 眠れないぃぃぃ!!!!!!)



◆6-3 大天使アノン

【キオ】「アキラ! 起きろ───っ!」
【ネロ】「いつまで寝てるんだ! 朝稽古だ! キオじゃ相手にならねー!」
【アキラ】「んぁぁぁ~!? あの二人が僕より早く起きているなんて~。ってもう、お昼前!」
【ミリン】「アキラくんがお寝坊なんて珍しい。具合でも悪いの?」
【アキラ】「な、なんでもないです~。大丈夫です~」
【キオ】「目の下にクマできてるぞ!」
【ネロ】「なんだ、慣れねーベッドで眠れなかったのか? 細かいやつめ。ぎゃはははっ」
【アキラ】「あ、あははは~、そんな感じ~」
 なぜだか疲れているアキラだった。
 なぜだか疲れているアキラだった。
 なぜだか疲れているアキラだった。

 ▼

【アキラ】「わ~っ! 参った~!」
 寸止めルールの模擬戦。
【ネロ】「なんだ、やっぱ具合でも悪ぃのか? まるで手応えねーぞ!」
【アキラ】「た、旅の疲れかなぁ~。ネロは元気だね~」
【ネロ】「ぎゃはははっ、何かすげー体調がいいんだ」
 目の下にクマができているアキラに対し、ネロはつやつやの肌艶だった。
【ミリン】「うふふふ♪」
 ミリンもつやつやしていた。
【ネロ】「こんくらいにしとくか。さぁて、昼飯食ったら、中央通りの方に買い物に───!?」

「!?」
「何っ!?」
「なんだ!?」
「まさか!?」
 一斉にみんなが空を見上げる。ネロたちだけでなく、モデッタ市の市民のほぼ全員が空を見上げる。馬も猫もトカゲも蛇も空を見上げる。上空に違和感。圧迫感。

 その頃、神事部総務課。
【部下】「モデッタ市北の上空に空間の歪みを検知───」
【ナロ】「この波形は・・・・・・しかし、なぜ? ───まさか!?」
 課長ナロが青ざめる。
【部下】「歪み増大! 具象化します!」

 段々と存在感が濃くなる。重くなる。半透明から形が明白になって行く。空に九枚羽の天使が顕現した。大天使アノン降臨。
 大天使アノンはゆっくりと空を徘徊する。更に3体の天使が近寄り、アノンの衛星のように周囲を回った。

「ああっ・・・・・・」
「災いの天使だ」
「まさか、ここにも神罰が落とされるのか?」
「ここもガゼフ市の様に・・・・・・」
「あ、でも・・・・・・」
「超人なんて、ここにはいないよな?」
「一番近くにいたのが、ガゼフ市の超人キュオス・・・・・・もう死んだのでは?」
「討伐成功が嘘だったのか? それでモデッタ市に逃げ込んだとか」
「それともモデッタ市のどこかに、みんなが知らないうちに超人が住んでいたなどと言うことは・・・・・・」
 皆、建物の中に避難し、窓から恐々と空を見上げる。

【キオ】「意外と小さいね」
 キオも誰に言われるまでもなく声の音量を下げている。
【アキラ】「普通の天使は人と同じくらいと言うから~・・・・・・4メートルくらいかな~。結構大きいは大きいんだけど~・・・・・・」
【ネロ】「威圧感がハンパねぇせいだ。100メートルくらいありそうな威圧感だぜ」
【ミリン】「倒そうとか馬鹿なこと考えないでよ、ネロ」
【ネロ】「アホか! そんなことを思える相手じゃねぇよ、あれは・・・・・・」
【キオ】「こっちに近づいてきた! どうしよう?」
【アキラ】「隠れても意味ないけど~、なんとなく隠れよう~」

 カッ!
【キオ】「えっ、何? 何?」
 視界が真っ青に染まる。天使の一体が青い光を発する。遠くから見た場合、青い光の柱が立っているように見えることだろう。
【キオ】「天使の光の柱?」
【アキラ】「青って神罰~!?」
【ネロ】「おい、この宿屋が照らされてねぇか!?」

 ボッ!
 宿屋の天井が、一瞬で消滅する。
「キャッ!」
「何だ!?」
 宿屋の従業員と、他の宿泊客から悲鳴が上がる。

【ネロたち】「「「「!」」」」」
【大天使アノン】『・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
 ネロたち4人は、地上数メートルまで降りてきた大天使アノンと目が合ってしまう。4人は射すくめられ、声も出せず動くこともできない。

 その頃、神事部総務課。
【部下】「青い光の柱が立ちました!」
【部下】「青い柱は神罰の兆候・・・・・・だけどモデッタ市に超人はいません。どういう事でしょうか、ナロ課長!?」
【ナロ】「・・・・・・・・・・・・知らないのも無理はない。滅多にある事でないからな。正確な青い柱の意味は、神が超人に関わる命令を大天使アノンに発した、という事。一つは神罰。もう一つは───超人の誕生。大天使アノンは欲望の強い者を、超人として選ぶ!」

 キオたちのいる宿屋。
【ネロ】「!」
【ミリン】「・・・・・・」
【アキラ】「~」
【キオ】「!」
【大天使アノン】『・・・・・・・・・・・・』
 大天使アノンの視線がネロ、ミリン、キオ、アキラを値踏みするように移動する。顔は彫像のようで眼球などない。だが、明らかに視線を感じる。圧迫感という形で視線を感じる。
【大天使アノン】『・・・・・・・・・・・・』
 そして、視線が定まった。

【アキラ】「えっ!? 僕~!?」
 大天使アノンの視線はアキラを捉えた。

【大天使アノン】『支配せよ』
 口を開いたわけではないが、大天使アノンはそう声を発した。
 ウォォ・・・・・・・・・・・・ン・・・・・・カッ!
 大天使アノンが両手を広げると共に立体的な魔法陣が空中に展開され、それは射出されるようにアキラの額に収束する。
【アキラ】「~~~!?」
 アキラは弾丸にでも撃たれたように後ろに弾け飛んだ。
【ミリン】「きゃあっ!」
【キオ】「アキラ!?」
【ネロ】「くそがぁぁぁぁぁぁ!」
 ネロはミリンを抱きかばう。
【大天使アノン】『・・・・・・・・・・・・』
 だが、それだけだった。大天使アノンは他には何もせずに上空へと戻り、空気に溶けるように消える。青い光の柱も消え、他の天使たちは空の何処かへと飛んで行った。

 神暦5257年、超人アキラ誕生。
 ───オルル王国史に刻まれる事となる。



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≪ 第5章 作品一覧 第1~6章 あとがき ≫
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