第5章

◆第5章 結婚◆

◆5-1 ネロの配属

 この時代の印刷技術はと言うと版画である。保存が効く品質の紙は貴重で、書籍はとても高価。今は『ナーナ姫の戦術論』がベストセラーになっている。

 そんな時代にそぐわない戦士カード。透明なカードに発光するインクで表示され、状況に応じて内容が自動で書き変わる。例えるならば写真が次々に変わるデジタルフォトフレームに近い物だが、1ミリ程度の薄さで電源らしきものはない。
 戦士カードもシステムも高度文明期の技術で作られた物。その根幹となるサーバーに当たる部分は人工衛星『マザー・エンビア』。そう、宇宙にある。大雑把に説明すると生体コンピューターと未来予想魔法を使った惑星シミュレーターみたいなもの。
 色々とハイスペックな機能が満載なのだが、今は全機能が使えない状況にある。主エネルギー源はアリエルを消費する『Aユニット』という装置だが、神に発見されることを恐れ、アリエルは使わずに副エネルギー源である太陽光により動作していた。

 限られたエネルギーで運用していることの一つは、人材登用システム、通称『ガチャ』。必要な場所に必要な人材を配置するのが、最も世のためになると考えられている。そのために不可欠な戦士の評価データを、衛星軌道から戦士の活躍を評価し二つ名を付けて発信する役も担う。
 もう一つは通信手段として。受信送信は毎朝、日の出時のみに行われる。これは太陽のノイズに紛れさせることにより、神に発見されることを防止するためである。よって、リアルタイムに連絡する事はできない。
 戦士カードは元々はデジタル新聞的なものを流用しており受信専用。送信装置は狐族特有の魔法を要するために戦士ギルドに置かれる。送信装置はよほどの緊急の場合と判断されない限り、一般市民には使用を許されない。

 ▼

 そして朝。
 ナタネ村。キオたちの長屋。

【ネロ】「ぎゃはははっ! ついに来やがったぜ!」
 ネロのカードにパーティー配属の知らせが届いた。
【キオ】「見せて見せてー! へーこうやって連絡が来るんだ! 『地道に前に進む男・マスオ』三ツ星軍師。この人がガチャでネロを引いたのか・・・・・・うーん」
【アキラ】「う~ん、言っちゃ悪いけど~」
【ネロ】「ぎゃははは、冴えねぇ! しょぼそうな軍師だな!」
【アキラ】「あれ、そこ、笑って済んじゃうところなんだ~。本当にそうだったら、大変だよ~」
【キオ】「ナーナみたいな軍師がいい!」
【ネロ】「ぎゃははは、わかってねーな。すげぇ軍師じゃ俺様が引き立たねぇだろ? しょぼい軍師なのに俺様が大活躍! それで、まずは五ツ星だ!」
【アキラ】「えっ、“まずは”って言うと~」
【キオ】「まさか!」
【ネロ】「そこはまだ最初の一歩よ。目指すは───剣聖!」

 神が初期に作った生物には死の概念がなく、アリエルを消費し無制限に回復してしまう。それらを倒すべく、神はアリエル供給を断つ十二本の神剣を人に授けた。それを託される十二人の選ばれし剣士を十二剣聖と呼ぶ。剣士にとって最強の称号である。

【アキラ】「言ったぁ~。うわぁ、思っていてもなかなか口に出せないよ~」
【キオ】「おぉぉぉぉ! 俺もなる! 剣聖っ!」
【ネロ】「ああん!? くそチビてめぇは真似すんな! 剣聖を目指すことが安くなんだろ! ったく俺様の真似をして一番でかい剣を使ってるしよ!」
【キオ】「なんだとー! まずはネロを倒す! 俺の最初の一歩!」
【ネロ】「ぎゃははははっ、相手してやんよ! キララ! いねぇか、アキラ妹? シールドだ!」
【アキラ】「そんなことより出発の準備をしないと~」
【ネロ】「2週間後に合流って書いてあんぞ? 乗り合い馬車で5日くらいの距離だ。余裕じゃねーか」
【女性】「アキラの言う通りよ、ネロ。戦士になったら、次はいつ村に戻ってくるかわからないのよ」
 話を聞いていたナトウの奥さん・リマが話に混ざる。
【女性=リマ】「うちの旦那は近場だったけど、違う国へ行ってもう二度と故郷に戻れない戦士だっているのよ。お墓参りをして、お兄さんやお世話になった人に挨拶してから出発しなさい」
【ネロ】「あぁ、そういう事か」
【リマ】「ネロには想い人はいないの? ミリン? それともイオ?」
【ネロ】「ああん? ねーよ!」
【リマ】「あらそうなの? てっきりどっちかかと。いつ死ぬかもわからない身なんだから、好きな人がいるのなら告白して血を残しなさい。強い子孫を残すって事は大事なことなんだから」
【ネロ】「死なねーし。そもそも結婚は18から・・・・・・あーあと1ヶ月だな」
【リマ】「そのくらいなら早くても大丈夫。意外と大雑把だから」
【アキラ】「し、子孫って~!? うわぁぁぁ~」
 アキラ赤面。超赤面。
【アキラ】「ミリンさんは駄目! 絶対駄目~!」
【キオ】「ミリンねーちゃんは渡さないぞ!」
【ネロ】「だから、ねーって言ってんだろ!」

【イオ】「どうしたー?」
【ミリン】「おっはよー。呼びました?」
 イオとミリンが顔を突っ込む。
【ネロ】「呼んでねぇ!」
【ミリン】「はうっ!」
 ネロはミリンのおっぱいにビンタした。
【イオ】「こらぁぁ! おっぱいを叩くなぁぁ!」
 イオ、ネロにチョップの連打。
【ネロ】「いて、いて、いて、いてーよ、くそ、このデカ女ぁぁ!」
【ミリン】「はぅぅ。いきなり何? どうしたの?」
【アキラ】「ネロにパーティー配属の通知が届いたんだ~」
【キオ】「それで、ネロが子孫を残すんだって!」
【ミリン】「し、子孫って!? 誰と? 誰と? 誰と?」
 ミリン食いつく。
【イオ】「マジか、ネロ? そんな相手がいたなんて。誰、誰? 隠すなよー。教えろよー」
 イオも食いつく。
【ネロ】「だから、いねーって言ってたんだよ!」
【ミリン】「なんだー」
【イオ】「ネロに一瞬でもそういう浮いた話を期待した私たちが馬鹿だったよ」
 ミリンとイオは残念そうに肩を落とす。
【キオ】「ねーちゃんは? ねーちゃんとネロの子供だったら最強だ!」
【ミリン】「イオとネロの子・・・・・・すごそう。どう? どう?」
 ミリンが肘でイオをつんつんする。
【イオ】「えっ、私がネロと? ないわー」
 イオ、完全にスルー。素でスルー。真顔でスルー。
【イオ】「憎まれっ子の幼馴染だけど、晴れの出陣の決定だ! お祝いしなくちゃな!」
【ミリン】「パーティーをしましょう!」
【ネロ】「ぎゃははははっ、それには賛成だ! 肉だ!」
 そこはイオ、ミリン、ネロの意見が揃う。

【イオ】「夕刻開始でいいよね~? んじゃ、私はナタネ旅館で場所を借りて、そのまま料理作ってるわ」
【ミリン】「村里のみんなに声を掛けるのは私と・・・・・・キオくん、アキラくん頼める?」
【キオ】「おー、まかせろ!」
【アキラ】「は~い、ミリンさん~」
【イオ】「ミリン、ちょっとちょっと」
【ミリン】「なぁに、イオ? ・・・・・・・・・・・・うふふふっ、了解♪」
 イオとミリンの間で、何やら内緒話があった。



◆5-2 追い出しパーティー

「性格はともかく強かったからなぁ」
「乱暴者だが、いなくなると寂しいな」
「何度も酷い目に遭わされたけど、いなくなってしまうのか」
「昔は酷かったよな」
「いや、今でもあまり変わらないぞ」
「村が静かになるわね」
「・・・・・・めでたいな」
「そうだ、めでたいな!」
「盛大に祝って追い出・・・・・・いや、送り出そう!」
 ネロと交流のあった近所の同年代の男女が集まる。

【イオ】「あー・・・・・・ネロ被害者の会?」
【ミリン】「あははは、そんな感じになっちゃったねー」
 イオとミリンが苦笑する。

【ネロ】「がははははっ! この田舎臭い村ともお別れとなると名残惜しいな」
【アキラ】「カビ臭いダンジョンに何年も籠もるかもしれないよ~」
【キオ】「ダンジョン面白そう!」
【ネロ】「がははは、チビにはいいかもな、隠れやすくて」
【キオ】「なんだとー!」
【ネロ】「俺様にそんな地味な戦場は似合わねぇ! 龍、悪魔、謎の巨大生物退治とか、そんな派手な戦場こそ俺様にふさわしい! ほら、ガチャはそいつに合った戦場に配属してくれるんだろ?」
【アキラ】(田舎とかカビの匂いより~、僕は、お姉さま方の匂いがいいな~。うちの村ってこんなにお姉さんが多かったんだ~)
 参加者はイオとミリンと同年代がほとんどで、女子の割合が多い。いつもより鼻呼吸多めになっていたアキラだった。
【アキラ】(でもやっぱり、ミリンさんだな~。ミリンさん、今日も見目麗しいなぁ~)
【キララ】「にぃ、鼻の下が長いです」
 キララが首をかしげて兄を見る。

【イオ】「肉大盛りだ、食え主役! 私の特製タレも食べ納めだぞ」
【ネロ】「ああ? それは困るな・・・・・・そうだ、イオ、てめぇは焼肉のタレ屋さんを作って世界中で販売しろ! 俺様がどこにいても手に入るように!」
【イオ】「何をアホなことを」
【ミリン】「イオ、それいいかも!」
【イオ】「ミリンまでアホに乗っかるなよ」
【アキラ】「あ~、このタレなら確かに売れるよ~」
【キララ】「この味を私たちだけしか知らないなんてもったいないです」
 アキラ兄妹からも絶賛。

「このタレ、イオが作ったの? マジうまいよこれ!」
「ナタネ村の特産になるかも」
「私、醤油屋を手伝ってるから話、持ちかけてみようか?」
 他の参加者も乗っかる。

【キオ】「ねーちゃんなら、五ツ星の焼肉のタレの職人になれる!」
【イオ】「ネロが変なことを言うから、話が大きくなったじゃないか。今日の主役はお前なんだからな」
【ミリン】「パーティーもたけなわ。そろそろ行ってみよう、イオ」
【イオ】「そうだね、ミリン」
【ネロ】「おっ? なんか芸でも見せてくれんのか? ぎゃははは」
【イオ】「こほん。えー女子の諸君。───この中に、ネロの子供を産んでもいいと言う者はいないかー?」
【ミリン】「いないかー!」
 イオとミリンが拳を突き上げる。
【ネロ】「ああ? てめぇら、またその話を蒸し返すのか!」
【アキラ】「あ~そう言うことか~。お姉さま方が多いな~と思っていたんだ~」

「えーネロの?」
「無理ー」
「私は相手いるから。えへへー」
「ネロの子っていい戦士になりそうよね」
「でもネロだよ? あんた行きなよ」
「私、おっぱい叩かれるからイヤ」
 例えるなら男子が女子が言ってた頃の小学生のガキ大将がそのまま大きくなってしまったのがネロ。女子にはすこぶる評判悪い。

【女子陣】「イオは? イオ、力持ちだし」
【イオ】「ないわー」
【女子陣】「ミリンは? なんだかんだで、良く一緒にいるじゃん」
【ミリン】「ないない」
【女子陣】「だよねー。だったら私らに聞かないものね」
【女子陣】「強い戦士の血統は村のため、国のために必要とは思うんだよね」
【女子陣】「ナトウさんから“俺を超える”とまで言われたそうよ」
【女子陣】「将来は有望。子供にも期待」
【女子陣】「戦士ってすごく稼ぐのよね」
【女子陣】「この前のゴブール退治の賞金すごかったよね」
【女子陣】「ネロは馬鹿だけど、頭のいい血も混ざってるはずよ。ほらネロの兄さん」
【女子陣】「ナロさんね。頭が良くて有名だったよね」
【女子陣】「公務員で出世しているらしいよ。国の仕事だって」
【女子陣】「ご両親は騎士と公務員だったはず。意外と血統はいい!」
【女子陣】「このまま行くと、小作農夫の嫁さんだよね」
【女子陣】「どうせ20歳までには誰かと結婚させられるし」
【女子陣】「売れ残りの集団お見合いはいやだよねー」
【女子陣】「たしかに村の同年代と比べれば圧倒的に有望株だわ」
【女子陣】「顔も悪くないんだけどね」
【女子陣】「言動はアホだけど」
【女子陣】「稼ぎと優秀な子種は価値がある」
【女子陣】「それはわかってるんだけどね」
【女子陣】「ネロだからねぇ」
【女子陣】「でもネロなんだよねぇ」
【女子陣】「村のために犠牲が必要ね」
【アキラ】(お姉さま方~。こわい~)
 女子たちの勘定高い思惑が赤裸々に行き交う。アキラ、ドン引き。

【女子陣】「じゃんけんで負けた人でどう?」
【女子陣】「そ、それしかないかな」
【女子陣】「1回勝負? 3回勝負?」
【ネロ】「こらぁぁぁっ! 好き勝手言いやがって! しかも、なんで罰ゲームみたいになってるんだよ! くそがぁぁぁっ! 俺様にも選ぶ権利があるだろうよ!」
【イオ】「おー、だったらネロに一人選んで貰おう」
 イオ、ぽんと手の平を打つ。
【女子陣】「そうよ、そうよ、ネロが決めないから揉めるんだわ」
【女子陣】「もしかして意外と優柔不断?」
 乗っかる女子。
【ネロ】「ああっ、なんでそうなんだよ! だったら決めてやらぁ! 文句言うんじゃねーぞ!」
 売り文句にはつい買ってしまうネロだった。
【イオ】「いや、相手にも断る権利はあるからなー」
 イオが付け足す。

【男子陣】「この中から一人を選ぶ?」
【男子陣】「ちょっと待ったぁぁ! この中から選ぶとなったら、ミリン確定じゃないか!」
【男子陣】「ミリンは渡さないぞ!」
【男子陣】「なんだ、お前らもミリンなのか!?」
【男子陣】「ちょっと待て、だったら俺がミリンに告白する!」
【男子陣】「いや、俺だ!」
【男子陣】「俺も俺も!」
 静観していた男子たちがネロとミリンの間に立ちはだかる。
【ミリン】「えっ、なんで私?」
【イオ】「ミリン、自覚なさすぎ」
 イオが苦い顔をする。

【男子陣】「ミリンは、俺にお茶を入れてくれるとき───」
【ミリン】『はい、どうぞ』
【男子陣】『あ、ありがとう』
 回想。斜め後ろからお茶置くミリンのおっぱいが、男の肩にポヨン。
【男子陣】「きっとミリンさんは俺に───」
【男子陣】「あー、それ俺もある」
【男子陣】「むしろ、いつもの事」
【男子陣】「俺なんかな、この前座っていて立ち上がった時に───」
【ミリン】『はうっ』
【男子陣】『わ、ごめん、ミリン!』
 回想。立ち上がった男の頭に重量級のおっぱいがポヨン。
【男子陣】「な、なんだと、それは羨ま・・・・・・い、いやけしからん!」
【男子陣】「俺に対して、この警戒心なさ。これはまさに・・・・・・」
【男子陣】「いや、お前、男に見られてないんじゃね?」
【男子陣】「子供扱いとかな」
【男子陣】「おまえらおっぱいばかりかよ。俺なんか、農作業中に具合が悪くで木陰で寝ていた時に───」
【ミリン】『大丈夫? 水持ってきたよ』
 回想。無防備に近くに歩み寄るミリンのパンツがチラリ。しゃがんでまたチラリ。
【男子陣】「ちょ、おま、パンツは反則だろ!」
【男子陣】「それはギルティ!(罪人)」
【男子陣】「ち、小さい時だよ! 12歳くらいか?」
【男子陣】「それはそれでギルティ!」
【男子陣】「ギルティ!」

【女子陣】「・・・・・・・・・・・・男子、さいてー」
 女子陣、ドン引き。
【ミリン】「えっ? えっ? 私ってもしかして隙だらけ!?」
【ネロ】「自覚ねぇのかよ」
【イオ】「自覚ないんだよなー」
【キオ】「そこがミリンねーちゃんのいい所だ!」
【アキラ】「キオに同意~」
【キララ】「まったく男子は、です」

【男子陣】「まったくお前らは、おっぱいパンツおっぱいパンツ・・・・・・呆れるわ。ミリンに告白できる権利があるのは、どうやら俺だけのようだな。あれはそう───」
【ミリン】『いいよいいよ。私、片付け好きだから。みんなと楽しんで来て。んふふふ~ん♪』
 回想。楽しそうに一人でパーティーの後片付けをするミリン。
【男子陣】「人の嫌がることを進んでやるミリン。そんな内面にこそ俺は惚れたんだ」
【男子陣】「で、一緒に後片付けをしたのか」
【男子陣】「くそ、そいつはポイント高いな」
【男子陣】「・・・・・・・・・・・・えっと・・・・・・楽しそうに片付ける彼女を眺めていた」
【男子陣】「おい!」
【男子陣】「手伝えよ!」
【男子陣】「お前、最低!」
【ネロ】「ああああああぁぁぁぁ! うるせぇぇぇっ! 外野は黙ってろぉぉぉ!」
 ネロ吠える。
【男子陣】「はい!」
【男子陣】「ごもっともです!」
 男子、数歩退く。
【ネロ】「そうか、ミリンを選ぶとお前ら、嫌がるのか(ニヤリ)」
【キオ】「あっ、やな笑い! ミリンねーちゃんは駄目!」
【アキラ】「ミリンさんは駄目~」
【ネロ】「うるせぇ!」
 立ちふさがるキオをアキラを軽くかき分ける。
【ネロ】「よーし、ミリン、てめぇだ! てめぇを選ぶぜ! ぎゃははははっ!」
【イオ】「まったく、人の嫌がることを進んでやるやつだな。間違った意味で」
 苦い顔のイオだった。
【ミリン】「えーっと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい」
 ミリンは少し考えた後ににっこり答えた。
【ネロ】「な、なんだと!?」
 ネロがでっかい汗マークを額に浮かべた。
【アキラ】「ミリンさんんんん~!?」
【キオ】「ミリンねーちゃん、マジ!?」
【イオ】「ちょっ! ミリン!? こんな時には、人の嫌がることを進んでやる精神は捨てるべき! 正しい意味で!」
【ミリン】「ただし、ネロがちゃんと選んだのなら。冗談やノリや勢いで選んでいいことじゃないって、わかるよね、ネロ。もう一度、ちゃんと考えようね」
 ミリン、にっこり笑顔の圧力。
【ネロ】「お、お・・・・・・ちょっと待て。しばし待て。う───ん、う──────ん。そもそも、この中から選べと言い出したのは女たちだよな! そういう条件だったら間違いねぇな。この中ならミリンだ! つーか、他はこんなだからな」
 ネロ、女性陣をチラ見。
【女性陣】「なによぉ!」
【女性陣】「まぁ、ミリンに比べられちゃ、そうなるよね」
【女性陣】「だけどネロに言われるとむかつくー」
 女性陣、苦い顔。
【ミリン】「私も考えてみた。もうすぐ18歳。18年生きてきて、誰が一番か考えてみたらネロだった。好き合った同士が理想というのはわかるんだけど、あと2年でネロ以上の人が出て来るとは思えないから」
【キオ】「ミリンねーちゃん、俺は!」
【アキラ】「僕も~」
【ミリン】「うーん、キオくんとアキラくんは可愛い弟かな」
【アキラ】「え~」
【キオ】「俺、弟でもいいぞ!」
【イオ】「はいはい、二人は邪魔をしない」
【キララ】「にぃ、静かにです」
 キオとアキラ、イオとキララに後ろに引きずられる。
【ネロ】「俺様もそんなところだ。妥協するなら、ミリン。お前にしておくぜ」
【ミリン】「妥協でも責任はちゃんと取って貰いますよ」
【ネロ】「あん? 俺様を誰だと思ってる。責任くらい超余裕だ! てめぇら聞いただろ? 俺様はミリンと結婚するぜ!」
【ミリン】「はうっ、うふふふ」
 ネロがミリンの腰に手を回し、強く引きつける。
【キララ】「わ───っ、です。おめでとうです」
 キララが拍手。みんな呆然としつつ、パチパチと釣られて拍手する。
【男性陣】「くっそぉぉ、ミリン幸せにな!」
【男性陣】「ネロ、絶対に幸せにしろよ!」
 男どもがやけくそで、割れんばかりの拍手になる。
【イオ】「まさか、こうなるとは。よーし、ネロの出陣と、二人の結婚パーティーだ! じゃんじゃん肉を食え! じゃんじゃん焼くよぉぉ!」」
【アキラ】「うわ~ん、ミリンさん~幸せに!」
【キオ】「ネロ、羨ましいぞ! ミリンねーちゃん、幸せに! おめでとう!」

「こりゃ“愛の間”を掃除しておかんとなぁ。おーい、手の開いてる者はおらんかー」
 それを見ていたナタネ旅館の女将。新婚さん用の部屋を準備する。

【イオ】「男は簡単って言うけど、女は大変なんだからね。ちゃんとしてやれよ」
【ネロ】「あー、うっるせーな」
【キオ】「何が簡単なんだ?」
【ミリン】「キオくんも大人になればわかります」
【イオ】「キオはしばらく質問禁止だ」
【アキラ】「簡単とか大変とか~。はひぃ~」
【キララ】「にぃ、涙と鼻血を拭くです!」



◆5-3 新婚初夜

 夜。

 都合により省略させていただきます。



◆5-4 ネロ大人になる

 そして朝。
 チュンチュンと鳥のさえずり。

【ミリン】「さて、村長に結婚の報告に行って、そのままお墓参りしましょう」
【ネロ】「大丈夫か? 調子悪ぃなら、おんぶすんぞ? だっこの方がいいか?」
【ミリン】「あらあら・・・・・・大丈夫です。うふふふ♪」

 村里。
【ミリン】「ただい・・・・・・」
 帰って来たネロとミリンだが、長屋の入口で立ち止まる。

【イオ】「いいか、今日、キオはネロとミリンに何かを質問をするのは禁止! どうだった? とか絶対に禁句だからな!」
【キオ】「なんで? なんで?」
【イオ】「あー、なんで?も禁止。私に質問するのも禁止!」
【キオ】「ねーちゃん顔が赤いぞ?」
【イオ】「大きくなればわかる! あー何かやらかしそうだから、挨拶だけして、他のことは話さないようにしろ。わかったら返事!」
【キオ】「はい、ねーちゃん!」

【キララ】「にぃ、どうしてです? どうしてです?」
【アキラ】「・・・・・・・・・・・・キララは、わかってるよね~?」
【キララ】「えーキララわからないです。にぃはどうして赤いのです?」
【アキラ】「キオの真似はやめ~。僕たちも質問禁止ね~」
【キララ】「えー? にぃは聞きたくないんですか? キララなら無邪気なふりをしてさりげなく聞けるです」
【アキラ】「えっ!? ど、どうしよう~。聞いてみたいような~。でも聞きたくないような~。うわぁぁぁ~」
【キララ】「冗談です。空気を読んで、そういう事は聞かないです」
【アキラ】「キ、キララ~」
 イオ・キオ姉弟とアキラ・キララ兄妹がじゃれていた。

【ネロ】「なにを騒いでやがる。帰ってきたぞ!」
【ミリン】「た、ただいま」
 ネロとミリンがようやく入口をくぐる。
【イオ】「おかえり。ミリンはネロが出発する日までは休みでいいって話付けておいたから」
【ミリン】「わー、ありがとう、イオ」
【キオ】「おはよう!」
【ネロ】「ん? よう」
【ミリン】「おはよー、キオくん」
【キオ】「おはよう。おはよう! おはよう?」
 姉の言いつけ通り挨拶だけのキオ。
【ネロ】「ああ、うっっっっっっぜぇぇぇぇ!」

【ミリン】「・・・・・・・・・・・・えへへ」
 男子陣に隠れて、イオとキララにピースサインと照れ笑いを送るミリン。
【イオ】「・・・・・・・・・・・・」
【キララ】「・・・・・・・・・・・・」
 親指を立てて微笑み返すイオとキララ。女子陣はこれで全て伝わった。

【アキラ】「・・・・・・・・・・・・!」
 ミリンと目が合ってしまったアキラ。
【アキラ】「・・・・・・・・・・・・・・・・・・~!」
 アキラ、みるみる赤くなりポフッっと鼻血を噴いて倒れる。
【ミリン】「ア、アキラくん!? えっと、鼻血の時は頭を上に!」
 ミリンはアキラの上半身を起こす。アキラの後頭部にポヨン。
【アキラ】「や、やわらかい~。ぶはっ!」
 鼻血増量。
【キララ】「ミリンねぇ、それは逆効果です!」
【キオ】「アキラが大変だ! タオル、タオル!」
【ミリン】「キオくん、それは雑巾!」

【ネロ】「まったく、何をやってるんだか。ふつーに聞きてぇことがあれば聞きゃいいんだよ」
【イオ】「えっ? じゃあ・・・・・・ど、どうだった?」
 ネロの意外な言葉に、イオが遠慮がちに聞く。
【ネロ】「教えねーよ! 答える気はねぇが、聞きたきゃ聞け。ぎゃははは!」
【イオ】「こいつは・・・・・・・・・・・・まぁ、ミリンの顔を見ればわかるよ。ご苦労さん」
【ネロ】「ったく気楽に。男は簡単とか、てきとーな事言いやがって、全然そんなことねーじゃんか」
【イオ】「・・・・・・・・・・・・なんかあったのか?」
【ネロ】「・・・・・・・・・・・・教えねーよ」
【ミリン】「うふふふ、もう♪」
 意味深に微笑むミリン。
【イオ】「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うーん」
 悶々とさせられたイオだった。



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