第4章

◆第4章 徴兵◆

◆4-1 寿命

 ガゼフ市の神罰から二週間が経過。その間にアキラは誕生日を迎え、ネロ17歳、アキラ16歳、キオ15歳と1つ違いで並ぶ。

【ネロ】「ダァァァァァァッ! くたばれナトウ!」
【ナトウ】「いいぞ、ネロ! 要は剣ってのは間合い・力・速さで行う陣取り合戦だ! 相手の攻撃を崩して陣地を奪う! こうだ!」
【ネロ】「うおっ!? くそがぁぁぁ!」
 ネロは剣を受け流され、転びそうになる。体勢を直す間もなく、首筋に剣を突きつけられた。

【ナトウ】「次、アキラ!」
【アキラ】「は~い~、とう~」
【ナトウ】「おっと、うおっ。相変わらず、トロい口調の割に手数が多くて戦いづらいヤツだ。だが、アキラは人と戦うイメージで考えすぎだ! 魔獣はもっと短絡的でタフ! 捨て身でこう突っ込んでくるぞ!」
【アキラ】「うわぁ~! ───まいった~」
 アキラは地面に転がされ喉元に剣を突きつけられる。
【ナトウ】「初手は大振りでも大胆に行ったほうがいい。相手をビビらせた方が、有利に戦いが運ぶ」
【アキラ】「は~い、わかりました。なるほど~」

【ナトウ】「次、キオ!」
【キオ】「行くぞぉぉぉ! とぉぉぉっ!」
【ナトウ】「そうそう! バネと回転をパワーに結びつけろ。だが、隙だらけになるのをなんとかしろ!」
「わぁっ!」
【ナトウ】「ほらほら、崩れてからの立ち直りが遅い!」
【キオ】「ま、参った!」
 空振りを誘われて一回転半、背中を向けてしまった所に体当たりをくらい転がされてしまう。
【ナトウ】「俺とはタイプが違うから具体的に教えられなくてスマンが、いい師匠に巡り会えれば伸びるだろう」
【キオ】「うん!」

【ナトウ】「よしっ! わははは、最後に全勝で締められた。お前らたまにマグレで勝つからな」
【ネロ】「チッ! くそがぁぁぁ! 最後は勝って締めたかったぜ」
【アキラ】「必殺技なしルールの模擬戦とは言え、さすが元五ツ星剣士だ~。大人気ないけど~」
【キオ】「師匠、引退しないで戦士を続けてれば良かったのに。必殺技が使えなくても四ツ星は確実だ!」
【ナトウ】「四ツ星は行けると思うが、星減るの悔しいじゃねぇか。だから指南役になったんだよ」
【ネロ】「そんな理由だったのかよ!」
【ナトウ】「わはははっ。最期に教え子たちの四ツ星デビューを見届けてられて良かった。よし、これにて最後の授業終了。お前ら、もっと強くなれよ! お前らなら五ツ星を取れる! そしてネロ、お前は俺と同タイプだからわかるが俺を超える! 断言してやる!」
【ネロ】「まあ俺様なら当然だな! ぎゃははははっ!」
【アキラ】「師匠、今までありがとうございました~!」
【ネロ】「世話になったな。犬の兵士になんか負けるんじゃねーぞ!」
【キオ】「師匠ありがとう! 敵を沢山倒してくれ!」

 今日は葬送の日。
 30歳の寿命年齢を超えた者が、徴兵か死を選び生涯を終える。徴兵は国のために戦争に行き死ぬまで戦うことであり、どちらも結局は死だ。どちらも悲惨な最期とは考えられず、国のため社会のため若い世代のための尊い死という考えになっている。
 いや、意図的にそういう価値観を刷り込まれている・・・・・・。



◆4-2 兵士と戦士

 『東部 オルル王国 キュオス区 ナタネ村 西2』がキオたちの長屋がある村里の正確な所在地となる。東西南北地区、国名、超人区、市町村名と続く。
 『オルル王国』は大陸中央付近に位置する、猿族の中規模国。隣接する犬族の小国『ムグ王国』とは400年に渡る戦争関係にあり、互いの拠点を奪ったり奪われたり、一進一退を繰り返している。
 ムグ王国軍守備の拠点ダックス砦。ここを奪取する事がオルル王国軍の当面の目標であるが、戦況はオルル王国軍有利に傾いていた。

 ▼

 ダックス砦近くの攻防。

「蹴散らせ!」
「くそぉ、犬どもがぁあ!」
「カタキを取ってくれ・・・・・・任せたぞ・・・・・・」
「くそぉ、魔法が使えればなぁ」
「敵も条件は一緒だ! 愚痴ってないで剣を振るえ!」

 戦争にはルールがあった。魔法や火薬を使った兵器、弓などの飛び道具の禁止。動物や乗り物の禁止など。手に持てる武器だけが許される。よって剣や槍、鎚や打武器を使った近接戦が基本となる。

 ▼

 夜・ダックス砦近くのキャンプ。

「突っ込んでから気付いたんだ、あっ魔法石がない、必殺技が使えねぇ!って。初日から死にかけたぜ!」
「ははははっ、元戦士の“あるある”だな。勝手の違いにみんな最初はとまどうらしい」
「必殺技が使えない、敵は魔獣ではなく人。聞いてはいたが慣れるまで生き残れるか心配だぜ」
「だが流石に五ツ星の戦士は違うな! 初陣で大活躍じゃないか。俺たち軍人上がりの立場がないわい、ガハハハハ」
「俺は引退していたのが幸いだったかね。足がこの通りでな、元より必殺技のダッシュ斬りが使えなくなっていてな。戦士見習いどもの指南役に転職したのだが、教え子たちが優秀でな。対人戦闘を鍛えられていたようだ」
「ナタネ村から4人まとめて飛び級四ツ星デビューだってな。あんたの弟子なら納得だ」
「そういえばシールドなかったんだよな。あるつもりで、思い切り良く攻めていたよ。気をつけねーとな」
「ガハハハ、それも元戦士“あるある”だな」
 オルル王国軍の兵士たちが、今日の快勝について盛り上がっている。その中にナトウの姿があった。

 『戦士』と『兵士』には明白な区別があり、魔獣狩りをするために戦士連合(ユニオン)の指揮下で戦う者は『戦士』。各国の軍属で国のために戦う者は『兵士』と分けられる。兵士職に就いている者と寿命により徴兵された兵士を明確にする場合、兵士職に就いている者を『軍人』と言い、戦争だけでなく国内の治安も司る。
 ほとんどの国は30歳を寿命にしており、多くの者がどうせ死ぬのならばお国のため、子供たちの未来のためにと戦場へ赴く。戦争の相手は当然ながら人間である。



◆4-3 オルル王国・軍部

 オルル王国・王都。軍部最高司令部。
 勢いよくドアが開けられ、凛とした女性が司令室に飛び込む。

「お爺様! ダックス砦攻略で意見があります!」
「これライカ少将。軍務中はスルガ大将と呼びなさい」
「お父さ・・・・・・いえ、タイガ中将、失礼しました」
 おっと、またやってしまった。とライカは内心で頭を掻く。

【スルガ大将】「ほっほっほっほっ。かまわん、かまわん。まったく家族しかいないのに、小うるさい息子だのぉ。のぉ、ライカ」
【タイガ中将】「スルガ大将、公私混同は困ります。孫だからと甘やかさないで下さい。ゆくゆくは女なのにという批判を受けながらも大将を務めることになる難しい立場です」

 スルガ・ライトアームズ大将(67歳)、タイガ・ライトアームズ中将(42歳)、ライカ・ライトアームズ少将(18歳)。ライカから見てスルガは祖父、タイガは父である。
 王家や為政に関わる要職は、秘密保持のために世襲制が取られ30歳の寿命も免除されている。また、名字を持つのも特徴である。
 30歳で死ぬのが尊いと考える風潮、配偶者に関しては免除は適用されない厳しい規律により、これに対して「ずるい」と声を上げる者は少数。むしろお偉い方々は大変だねぇと思われていた。

【スルガ大将】「ライカよ・・・・・・おっと、ライカ少将、意見を申してみよ」
【ライカ】「はっ! ハブンズ中将のダックス砦攻略ですが多くの無駄があると思います。こちらの作戦立案書を見て下さい。犠牲を3割、上手く行けば半分に抑えられると思います」
【タイガ中将】(あの作戦か・・・・・・ハブンズは残念ながら世襲制の悪い面が出てしまった将官。無能とまでは言わないが、まだ新米軍師の方がマシな作戦を立てるだろう)
【スルガ大将】「なるほど・・・・・・ナーナ軍師の戦術論だな。さすがは我が孫娘。良く勉強しておるのぉ。完璧と思える戦術だ。さすがは我が孫娘」
【タイガ中将】(父よ、二回褒めています。二回褒めています)
【ライカ】「はい、ありがとうございます!」
【スルガ大将】「だが、完璧なのがいかんのぉ」
【ライカ】「えっ! と言いますと?」
【スルガ大将】「読みやすいのだよ。もしこちらの内情を知っており、こちらの立場で考えれば作戦が予想できてしまう。ナーナ軍師の戦術論も、今は大陸中で流行だしのおぉ」
【ライカ】「こちらの内情・・・・・・スパイがいると言うことですか?」
【スルガ大将】「いるかも知れん。いないかも知れん。しかし、もしもの事は考えないといかんのぉ。ハブンズ中将の作戦には確かに無駄が多い。だからこそ敵には読まれにくい」
【ライカ】「・・・・・・なるほど、そういう狙いなのですか! 確かに、ハブンズ中将のこの作戦を読める敵はいないと思います!」
【タイガ中将】(納得してしまうか、素直な娘よ。それはただの愚劣な作戦だよ)
【スルガ大将】「無駄に見えるところも戦況の変化に対応するための余裕と考えることができる。今回は実際の戦況を見て勉強しなさい」
【タイガ中将】「私も同意です、ライカ少将」
 父、久しぶりに声を出す。
【ライカ】「はい! わかりました、スルガ大将! タイガ中将! 出過ぎた真似をして申し訳ありませんでした!」
【スルガ大将】「良い良い。意見をぶつけ合うのが私らの仕事だ。いつでも気軽に来るがいい。お爺ちゃんはいつでも待ってるよぉ」
【タイガ中将】(父よ、私情が漏れています)
【ライカ】「はい! それでは庶務に戻ります。失礼しました」
 キリッと敬礼を決め、ライカは司令室を出ていった。閉められたドアに向かい、祖父スルガ大将、父タイガ中将はため息をこぼす。

【スルガ大将】「うむ・・・・・・素直すぎるのが心配だのぉ」
【タイガ中将】「まっすぐに育て過ぎましたでしょうか。戦争が仕組まれている事を知った時の反応が心配です」

 人口の調整のためにただ寿命を設けるだけでなく、アリエルを効率良く得るため、生を渇望する状況を作る目的で戦争を行っている。これも神罰を減らすため。
 戦争の成果、戦死者数は裏取引され、国民感情のコントロール等にも利用されている。全てはシナリオ通り。この事は為政に携わる者等、ほんの一握りの者しか知らない極秘事項だった。

【スルガ大将】「しかし、つい使いたくなってしまう作戦だのぅ。この作戦ならば、ムグの大将もびっくりの圧勝だろう。もったいないのぅ」
【タイガ中将】「ええ。戦士連合(ユニオン)の軍師であれば、かのナーナ嬢にも負けない名声を得た事だろうに」
【スルガ大将】「さすがは我が孫娘。素晴らしい才能。ほほほほっ」
【タイガ中将】「まったくもって我が娘ながら実に優秀。ふふふふっ」
 孫ばかに親ばか。似たもの親子だった。



◆4-4 ダックス砦攻略

 ダックス砦。
 オルル王国軍は砦の門を突破することに成功する。

「攻め込めぇぇぇ!」
「皆殺しだ!」
「わはははっ、ナトウ、あんたホント強ぇわ」
「最後の難関がこんなに簡単に突破できるとはな!」
「油断すんなよ。敵に一人とんでもねぇ強いやつがいるぞ! はっ! うらぁ! いたッ! あいつだ!」
「ぐははははっ、お前だな! 猿どものすげぇ強いってやつは! わかるぜ、こいつ兵士のお上品な剣じゃねぇ! 魔獣相手に修羅場をくぐってきた戦士の匂いだ!」
 ムグ王国軍の兵士にひときわ巨大な男がいた。ブルドッグの面影を残した強面の40歳ほどの男だった。
「これは随分と老けた兵士だな」
 ナトウの頬を冷たい汗が流れる。寿命年齢で兵士送りになったからと言って、30歳のうち死ぬわけではない。戸籍上死亡扱いになり普通の生活には戻れず戦地を転々とする事になるが、勝ち残れば当然生きている。つまり老けた兵士はそれだけ生き抜いた事を意味する。何よりも歴戦の戦士の勘が、目の前の敵のヤバさを感じ取っていた。
「ワシはムグ王国軍ダックス砦防衛隊隊長ファーケン! 戦士の頃の名は『荒ぶる発情期の猛犬・ファーケン』! 五ツ星剣士だ! ぐわっはっはぁぁ!」
「俺はオルル王国軍───肩書きって何かあったっか? 平の兵士よ。戦士の頃の名は『荒ぶる豪剣・ナトウ』! 同じく五ツ星の剣士よ!」
「ぐははははっ、奇しくも似たような二つ名じゃねーか! 行くぜぇぇ!」
「いや、一緒にすんなよ。なんだよ発情期って。来いよ、おらぁぁぁっ!」
 ガキィィンと剣がぶつかり合い、互いの剣が弾かれる。が、体勢を崩したのはナトウだけだった。
「ぐわはははっ! なかなか、しびれたぞ、その豪剣! できればその足がちゃんと生えているうちに手合わせしたかったぜ。死ねぇぇぇ!」
「勝利宣言か? 発情期でも冷静さを失っちゃいけねぇな!」
 弾かれた反動を回転に活かす。二打目で先手を取ったのはナトウだった。
「なにっ!? くうっ!」
 ファーケンは受けで手一杯になる。
「キオの真似からの~。シュッ! シュッ! シュッ! シュッ!」
 防具の隙間を狙う高速の突きの連打。アキラの攻撃。
「いてっ! いてっ! くそぉ!」
 ファーケンは横に飛び退き、体勢を整える。
「豪剣だけじゃなくて、技が多彩と来たか! やりおる!」
「ふぅ! 色々と身についてるもんだな。この足でもやり合えるじゃねーか」
「これは手強い! がははははっ!」
「その割にうれしそうじゃねぇか! おらぁぁぁ!」
「ふんぬぁぁ!」
 ガキィィィンと剣が正面からぶつかり合う。
「おおっ! くそう、止まっての打ち込みじゃ分が悪りぃ!」
 剣を受け流しファーケンの体勢を崩す。バックステップで助走をつけられる分の間合いを作る。
「がははははっ! その距離は絶好の間合いよ! 喰らえ! いや喰らわれるがいい! 獰猛なる牙よ、敵の喉元に喰らいつけ!」
 ファーケンは両手で巨剣を構える。
「何っ!? 必殺技だと!?」
 ナトウは身を低くして警戒する。
「必殺っっっっ! 闘犬の牙ァァァァッ!!」
 ファーケンの大上段に勢い良く剣を振り上げ、その巨大な剣が振り下ろされた。ブオッ、ズサァァァと轟音が二回空を裂く。
「!」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
 しかし、何も起こらなかった。
「またやっちまったぁぁぁ! 兵士8年目なのにまたやっちまったぁぁぁ!」
「あああああん? 出ねぇのか!? やっぱり出ねぇのか! 騙されたぁぁぁぁぁ!」
 元戦士あるある、ここで炸裂。ついでにファーケンは38歳らしい。
「むむむむむむっ!」
「ちぃぃ!」
 剣を構えて相手の出方を探るが、互いに攻撃に出ない。
(ぬぐぐぐ、恥ずかしい!)
(ああもう! 緊張感が抜けちまったじゃねぇか!)
 変な空気になってしまっていた。
「ファーケン隊長! 撤退命令です! ビーグル町まで戦線を下げます!」
「むっ、そうか! 豪剣の、戦いは預けるぞ!」
「ああ、そうしておこう」
 正直ホッとするナトウ。この微妙な空気の中で決着を付けるのは惜しい強敵だった。
「おっとそうだ、ここから西に奴隷にされたお前らの仲間が集められている洋館があるから覗いてみろ。置き去りにされているかも知れん。また戦場で相まみえようぞ! おい、野郎ども、撤退だ! ぐははははっ!」
「・・・・・・・・・・・・なんだ、いいやつか?」

 ダックス砦陥落。そしてファーケンの言う通り奴隷が放置されていた。戦果と奴隷にされた同胞奪還のニュースは神罰で暗くなっていたオルル王国を活気付かせることになる。



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