第2章

◆第2章 ナーナ姫◆

◆2-1 しっぽ

 戦勝式。
「ナーナ姫!」
「ナーナ姫だ!」
「姫っ!」
「姫ぇぇぇ!」
「今日もかわいいよ、ナーナ姫!」
「俺はミミルちゃん派だ! ミミルちゃんもかわいいぞ!」
「ミミルちゃーん!」
 式のメインイベント、功労者の表彰式に今回の作戦の総指揮官ナーナ中将が壇上に登る。後ろにはミミルの姿もあった。急におっさん達の桃色の声援が飛び、アイドルのコンサート会場さながらになる。

『東部中将・大局を操る者ナーナ』五ツ星軍師。
 スペック14歳女、猫族。この時代を代表する天才軍師。

『准将・山に愛されし軍師ミミル』五ツ星軍師。
 スペック12歳女、猫族。ナーナの一番弟子で親友。

【ネロ】「チッ、俺様たちをからかってやがったな! 中将様がやってくれるじゃねーか!」
【アキラ】「僕はそうじゃないかな~と思っていた~。でもまさかと思うよね~」
【ネロ】「最年少がなんとかってのは昔の話で、今はもう大人とばかり思っていたぜ」
【ナーナ】「ええい、姫はやめんか!」
 ナーナは普通の庶民の出で、姫は単なるあだ名。本人は却下している。
【ナーナ】「一番首を獲ったナタネ村のキオよ、来ておるか? 壇上に来るのじゃ!」
【キオ】「はいっ!!」
 魔法のスピーカー装置に負けない声で、キオが返事をする。

「おおっ元気だ」
「昨日の声の坊主だな」
「へー、声のまんま子供じゃないか」
「本当にキオにーちゃんが倒したんだ!」
「すごーい!」
 キオの元気な声に、観衆から笑みが溢れる。

【ナーナ】「くくくくっ、ここの中将と同じ名とは言ったが、本人ではないとは言ってない! 驚いたか? 驚いたじゃろ?」
【キオ】「びっくり! 昨日、ちゅーじょー?さんと同じ名前の娘と友達になったんだ! その娘と顔もそっくりなんだもん! びっくりだ!」
【ナーナ】「だから、それは儂じゃ! まだ気付いておらんのかーい!」
【ミミル】「ネタ殺しなのです!」
【キオ】「あっ、ミミルだ。おっす! ミミルもちゅーじょーのナーナさんと友達なんだ」
 会場の観衆たちが、何かあったのか?とざわめき始めた。
【ナーナ】「ミミル、ちょっとキオに説明を頼むのじゃ」
【ミミル】「はいなのです。キオ、ちょっとなのです」
【ナーナ】「なんでもない。気にしないのじゃ。式を続けるぞ。ナタネ村のネロ、アキラ、キララ、壇上まで参れ」
【ネロ】「おうっ!」
【アキラ】「は~い」
【キララ】「私もですか・・・・・・巻き込まれたです」
【アキラ】「いつもすまないね~、キララ~」
 目立つことを好まないキララは、渋い顔でアキラの背中に隠れつつ壇上に登った。

【ナーナ】「このパーティーはまだ見習いでありながら、一番首と多くの敵を倒す大活躍をした。偉い! よって牛一頭、豚五頭、金100万ゴールド、魔法石50個を与える」
【キオ】「うわぁ、そんなに食べられない!」
【ネロ】「ぎゃははははっ! 俺様なら一人でも楽勝だぜ!」
【アキラ】「無理だよ~。ご近所さんを集めて、ナタネ旅館でバーベキューパーティーだね~」
【キオ】「ナーナとミミルも来なよ! 温泉もあるよ!」
【ナーナ】「むぅ、温泉に肉か。それはいいのぉ・・・・・・・・・・・・っと、それは後ほど。他にも四人には特別に何か褒美をやろう。なんでも申してみい。とは言っても予算内じゃが」
【キオ】「えーっと・・・・・・どうしようかな」
 と言いつつキオの頭は左右にふらふらと揺れていた。
【ナーナ】「ん?」
 ナーナがキオの視線を辿る。視線はナーナのしっぽをロックオンしていた。
【ナーナ】「ほれほれ」
 ナーナがしっぽをふりふり。
【キオ】「おっ、おっ、おっ」
 キオがしっぽの動きのままに揺れる。
【ミミル】「・・・・・・ミミルのしっぽもしなやかなのです」
 ミミルがなんとなく対抗。
【キオ】「おっ、おっ、おっ、おっ」
 キオが揺れる。
【ナーナ】「ほれほれ」
【ミミル】「くすくすなのです」
【キオ】「おっおっおっおっ」
 キオがナーナとミミルに翻弄される。
【キオ】「おー、そうだ! 褒美! しっぽに触らせて!」
【ナーナ】「なぬ?」
【ミミル】「なのです?」
【キオ】「駄目?」
【ナーナ】「いや別に駄目と言うことはないのじゃが」
【ミミル】「なのです」
 ナーナとミミルが目を合わせる。
【ナーナ】「うむ。さあ、触るがいい」
【ミミル】「はい、なのです」
 二人はくるりとお尻を向ける。
【キオ】「うん! うわぁ、ナーナのしっぽはふさふさでふわふわ! ミミルのは本当だ、しなやかですべすべだ! うわぁふわふわ~すべすべ~」
 キオ、ヘヴン状態。よだれを垂れ流しそうなほどに楽しそうに表情を緩ませた。
【ナーナ】「ふふふ、ほれほれ」
【ミミル】「ぺしぺしなのです」
 ナーナとミミルも楽しくなり、しっぽでキオのほっぺを叩く。
【キオ】「これは至福だ~。うはぁぁぁぁ~」
 これはアキラのセリフじゃなくキオのセリフ。
【アキラ】「う、うわぁ~、いいなぁ~」
 こっちがアキラのセリフ。
【ナーナ】「堪能したか?」
【キオ】「はぁ~~~。うん! これはいいしっぽだった!」
【ミミル】「くすくすなのです」

「おお・・・・・・ナーナ姫のしっぽは、ふさふさのふわふわらしいぞ」
「いいなー」
「ミミルちゃんはしなやかですべすべだってよ」
「羨ましいぞ坊主!」
「至福だってよ。見たか、あの幸福そうな坊主の顔を」
「いいしっぽだって・・・・・・ごくり」
「次は俺が一番首を取って、ナーナ姫のしっぽに触らせて貰うぞ!」
「なんだと!? ナーナ姫のしっぽは渡さん!」
「俺こそが頬ずりさせて貰う!」
「俺はミミルちゃんにパシパシして貰うぜ!」
 観客の戦士たちが闘志に湧き上がった。

【ナーナ】「なぬっ!? こらっ、お主たちは駄目じゃ!」
【ミミル】「しっぽにじゃれていいのは子供だけなのです」

「なんだってー!?」
「そんなー! ひどいよナーナ姫」

【ナーナ】「姫はやめろ! いい歳して、何を言っておるか。式を続行するぞ! さあ残りの三人も希望を言ってみろ」
【アキラ】「ぼ、僕も~しっぽがいいなぁ~」
 アキラははぁはぁしながら手をワキワキさせていた。
【ナーナ】「お主もいい歳をして何を言っておるのじゃ!」
【アキラ】「え~キオと僕は同い年だよ~。15歳だよ~」
【ナーナ】「な、なぬ!?」
【ミミル】「えっ、キオ、年上だったのですか!」
 ちなみにナーナは14歳、ミミルは12歳。キオのことは年下、10~12歳程度に思っていた。
【キオ】「うん! 今はいっしょ! アキラはもうすぐ16だけど」
 年度の区切りではアキラは一つ上だが、今は短期間の同じ年齢の時期だった。
【ナーナ】「・・・・・・・・・・・・まぁ、キオなら構わんか」
【ミミル】「・・・・・・・・・・・・なのです」
 無邪気にニコニコしているキオを見てそう判決。
【ナーナ】「だがアキラ、お主は駄目じゃ。目がいやらしい」
【ミミル】「なのです」
【アキラ】「え~、酷いな~」
【ナーナ】「すぐに正規戦士じゃ。褒美は剣と防具にしておけ」
【ミミル】「大きな町には沢山の武器屋があるのです。ネロもそれがいいのです」
【ネロ】「チッ・・・・・・俺様は別にしっぽなんてどうでもいいんだからな。勘違いすんなよ!」
 ネロはツンデレと化した。
【ミミル】「キララも町で装備を整えるといいのです。おしゃれなのに防御力の高い魔法使い服が沢山あるのです」
【キララ】「そうするです」
【ミミル】「なのです」
【キララ】「です」
【ミミル】「なのです(ニコ)」
【キララ】「です(ニコ)」
 一瞬で通じ合ったミミルとキララだった。



◆2-2 肉

 この世界の人の生活圏。
 特色的なことをまずは三つ。老人は滅多に見かけない。結婚年齢が決まっている。高い建築物はない。

 神により人口が制限されているため、人類自ら寿命に30歳の制限を設ける。(ただし伝承者───伝承すべき何かを持っていると認められた者は特例して除く)。10歳になる頃には親を失うために家族よりも集団生活が重要で、世襲が起こらずに自然と個人の実力が重視される社会となっていた。
 また同じく人口管理の一環で18~20歳の間に結婚しなければいけない。相手がいない者は集団お見合い、最終的にはあみだくじなどで強制に結婚させられ、夫婦で2人の子供を作る事が義務付けられている。子供の人数は基本的な数で、調整が入ることもあり。(ただし、こちらにも除外条件があり、戦士は居場所を転々とするため自主性に任される)
 建築物は都市部でもそうであるが、一階建てが基本である。高さ7メートル程度を超えると天使に破壊されてしまう。人がかつての文明を取り戻さないように課せられた制限の一つである。しかし抜け道はあり、風車などは小山に偽装、物見やぐらは巨木の上に作ればいい。また地下は監視されていなかった。
 と、世界のいたるところで神の支配の痕跡が伺える。

 ▼

 ナタネ村。
 平均的な農村地帯で、小集団ごとに丸太作りの長屋に住んでいる。里には20人程度が住まう長屋が10軒程度。同様の里が12カ所。計2400人程度の村である。

 ナタネ旅館。
 温泉が評判で、この近辺では唯一の宿。村の集会や催事場を兼ねる。報酬の肉が届けられ、その夕方にはパーティー開催。洒落た料理を出すわけではなく、肉・切る・焼く。この近辺ではパーティーと言えばバーベキューが定番。食べ物と酒やジュースを持ち寄り、あっという間にパーティーが始まる。

【イオ】「キオ、よくやった! まさかお前が一番首を取るなんて! さすが我が弟! さあどんどん食え! 食って、少しは大きくなれ!」
 キオの姉イオ。スペック17歳・農民。弟に似ず村の女性では一番の大柄。弟の養分を吸っていると噂される。
【キオ】「えっへん! すごいだろーねーちゃん! ミリンねーちゃんも褒めて褒めてー!」
【ミリン】「はいはい。キオくん、よく頑張りました。えらいえらい」
 近所のおねーさん、ミリンがキオの頭を撫でる。スペック17歳・農民。この近辺の男に絶大的な人気の、おっとりオーラの巨乳美人。一挙動ごとに乳がたふたふと揺れる。
【イオ】「わーい!」
【アキラ】「ミリンさん~、僕も頑張ったよ~」
【ミリン】「アキラくんも、えらいえらい」
【アキラ】「わ~い」
【キララ】「にぃ、顔がだらしないです」
【ミリン】「キララちゃんも、えらいえらい。ぎゅーっ」
 キララにはなでなでの後に抱擁のサービス。おっぱいにキララの顔が挟まる。
【キララ】「お、おふっ・・・・・・このおっぱいです! このおっぱいがにぃを惑わせるのです! ふわふわぁぁ~」
 キララのレアなヘヴン顔。同性も虜にする魔の乳だった。
【アキラ】(わ~いいな~)
 と、おっぱいに溺れる妹をチラ見しているアキラだった。
【ミリン】「ネロも、えらいえらい」
 ミリンは背伸びをしてネロの頭に手を伸ばす。
【ネロ】「するんじゃねぇ!」
【ミリン】「はぅっ!」
 バチン!と、ネロはミリンの乳を横からビンタした。巨乳に屈しない男ネロ。ミリンに限らず、近所の巨乳は皆、ネロに叩かれた経験を持つ。
【イオ】「こーらーぁ! 女の子のおっぱいを叩くなぁぁぁ、って何度言えばわかんだぁぁぁぁ!」
【ネロ】「いてっ! こ、この馬鹿力デカ女! コメカミをグリグリするんじゃねぇ! くそがぁぁぁ!」
 ネロは身長180cmほど。イオはそれよりは小さいのだが175cmほど。男顔負けの力持ちで、なぜ戦士や軍人にならなかったのかと度々言われる。なぜかは、それ以上に『肉を焼く』という才能に恵まれていたからである。
【イオ】「ほほお、剣を抜く気? 剣を向ける気? 最強と常々吠えているネロ様が、まさか素手の女に相手に? あらやだ、まあやだ」
【ネロ】「ぬぐぐぐっ! く、くそがあ!」
 ネロ、握った剣を離す。ネロが苦手とする数少ない相手の一人がキオの姉イオだった。ネロ、イオ、ミリンは17歳で同級生である。
【イオ】「まったく、こんなにありがたいおっぱいを。なでなで」
【キララ】「なでなでです。痛いの痛いの飛んでけーです」
【ミリン】「ありがとう、イオ、キララちゃん」
【イオ】「おっ・・・・・・また育ったんじゃない、ミリン?」
【キララ】「まったく、けしからんおっぱいです」
【ミリン】「はわわわっ、二人とも揉まないで~。やぁ~ん」
【アキラ】(いいな~、いいな~)
 女子のキャッキャウフフを鼻の下の伸ばして見つめるアキラだった。
【ネロ】「チッ! ただの贅肉じゃねぇか! 俺様の胸を見ろ! この鍛え抜かれた強靭な胸筋を! ぎゃははははっ」
 ネロ上半身をはだける。巨乳に対し間違った対抗意識を抱いていた。
【イオ】「はぁ~~~。おっぱいの素晴らしさもわからないお子様は無視して、あっちでおねーさんに話を聞かせてくれ、キオ」
【キオ】「おう!」
【ネロ】「俺様を無視すんな! くそがぁぁぁっ!」
【ミリン】「ネロの話も聞きたいな」
【ネロ】「ミリン、てめぇ! 変な気を遣ってるんじゃねー! 乳叩くぞ!」
【ミリン】「きゃぁ~、もう。本当に聞きたいんだから」

 ▼

【キオ】「で、俺の必殺技が命中! 女王ゴブールを倒した! 大勝利!」
【ネロ】「俺様の必殺技でピヨっていたおかげじゃねーか! じゃなかったら、どうせ空振りだ。あの技、滅多に決まらねぇだろうが。俺様が倒したも同然なのによぉ!」
【アキラ】「キオがトドメを刺したのは確かだけど~、やっぱり指揮のおかげだよ~。さすが最年少中将だ~」
【ネロ】「チッ、俺様にトドメを任せねぇとは目がねぇ」
【イオ】「噂の猫族の中将様だね。近くで見てみたいけど挨拶の人だかりがすごいや」
 イオが背伸びをして人垣の向こうを覗く。猫耳の少女ふたりが近隣の村長やら町長から大手武器商、魔法具商などなど、取り入ろうとする者やただのファンやらに囲まれていた。
【キオ】「えっ、ナーナたちもう来ているの?」
 キオがぴょんぴょん跳ねる。
【キオ】「おーい、ナーナ、ミミル! 肉焼けてるぞ!」
【イオ】「ちょっ、キオ! あんたなにを気安く!?」
【キオ】「大丈夫だよ、もう友達だもん!」
【アキラ】「って、友達なのかな~?」
【イオ】「あんたは友達のハードルが低すぎなんだよ!」

【ナーナ】「おっと、今日の主役に呼ばれているようじゃ。話は後日に」
【ミミル】「それではなのです」
 いい口実とばかりに、ナーナとミミルは人だかりの中から脱出した。
【ミミル】「ふー、助かったのです」
【ナーナ】「肉~肉なのじゃ~。やっと肉が食えるのじゃ~」
【キオ】「ナーナとミミルだよ! こっちは俺のねーちゃんとミリンねーちゃん!」
【イオ】「こらーキオ、口のきき方! 姉のイオです。うちの弟がすみません、ナーナ中将」
【ナーナ】「敬語など不要、呼び捨てで構わん。無駄な文字数が作戦指示をわずかに遅らせる。そのわずかが命取りになるかも知れんのじゃ」
【アキラ】「なるほど~、論理的だ~」
【キオ】「あーそれでみんな"姫"って呼んでるのか! その方が短いから!」
【ナーナ】「姫はやめんか!」
【アキラ】「と思ったけど結構いいかげんだ~」
【イオ】「それでは遠慮なく。ナーナ、ミミル、肉焼けたよ。じゃんじゃん、おあがり!」
【ナーナ】「やっと肉じゃ。おおっ!? これは美味い!」
【ミミル】「タレなのです。タレがいいのです。甘さの中に絶妙な酸味なのです!」
【ナーナ】「こっちの塩ダレもいい!」
【ミミル】「もう一つはピリ辛なのです!」
【キオ】「ねーちゃん特製、三種のタレだ!」
【アキラ】「料理人に星が付くなら間違いない五ツ星だよね~」
【キララ】「大きな街のレストランでも、絶対に通用するです」
【イオ】「いや、でも私、肉専門だし」
【ネロ】「こいつデカくてガサツなくせに、焼肉の時だけ細けぇのな。ぎゃははは」
【ナーナ】「おかわりなのじゃ」
【ミミル】「私もなのです」
 ナーナとミミルの耳としっぱが機嫌良く動く。
【ミリン】「猫耳・・・・・・しっぽ・・・・・・かわいい」
 ミリンの目にハートマークが浮かぶ。
【ナーナ】「お主は牛族と見間違えるばかりの立派な胸じゃの」
【ミミル】「なのです」
【ミリン】「さ、触りっこしようか? おねーちゃんと触りっこしようか? むふふ♪ むふふふふふふふっ♪」
【ナーナ】「な、なぬ?」
【ミミル】「なのです!?」
【キララ】「ミリンねぇは普段は人一倍常識人なのですが、愛でる対象を見つけた時には見境ないです」
 度々その対象にされてきたキララだった。
【イオ】「こらぁぁ、ミリン! 戻ってこーい。とうっ!」
 イオ、ミリンに斜め45度チョップ。
【ミリン】「はうっ!? はわわわ、もしかして、またやってしまいました!? この辺りだと猫族は珍しくて、つい! すみません!」

【ナトウ】「こいつらはギルドの狐族か、行商の狸族くらいしか見たことがないからな。王都へ行けば、色んな種族が見られるぞ」
 と話に割って入ったのはキオたちの剣の指南役ナトウ。ほろ酔い状態。
【ナーナ】「お主は・・・・・・荒ぶる豪剣・ナトウ。五ツ星の剣士じゃな」
【ナトウ】「おお、姫に憶えられているとは光栄です」
【ナーナ】「姫はやめんか! さすがに五ツ星の戦士は全員憶えておるのじゃ」
【ナトウ】「昔の話ですよ」
 ナトウは義足をひょいっと持ち上げる。
【ナトウ】「戦士は廃業して、こいつらに教えてます。最期に教え子たちに星が付いたのを見てから逝けそうです」
【ナーナ】「お主、葬儀が近いのじゃな」
【ナトウ】「ええ、今日のパーティーは葬送を兼ねさせて貰ってます。最期に肉で盛大に祝ってもらえるたぁ、こいつら本当によくやってくれました! わははははっ!」
【ネロ】「チッ! 抱きつくな酔っぱらい! ぎゃぁ! チューするんじゃねぇ!」
【アキラ】「くるしいよ~、師匠~」
【キオ】「師匠、酒くさっ! あはははは!」
【ミミル】「最期は兵士なのですか?」
【ナトウ】「ええ、兵役に」
【キオ】「がんばれ、師匠! 犬たちをやっつけろ!」
【ナトウ】「こんな足ですが、まだまだ並の兵士には負けませんよ。華々しく散って来ますわ」
【ナーナ】「オルル王国が今攻め込んでいるのはダックス砦だったかの。国境の要所じゃな」
【ミミル】「同盟国として応援しているのです」
【ネロ】「ギャハハハハッ、盛大に祝って追い出してやる! 寿命を迎えるナトウに乾杯!」
【みんな】「「「「かんぱーい!」」」」
 ナトウは30歳。人の寿命として制限されている年齢である。戦地で戦い死ぬか、安楽死を望むかを選択し、生きているうちに葬式をあげるのが習わしである。献杯ではなく乾杯。しめやかなムードはなく、栄転祝いのごとく賑やかな式で送り出される。

 キオたちの国・オルル王国は猿族と少数の猿獣族の中規模国。ムグ王国は犬族と犬獣族の小国で、オルル王国とは戦争状態。
 ナーナたちは猫族と猫獣族の小国・ウル王国。オルル王国とウル王国は同盟関係。ムグ王国とは中立。国は主に種族ごとに分かれ、それぞれ友好関係や戦争関係にある。

 おさらいで◯族は獣成分がないか尻尾と耳程度の種族。猿族はいわゆる『人』である。◯獣族は獣成分が多めの種族。

 ▼

【ナット】「とーちゃん、あっちの豚の角煮がちょーうまかったぞ」
【リット】「あそこのトンカツが評判いいよー」」
 ナトウの息子ナット6歳、娘リット8歳。小走りにパーティー会場を走り回る。
【ナトウ】「こら、我が子達! よそ見してると危ないぞー!」
【ナット】「はーい、んぐっ」
【ミリン】「はうっ?」
 ナットがミリンにぶつかる。だが、ミリンの胸がポヨーンとクッションになり共に大事なし。
【ミリン】「大丈夫? 気をつけないと駄目だぞ」
 おでこをツン。
【ナット】「・・・・・・・・・・・・は、はい!」
 少年の目はキラキラ輝いていたという。こうして、新たなおっぱい好きが一人誕生した。───という、どうでもいいエピソード。



◆2-3 露天風呂

【キオ】「食べ過ぎで動けない!」
【アキラ】「泊まっていこ~。久しぶりに温泉も入りたいし~」
【ネロ】「そういえば賞金も出てたな。足りっか?」
【イオ】「余裕だよ! 100万ゴールドの価値を知らないとは!」
【ミリン】「村の中じゃ物か食べ物で交換だもんね」
【キララ】「にぃ、私も泊まりたいです」
【イオ】「明日、また後片付けに来るのもだるいね。女子で一部屋借りようか?」
【ミリン】「わー賛成」
【旅館の女将】「戦士連合(ユニオン)の方から沢山貰ってるから無料でええよ。ゆっくりして行きなされ」
【キオ】「わーい、女将さんふとっぱら!」
【旅館の女将】「上客を連れてきてくれたからこっちも大助かりだよ」
【アキラ】「お世話になります~」
【ミリン】「私たちもいいのかしら?」
【イオ】「ここはちゃっかり流れに乗っておこう。お世話になります!」

 こうして温泉宿に一泊決定。
 ───そして起こる、定番イベント。

 ▼

 夜。
 ナタネ旅館、露天風呂・女湯付近。

【ネロ】「チビ、てめぇはでかい声を出すんじゃねーぞ(ヒソヒソ)」
【キオ】「うん! んぐっ」
【ネロ】「だから、でけぇ声出すな(ヒソヒソ)」
【アキラ】「ね~やめようよ~(ヒソヒソ)」
【ネロ】「気にならねぇのか? 猫族のしっぽの毛がどこまで生えているのか?」
 そういうことで、露天風呂を覗きに行くイベントが発生していた。

【アキラ】「バレたら下手すると国際問題だよ~」
【ネロ】「だったら、てめーはついてくんな」
【アキラ】「えっと・・・・・・ほら、僕って二人の見張りみたいなポジションだから~。仕方ないな~」
 ネロは純粋な興味、キオはノリと付き合いで。スケベなのはアキラだけ。
【ネロ】「見つかった時は仲間を売んなよ。言い訳は犬の匂いがしたから警戒をしていた。これでバッチリだぜ」
【キオ】「おー」
【アキラ】「いやぁ、仕方ないな~」
 石垣を登り、露天風を見下ろす絶好なポジションに到着する。

【キララ】「ふぅ・・・・・・いい湯です」
【イオ】「いい湯だね~。ごくらくごくらく」
【ミリン】「くすくす、イオったらおじさんみたい」
 露天風呂にはキララ、イオ、ミリンがいた。

【キオ】「あっ、ねーちゃんだ」
 キオ平常心。
【ネロ】「チッ、猫耳2人はいねぇ。ハズレだ」
 ネロ女体に興味なし。
【アキラ】「ミ、ミリンさんだ~」
 アキラ、たら~っと鼻血。

【キララ】「噂には聞いていたのですが、おっぱいって本当に浮かぶのです。うらやましいです」
【ミリン】「正直、邪魔だよー。でも自慢できるところもないので自慢しておきます。えっへん」
【イオ】「ミリンはもっと気遣いできるところとか自慢していいと思うぞ」
【キララ】「イオねぇは程良いサイズでお椀型。うらやましいです」
【イオ】「キララはこれからだな。私くらいにはすぐに育つだろ」
 定番のおっぱいトーク。

【アキラ】「お、おっぱいが~浮くなんて~。も、もうだめだ~」
 アキラ限界。ぱふっと音を立てて鼻血を噴出し、石垣から落ちそうになる。
【ネロ】「バカがッ!」
【キオ】「あぶない!」
 キオがアキラの手を引っ張り、アキラは転落を回避。
【キオ】「わっ! とおっ」
 しかし、キオがバランスを崩す。ごろごろ、ぼっちゃんと風呂に転がり落ちた。

【ミリン】「はうっ?」
【キララ】「誰です? 野生の猿?」
【イオ】「まさか、覗きかぁ? このイオさんを覗こうとはいい度胸・・・・・・ってキオ?」
【キオ】「大丈夫! 怪我はない!」
【イオ】「そっちの心配はしてなーい! こらっ、キオ! 覗きは犯罪なんだからね!」
【キオ】「えーっと、犬の匂いがしたから警戒でバッチリでごめんなさい!」
 などとキオは意味不明な供述を。
【イオ】「ほほう、主犯はネロだね」
【ネロ】「おい、デカ女! なんでその流れで俺様が主犯に───って、しまった!」
【イオ】「そこかっ!」
 イオがたらいを投げる。
【ネロ】「ぎゃっ! うわぁぁぁ!」
 ネロの頭にヒット。温泉とは逆方向に転がり落ちる。
【アキラ】「・・・・・・・・・・・・おっぱい・・・・・・おっぱい・・・・・・えへへへ~」
 アキラは不気味につぶやきながら、静かにその場を立ち去った。
【イオ】「さて、どうする、こいつ? 風呂で服を着ているなんておかしいよな、我が弟よ。うひひひ、裸にひんむいてどう成長したか、おねーさんが見てやろうか?」
【キオ】「おー、風呂だもんな。それじゃ脱ぐ!」
 イオの脅しはまるでキオには通じてなかった。
【イオ】「自ら脱ぐのかよ! ・・・・・・・・・・・・成長してないなぁ。おねーさんガックリだ。さぁ、どうしよう?」
【ミリン】「まあキオくんなら」
【キララ】「うーん、キオならいいですかね・・・・・・」
 主に下半身に視線が集まって判決・無罪。
【ナーナ】「なんじゃ、何かあったのか?」
【ミミル】「なのです」

 ▼

【キオ】「毛はしっぽだけだったぞ! お尻はつるつるだった!」
【アキラ】「キオだけずるい~! ひいきだ、ひいき~」
【ネロ】「くそがぁぁぁ!」
【ナトウ】「まったく、お前らは最後まで世話を焼かせる」
 正座をさせられているキオ、アキラ、ネロ。竹刀を持ったナトウ。修学旅行にありがちな一コマ。

 回想。
【ネロ】「ああっ? 裸くらいで大袈裟なんだよ! だったら俺様も脱いでやる! どうよ! このムキムキの胸筋に引き締まった尻!」
【女性陣】「きゃぁああああああああああああああ!」
 回想終わり。ネロが全裸で暴れたことにより、大人の介入となった。

【ネロ】「くそがぁ、キオが良くてなんで俺様が駄目なんだよ! どこが違うってんだよ!」
【イオ】「どこがって、そりゃ、毛ぇ生えてるし・・・・・・」
 イオが呆れ顔で後頭をボリボリと掻く。
【ミリン】「大きさとか・・・・・・形とか・・・・・・ポッ・・・・・・はうっ、思い出させないでぇぇ!」
 思わずミリン、ネロにバシッと平手を決める。
【ネロ】「いてえ! てめぇ、ミリン!」
【ミリン】「きゃぁぁぁ、ごめん、つい!」
【ナトウ】「お前ら、正規の戦士になったら遠くからもお呼びがかかるんだからな。村の外で覗きなんかしたら犯罪だぞ」
【ミリン】「ナトウさん、村でも犯罪ですから!」
 ミリン思わず突っ込む。漫画やアニメでは気軽に発生する覗きイベントですが、リアルでは人生が詰むレベルの犯罪です。絶対に真似しない様に。
【ナトウ】「良し、尻に一発ずつで説教終了!」
 バシバシバシっと遠慮のない竹刀の一発を決められ、覗き犯三人は開放された。

 ▼

【ナーナ】「明日には戦士カードができているじゃろ。星はいくつ付いているかのう」
【ミミル】「いよいよ正規戦士なのです」
【ネロ】「ぎゃはははっ、五ツ星に決まってんだろ?」
【キオ】「俺も五ツ星がいい!」
【アキラ】「うーん、難易度の低い作戦だから~、五ツ星は付かないと思うよ~」
【キオ】「二つ名が付くんだよね! 師匠の『荒ぶる豪剣・ナトウ』みたいな」
【アキラ】「かっこいいのが付くといいね~」
【ネロ】「カードってどこで貰えるんだ? 戦士ギルドか?」
【アキラ】「そうだよ~。一番近い戦士ギルドは、デール町だね~」
【ネロ】「めんどくせぇが行ってくるか」
【キオ】「行きたい、行きたい!」
【ナーナ】「デール町ならば明日、儂らも寄る予定じゃ。馬車には余裕がある。片道で良ければ、同乗すればよかろう」
【キオ】「わーい、よろしくナーナ、ミミル!」
【アキラ】「お世話になります~」
【ミミル】「女子の皆さんは買物に行きませんか? なのです」
【キララ】「行くです!」
【イオ】「行く!」
【ミリン】「わぁ、よろしくお願いします」
 キオ、アキラ、ネロ、キララ、イオ、ミリン、同行決定。



報告する

0


≪ 第1章 作品一覧 第3章 ≫
Twitterでシェア!



"大塔ひろ" is creating "小説(一般向け)"
ファンタジー小説をUPしてます。
大塔ひろ is creating 小説(一般向け)

ファンタジー小説をUPしてます。
お支払い方法
 クレジットカード
 銀行振込
 楽天Edy決済
 デビット&プリペイドカード(Vプリカ等)
  支援はいつ開始してもOK!
  Entyで支援すると約1.5倍以上オトク!
詳細