第1章

始まりの星の物語

◆序章◆

 これは今から百数十億年前
 この宇宙に初めて生命が誕生した惑星の物語。
 そして人が神の支配と戦う物語。



◆第1章 魔獣狩り◆

◆1-1 アリエル

『アリエル』
 存在する意思であり存在するためのエネルギー。

 アリエルが宇宙を作ったのか、宇宙の誕生と共にアリエルが生まれのかは定かではないが、宇宙が始まった瞬間にはアリエルと、その力の行使者である『神』が存在していた。
 神は気付く。宇宙を永続させるにはアリエルが不足している。膨張している宇宙はやがて縮小に転じ、最期には存在を終える。アリエルを増やさなくてはならない。
 アリエルを生み出せる者───存在する意思を生み出す存在『生物』を作り出すための神の試行が始まる。そして存在を理解・思考し、強くアリエルを生み出すことができる生物『人』が誕生した。



◆1-2 赤い光の柱

 人里から少し離れた山に赤い光の柱が立つ。目の良い者ならば、その光を発しているのは上空に浮遊している天使であることが見えるだろう。この光の柱は、滅ぼすべき生物がいる目印。その生物を絶滅しろと言う、神から人への命令だった。

 山の北西側・麓。

「敵はゴブール、推定800匹のコロニー。難易度は三ツ星だが油断はするな。各隊、配置に! 銅鑼の合図をもってゴブールコロニー討伐戦を開始する!」
 指揮をするは、猫のような耳としっぽの女。

「今度こそ一番首を取るぞ! 尻尾なしに負けるな!」
「有名なパーティーがいくらかいるな。こりゃ、一番首は諦めて魔法石目当てで行くか」
「安全第一で行くウサ。無理しないで弱い敵をみんなで倒していくウサ」
「くくくく、わかってねーな。この規模の作戦だと、ボスの登場は2日目か3日目だ。今日は酒でも飲みながらさぼってようぜ」

 戦士たちも人だけでなく、猫耳、狐耳、兎耳、尾を持つ者もいれば、完全に獣の顔、毛深い体など獣の要素を持つ種族が入り乱れている。
 これは神が、既にいた様々な生物から『天使に似せた生物を作る』という手順で『人』が誕生したためである。

 獣耳と尻尾以外の獣成分が少ない種を◯族(例:猿族、猫族、犬族)と呼び、獣そのものの顔をしているなど獣成分の多い種族を◯獣族(例:猿獣族、猫獣族、犬獣族)と呼んでいる。
 人口の大多数を占めるのは猿族。獣耳と尻尾のない、いわゆる『人』である。

 招集された戦士は敵の推定数の5倍の約4000人。神の命を果たすため、国や種族を超えて組織された戦士連合(ユニオン)である。作戦の開始を告げる銅鑼の音がドォォンと山中に鳴り響き、戦士たちは我先に山へ押し入った。
「見つけた! 一匹も逃がすな! 回り込め!」
「一直線に集めて! 魔法で一掃する!」
 人の戦力は金属の剣や槍や槌、火薬や毒など薬の類、金属や動物の皮で作られた防具などの物理的なもの。それと、『魔法石』による防御、必殺技、魔法である。
 魔法石は木炭や薪や油と並ぶ日常的なエネルギーである。天然ガスは一部で使われる。電気は研究レベルで実験されている程度で一般的ではない。

「ギャッ! ギャギャッ!」
 一方、ゴブール。見た目はファンタジー定番の邪妖精であるゴブリンを想像すればいいが、出自はまるで違う。こちらも神により爬虫類の一種から人に向けて進化を操作された生物。だが人には届かなかった生物である。
「ギャギャギャッ! ギャギャッ!」
「ギャッ!」
 鳴き声でコミュニケーションを取る。子供ゴブールを奥へ逃し、木の棒を手にした大人ゴブールが人の戦士の前に立ち塞ぐ。知恵があり二足歩行をし両手で道具を使う。人に向かって進化した痕跡が伺える。しかし、一つ人にはない特徴が───
「グルルルルルル・・・・・・グガッ!!」
 一匹のゴブールの鼻先に火の玉が現れ、それを射出する。戦士の一人が直撃受け吹き飛ばされた。

「魔法を使うやつが出てきたぞ! 火だ! 火の魔法だ!」
「いててて、シールドを半分削られたか? 回復を頼む!」
 戦士は予め魔法によるシールドを纏っている。それがなければ大怪我をしていた所だろう。
「任せて。大地の力と魂の呼応を───」
 ピキッっと魔法石が砕ける音がして、術者の体がぼんやりとした光に包まれる。魔法が発動する兆候である。
「───シールド回復!」
「対・火魔法だったら任せろ! 水と風と熱・・・・・・形を変え守りの盾に───アイスシールド!」
 ピキッっと魔法石が砕ける音と魔法発動の兆候の光。魔法使いが魔法のバリアーを張った。

「ギャッ!! ───ギャッ!?」
 必殺の火の玉の魔法───が標的に届かずに霧散する。ゴブールは驚きを露わに唸り声をあげる。

 さて、おわかりいただけただろうか?(なぜか怪奇番組風)
 人の魔法は魔法石を消費し詠唱を必要とするが、ゴブールの魔法にはそれがない。その辺の説明は後ほどに。

「魔法を封じてしまえば雑魚だ!」
「たたみかけろ!」
「ギャッ!」
「ギャギャッ!」
「ギャァァァッ!」
 慈悲のない一方的な惨殺が始まる。元より、一匹たりとも逃す気はない殲滅作戦である。



◆1-3 ネロとアキラとキオ

 山の東側・麓。

【キオ】「暇だ! 暇だぞ!」
【アキラ】「あ~暇だね~」
【ネロ】「紛れ込んじまうか? ギャハハハハッ!」
 眼前の赤い光の柱が立つ山を見上げる少年たち。小さくて元気な少年がキオ。糸目でのんびりした痩身の少年がアキラ。引き締まった筋肉の大柄な少年がネロ。順に15歳、15歳、17歳。戦士は通常は18歳がデビューの年齢であるため、全員、見習いである。
 なお、セリフの応酬の時に読みづらいので、所々、シナリオ風の表記に頼っていくことにする。

【ナトウ】「お前ら見習い共の役目は、敗走する敵がいたら一匹残らずにシラミ潰しにする事だ。アホなことをして俺に迷惑をかけんなよ」
 左足の膝下を義足にしている中年男、ナトウ。かつては最高ランクとされる五ツ星の戦士だったが怪我により退役し、ここ故郷のナタネ村で戦士見習いの指南役をする。
【ナトウ】「この作戦を総指揮する軍師は、なんとナーナ中将だ」
 ナトウが何かを含んだニヤリ笑いで、見習いの三人に話しかける。
【ネロ】「ちっ、しらねーよ軍師なんて」
【キオ】「ちゅーぢょー? チャーシューなら知ってる! 美味い!」
【ナトウ】「マジか!? お前ら!」
 ナトウがずっこける。
【ナトウ】「アキラ、お前は知っているよな? アホ二人に教えてやれ」

『東部中将・大局を操る者・ナーナ』五ツ星軍師。
 戦士連合(ユニオン)東部中将。戦士連合は大陸の東西南北の4地域に分けられて統括され、各部ごとにトップが大将、次が中将の三人でナーナはその一人。
 過去最年少10歳で軍師デビュー、しかもいきなり五ツ星軍師。中将に抜擢されたのも最年少で13歳の時という天才軍師だ。

【アキラ】「有名な軍師だよ~。なんで知らないのさ~」
【キオ】「へー! すごいね!」
【ネロ】「俺様は強ぇ剣士にしか興味ねぇ!」
 賢いのんびりさんがアキラ、元気なアホがキオ、ガラの悪いアホがネロ。
【ナトウ】「さて、俺はあっちの方を見回りしてくるが、お前ら、アホなことをして俺に迷惑をかけんなよ。
 もしも中将に認められたら、年齢なんか関係なしに正規戦士としてデビューできるかも知れんな・・・・・・おっと、今のは独り言だ。アホなことは考えるなよ。くれぐれも考えるなよ」
 指南役ナトウは面白いことが大好きなタイプだった。
【ネロ】「ちっ・・・・・・わかったぜナトウ(ニヤリ)」
【キオ】「はーい、師匠、わかった!(ニヤリ)」
【アキラ】「は~い・・・・・・あ~二人がアホなことをしそうな顔をしている~」
 アキラだけが苦い顔をしていた。

 ─間─

【ネロ】「・・・・・・・・・・・・ぎゃはははっ、ナトウは見えなくなったぜ。良し、行くぜ!」
【キオ】「おーっ! 目指すは一番首! ゴブールの女王だ!」
【アキラ】「あ~やっぱり~。駄目だよ~、ちゃんとパーティーを組まないと。ヒーラーと遠距離担当と軍師、サポーターも付けないと」
【ネロ】「軍師なんていらねぇ。俺様が指揮を執る! 遠距離は石でもぶつけりゃいい! サポーターは荷物は少ねぇし気絶なんかしねぇよ。細けぇんだよ、アキラは」
【アキラ】「細かくないよぉ~。ネロは大雑把すぎ~」
【ネロ】「ヒーラーはいねぇと困るな。おーい、アキラ妹! 近くにいねぇか!? アキラ妹ぉぉぉぉぉぉ!!」

 ─間─

【キララ】「・・・・・・・・・・・・はぁ・・・・・・大声で人を呼ばないで下さいです。なんです? また面倒な予感です」
 しばらくしてアキラの妹のキララ(12歳)が現れる。魔法使いの見習いで、回復と攻撃魔法をこなす。
【キオ】「キララ、おっす! 相変わらずちっこいな!」
【キララ】「私は年齢相当です! キオには言われたくないです!」
【ネロ】「よう、アキラ妹。シールドを頼むぜ」
【キララ】「・・・・・・・・・・・・シールドだけです。一緒には行きませんです」
 それだけで、三人が何をするのか理解する。キララは杖の柄で地面に魔法陣を描き始めた。
【アキラ】「いつも苦労をかけるねぇ~」
 アキラはキララに魔法石を1つ渡す。
【キララ】「にぃは断りたい時はちゃんと断らないとです」
【アキラ】「いやあ~、ネロにも困ったものだよね~」
【キララ】(・・・・・・・・・・・・これは行きたい、行っちゃ駄目だが半々くらい、ネロのせいにして行こう。という顔です。まったく、アホたちに感化されているです)
 と、キララは兄の心中を事細かに察する。

【キララ】「ふぅ・・・・・・魔法陣の中に入って下さいです。大地の力と魂の呼応を・・・・・・力を鎧に───シールド」
 ピキッと魔法石が割れる音と共にキララの体が光る。続いて、ネロ、アキラ、キオの体も光に包まれ、三人が腰に付けている魔法具がキィィィンとかすかな回転音を発した。カプセル状の物の中に入っている駒が回転し、回転速度がシールドの残量を示す。早い話残りHP(ヒットポイント)であり、この魔法具はHP計やシールド計と呼ばれる。
 シールド残量が残っているうちは、よほどの事がなければ大怪我を負うことはない。その代りに魂に直結するこの魔法は、正しい手順で解除しない限り、シールド残量がなくなった時に魂に衝撃を受け気絶を伴う。そのため戦闘パーティーを組む際には、荷物持ち兼、気絶した場合に連れ帰るサポーター役を付けるのが基本だった。

【ネロ】「ぎゃははは、戦闘準備完了だ! 行くぜ、野郎ども! 一番首は俺様が貰った!」
【キオ】「あ、ずるいぞ、ネロ! 負けないぞ!」
【アキラ】「待ってよ二人とも~。まったく仕方ないな~」
 ネロが先陣を切り、三人共とも戦場の山の中へ走っていく。

【ナトウ】「ああ、俺が見回りをしている間に。止めておいたのに、まったく困った奴らだなぁ、まったくもう」
 芝居掛かったセリフと共に、指南役ナトウが帰ってくる。
【キララ】「にぃを危ないことに巻き込まないで下さい」
【ナトウ】「なに、大した敵じゃない。あいつらの実力なら大丈夫だ」

 なお、ネロ、アキラ、キオ、ナトウ、キララは各猿族、いわゆる「人」である。猿族が大多数のため、猿族の場合は説明を省いていく事にする。

 ▼

 山中。

【ネロ】「オラオラオラッ! 雑魚が邪魔するんじゃねぇ!」
【ゴブール】「ギャッ!」
【ゴブール】「グギャァッ!」
 ネロはわかりやすくパワータイプ。大剣の一閃にゴブールが二匹まとめて砕けるように斬られる。性格の割には意外と優等生の剣捌きで無駄がない。
【ゴブール】「ギャギャッ!」
【ゴブール】「ギャッ!」
【ゴブール】「ギャッ!」
 ゴブールは逃走を選択。強そうなネロを避け、アキラの方へ進路を変える。
【アキラ】「うわぁ~、僕には三匹来たよ~。えっと、こっち行って、こうして・・・・・・とう・・・・・・えいっ!」
 アキラは速さと正確さと体捌きが信条。三匹に同時に攻撃されないようにフェイントを交えて優位な位置に誘導。細身の剣が何本にも見える。顔と喋りがとろい事が、手の速さを余計に際立たせる。
【ゴブール】「ウギャッ!」
【ゴブール】「グギャッ!」
【アキラ】「キオ~一匹そっちに行ったよ~」
【キオ】「まかせろ! うりゃぁぁぁぁぁっ! とぉぉぉ! どっこい! とりゃぁぁぁぁぁああっ!」
 キオはネロと同じ大剣の使い手・・・・・・だが体の小ささに不相応の剣に振り回される。あっちへよたよた、こっちへふらふら。
【ネロ】「チッ! いちいち、うるせえぞ、チビ!」
【キオ】「そんなこと言ったって! うおお!? おっとっと!」
 とうとう空振りの勢いで転んでしまう。
【ゴブール】「ギャッ? ギャッッッッ!」
 こいつは弱いぞチャンスと言いたげな笑みを浮かべて、手にしている太い棒でキオに殴り掛かる。
【キオ】「おっとっと! とうっ! てぇぇぇいっ!」
【ゴブール】「!? ギャッ!」
 転がり距離を取る。その勢いで木を蹴ってジャンプ、更に遠心力を利用しての一撃がゴブールを袈裟懸けに切り裂く。
【キオ】「おぶっ!? ──────ずわわわわわわわわわっ! どっこいしょ! 手応えはあったぞ! どうだ!」
 バランスを崩したキオは地面をゴロゴロと転がり立ち上がる。剣撃は背骨を絶ちゴブールは絶命していた。
【アキラ】「ふぅ~、キオは危なっかしいなぁ~」
【ネロ】「チッ、てめぇにその剣はでかすぎだって言ってるだろうが! 真似すんじゃねぇ、チビが!」
【キオ】「でも、倒したもんねー! 負けないぞ!」
【アキラ】「どうする~? 魔法石を探す~?」
【ネロ】「ギャハハハッ、雑魚の魔法石なんて誰かにくれてやれ! 狙いは───」
【キオ】「一番首の女王ゴブールだ! おっ先ぃ───!」
【ネロ】「あっ! キオてめぇ!」
【アキラ】「あっ、待ってよ~。くっついて戦った方が~」

 ▼

 山の東側・麓。
 指南役ナトウとアキラの妹キララは、山を見上げながら茶とオヤツで一服していた。

【ナトウ】「今日の作戦の難易度は三ツ星。ネロとお前の兄ちゃんは余裕だろう。二人は俺の見立てでは四ツ星デビューは行けると踏んでいる。二人ともゆくゆくは五ツ星に育つ逸材だ」
 この世界は星による評価が一般的である。星が多いほど良く、通常五ツ星が最高評価である。
【キララ】「・・・・・・・・・・・・キオはどうです?」
【ナトウ】「キオか・・・・・・あいつは、ムラがあるんだよな。ムラがあってたまに強いと言うか、むしろ普段が大した事はないと言うか。だが三ツ星は確実・・・・・・だと思うが、うーん」
【キララ】「微妙なんですね」
【ナトウ】「とにかくムラの幅が広いんだ、あいつは」
【キララ】「・・・・・・あっ、今、キオの声が聞こえたような」
【ナトウ】「まさかここまで・・・・・・いや、キオなら届くかも知れんな。体は小さいが、声はでかいからな、やたら」

 ▼

 山中。

【ネロ】「おらおらおら、雑魚は───吹っ飛べ! ドーン!」
 ネロの一撃に敵の体が上下に分かれて飛んでいく。
【キオ】「エイッ! おおおおっ・・・・・・とりゃぁっ! あぶなかったけど、また倒したぞぉぉ!」
 小さな体を大きく使い、派手というよりは無駄と危なっかさを伴いながらキオも善戦していた。
【アキラ】「え~い、とう! 魔法は使わせないぞ~。そこだぁ~っ!」
 好き勝手に戦う二人をアキラがフォローする。
【ネロ】「俺様はこいつで8匹だ! アキラ、てめぇはどうよ?」
【アキラ】「僕は4? 5? 数えてないや~」
【キオ】「俺はまだ2匹だ。くそー」
【ネロ】「ケッ、てめぇには聞いてねぇよ、チビ!」
 ネロ、アキラ、キオは最前線に到達する。

【付近の戦士】「8匹ってマジかよ。800匹のゴブルに、4000人だっけか? 1パーティー1、2匹程度のノルマだぞ」
【付近の戦士】「元気な若いパーティーがいるな」
【付近の戦士】「がははは、若い奴らに負けられんな! 俺たちもガンガン行くぜ!」
【付近の戦士】「おーい坊主ども、無理はするな! そろそろ中ボス級が出てくるぞ!」
 他のパーティーも三人に乗せられて調子を上げていく。

【キオ】「おーっ! なんか俺たち、目立ってるぞ!」
【ネロ】「ギャハハハッ! 俺様が超強えぇからだな!」
【アキラ】「二人は派手だからね~」

 ▼

 高い木の上。
 二人の猫耳少女が、指で作った輪っかを覗く。魔法による遠望で前線を観察していた。

【猫耳少女A】「あの三人、とうとう最前戦に到着じゃ」
【猫耳少女B】「まさかの快進撃なのです」
【猫耳少女A】「たった三人のパーティーで全員が剣士とは、どこの素人パーティーじゃと思ったが、知らん顔じゃな。まんま素人か」
【猫耳少女B】「麓の村の見習いでしょうか」
【猫耳少女A】「ファイタータイプ、技能派、小さいのは変則型とでも言うべきか。あれだけ活躍すれば、星が付いて正規戦士デビューじゃろう。どう思う?」
【猫耳少女B】「大きいのとひょろいのは、なかなかなのです。四ツ星です。小さいのは・・・・・・あっ、また転んだ。危なっかしいのです。小さいのは・・・・・・三ツ星なのです」
【猫耳少女A】「ならば、儂は全員、四ツ星じゃ」
 キオが三ツ星か四ツ星かで意見が分かれる。と言うよりは、あえて意見を分けた。
【猫耳少女B】「甘味処ツルヤの特製あんみつがいいのです」
【猫耳少女A】「受けて立とう!」
 ──と、賭けのネタにするためである。
【猫耳少女B】「くすくす。また、ご馳走様なのです」
【猫耳少女A】「最近は負け続きじゃったな。今日は勝たせてもらうぞ。ならば、前線に移動じゃ」
【猫耳少女B】「はいなのです」
 猫耳少女たち機敏な身のこなしで木を降り、疾風のごとく速さで山を駆け上って行った。

 ▼

 最前線。

【キオ】「てぇぇぇぇぇいっ!」
【ゴブール】「ギャッ!」
【キオ】「うわっ! わわわわわわわっ!」
 キオ、中ボス級の大型ゴブールに深い一撃。しかしバランスを崩し急な傾斜を転がり落ちてしまう。
【ネロ】「ギャハハハッ! いただき、これで12匹目だ! サンキュー、キオ」
 ネロが嬉々としてトドメを刺す。

【キオ】「いててっ、ずりー・・・・・・!?」
【ゴブール】「グルルッ!」
【ゴブール】「グルルルルッ!」
 キオの眼の前に大型ゴブールが二匹。・・・・・・いや、片方はさらに頭三つほど大きい巨大ゴブールだ。
【大型ゴブール】「ガァァァァ!」
【巨大ゴブール】「グルァァァァァァ!」
 二発の魔法弾が連続で発射される。
【キオ】「やばい! わぁぁぁぁぁっ!!」
 大型ゴブールの魔法弾を避けた所に、巨大ゴブールの魔法弾。キオに直撃。ドォォォォンと破裂音を轟かせてキオが転がる。転がったついでに回転を利用して距離を取る。いいのか悪いのか、転がることには慣れているキオだった。
【キオ】「いててて。あぶねー、シールドギリギリ残った! 追ってこない? ・・・・・・・・・・・・あっ、もしかして!」
 巨大な方は一歩も動かない。大型の方も僅かな距離で追跡を諦め、離れた距離から威嚇している。“場所”を守っている。キオは横走りしながら、ゴブール達の背後を確認する。洞窟があり、中にはゴブールの卵が大量に並んでいた。ゴブールの孵化場だった。
【キオ】「やっぱり! 女王ゴブールだ! 巣(ハイブ)を発見したぞぉぉぉぉぉぉぉ! ハイブは、ここだぞ───!」
 キオのバカでかい声が山中に響き渡る。巨大ゴーブルは女王ゴブール。ここが最終決戦の場所だ。

【アキラ】「キオの声だ~。女王発見だって~」
【ネロ】「手ぇ出すんじゃねえぞ、キオ! 俺様の獲物だ! 邪魔だ雑魚が!」
【アキラ】「すみません~、トドメお願いします~」
 ネロとアキラは目の前の敵を雑に薙ぎ払って、キオの声の方向へ向かう。
【付近の戦士】「おう、ここは任せろ! 早く、あのちっこいヤツの所に行ってやれ!」
【付近の戦士】「なんだ、すげぇ声だな? 魔法か?」
【付近の戦士】「やけに響く声だったな」

 ▼

 山の東側・麓。

【キララ】「キオの声ですね」
【ナトウ】「本当に届きやがった! 相変わらず、アホみたいな声だな」
 山頂付近から麓のナトウとキララにまで。例えではなく、本当に山中にキオの声が届いていた。

 木の上。猫耳少女二人。

【猫耳少女A】「よく響く声じゃな」
【猫耳少女B】「女王確認・・・・・・大きいです!」
【猫耳少女A】「ほう、これはでっかい」
【猫耳少女B】「あっ、あの三人が挑もうとしてるです! バラバラに攻撃しては無理なのです!」
【猫耳少女A】「移動する!」
【猫耳少女B】「はいです!」

 ▼

 巣(ハイブ)前。
 キオの元にネロとアキラが駆けつける。

【キオ】「やばかった!」
【アキラ】「シールド、残りギリギリだ~」
【ネロ】「運だけはいいチビだな。ってぇことは敵の魔法は一発なら耐えられる。だったら簡単じゃねーか! 一発受けてその隙に一撃で倒す! アキラは側近の中ボスな。俺様は一番首、女王をいただくぜ!」
【アキラ】「無理だよ~。必殺技でトドメをさせなかった場合のことも考えないと~」
【ネロ】「なんだと!? 指揮官の作戦には従え!」
【キオ】「ネロが指揮官に反対の人! はーい!」
【アキラ】「は~い。多数決で却下だ~」
【キオ】「つーか、最初から認めてないぞ!」
【ネロ】「ぐぬぬぬ! チッ、だったらアキラ、なんか考えやがれ!」
【アキラ】「女王ゴブールも側近も、ハイブを守るためにあの場所から動けないんだもの~。他のパーティーが到着するのを待って、みんなでやっつければいいんだよ~」
【ネロ】「アホか! それじゃ、手柄を持っていかれるだろ! だったら俺様一人で倒してやる! うおおおおおおっ!」
 ネロは女王ゴブールに向かい、ジグザグに走りながら距離を詰めていく。
【アキラ】「あ~ネロは~。キオはみんなが来るまで、待ってて~!」
 アキラも女王ゴブールに向かう。
【キオ】「うん! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんちゃって。うしししし」
 おとなしく待っているキオではなかった。何か考えがあるらしく、こっそりと移動を開始する。

【側近ゴブール】「グッ?」
【女王ゴブール】「グルル! グガァァァァァァァァ!」
 二匹のゴブールは、共に魔法弾の照準をネロへと向ける。
【ネロ】「うおおおおおおお! って、おい! 二匹ともこっちか! 片方はアキラを狙いやがれ!」
【アキラ】「そりゃ、ネロのほうが目立っているもの~。殺気丸出しだし~」
【ネロ】「アキラ、てめぇ! 俺様をオトリにしやがったな!」
【アキラ】「してないよ~。って、そんなことを言ってる場合じゃ~」
【側近ゴブール】「グギャャャッ!」
 ボンッ! 一発目の魔法弾がネロに向かい発射される。
【ネロ】「チッ!」
 横っ飛びに回避。
【女王ゴブール】「グガァァアアアッ!」
 ボンッ! 避けた先を狙って二発目。キオがやられた時と同じパターンだ。 
【ネロ】「チッ! 避けれねぇぇぇ! ───だったら!」
 ピキッっとネロの腰袋から魔法石の割れる音。ネロがぼやっとした光に包まれる。魔法と同様に必殺技が発動する兆候だ。
【ネロ】「くたばれ、くそがぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 ドッゴォォォォォォォン!!
 ネロの必殺技『爆砕の一撃』。それを魔法弾に叩きつける。魔法弾を弾き飛ばした。
【アキラ】「うわぁ~!」
 魔法弾はコースを逸れ、アキラの足元に着弾する。驚いたアキラが後ろに飛び退いた。
【ネロ】「くそが、大外れだ!」
【アキラ】「あ、危ないなぁ~。また魔法来るよ~! 体勢を整えないと~!」
 魔法の避けたアキラも勢いを削がれてしまう。間合いを探る所からのやり直しとなる。その後、距離を詰めるのに手こずるネロとアキラ。
【ネロ】「チッ! 近寄れねぇ! よしアキラ、てめぇ盾になれ! 骨は拾ってやる!」
【アキラ】「やだよ~」
【ネロ】「だったら、キオだ。チビだから盾には小さいが・・・・・・って、あいつどこに行きやがった!」

【猫耳少女A】「ええい、バラバラに動くな! 女王の射線上に敵のもう一体が来るように動くのじゃ! そうすれば、女王の魔法を塞げる! 交互に左右に揺さぶって、どちらを狙うか迷わせろ!」
【ネロ】「そりゃいいな───って誰だ? 猫耳!?」
【アキラ】「軍師だね、きっと~」
【猫耳少女A】「この戦場、儂が支配する! 猛れ、戦士たちよ! ブーストアップじゃ!」
 ピキッと魔法石が割れる音と共に、軍師の猫耳少女が輝く。同時にネロとアキラも光に包まれる。
【ネロ】「おおっ! なんだ、力がみなぎる!」
【アキラ】「能力アップの魔法だ~。“バフ”とか言われてるヤツだね~」
【猫耳少女A】「ミミル、シールド強化じゃ!」
【猫耳少女B=ミミル】「はいです! 大地の力と魂の呼応を───シールド強化! なのです!」
【ネロ】「うおっ! HP計の音がやべぇ! 100%以上の速さで回ってんぞ!」
【アキラ】「シールドの過剰回復ってやつだね~」
【猫耳少女A】「今ならば、敵の魔法を二発は耐えられるはずじゃ! 遠慮なく飛び込んで、必殺技を叩き付けるのじゃ! まずは、側近の方! 二人で一匹を狙えっ!」
【アキラ】「わかった~。行くぞ~! 走れっ、烈風の如く~! とぉぉぉぉっ!」
 ピキッと魔法石が割れ、アキラの必殺技『神速の十六連撃』が側近ゴブールを襲う。
【側近ゴブール】「ギャッ!」
 細身の剣なのでダメージは少ない。だが、両目を奪う。
【猫耳少女A】「ひょろい方、緩い顔をして意外とえげつないのぉ。なるほど、威力が弱いが、敵の能力を下げる効果がある必殺技じゃな」
【ミミル】「大きい方はさっき見たのです。あの威力なら───」

【ネロ】「行くぜぇぇぇぇ! くたばれ、くそがぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 ドッゴォォォォォォォン!!
【側近ゴブール】「ギャッ!」
 ネロの必殺技『爆砕の一撃』に側近ゴブールが短い断末魔の声をあげる。頭が潰れると同時に吹っ飛んだ。
【猫耳少女A】「残るは女王ゴブール! 再度、ひょろいの、大きいのの順に必殺技を叩きつけるのじゃ!」
【アキラ】「うん。行くぞ~。走れっ、烈風の如く~! とぉぉぉっ!」
【女王ゴブール】「ギャァァッ!」
【ネロ】「行くぜぇぇぇぇ! くたばれ、くそがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
【女王ゴブール】「グギャッ!! グゥゥゥ!」
【アキラ】「攻め切れなかった~!」
【ネロ】「くそ、必殺技連発で威力が落ちたか? でけぇだけあって、タフじゃねぇか! 石切れだ!」
【アキラ】「僕も魔法石終了~。体勢を整えよう~」
 持っていた魔法石は各人3つずつ。アキラはキララにシールドを掛けてもらう時に1つ使っていた。

【女王ゴブール】「ググググ・・・・・・グガ・・・・・・」
【ネロ】「おっ? ギャハハハハッ!! 脳震盪を起こしているぜ! 俺様の必殺技を食らって無事で済むわけがねぇ! 必殺技なんていらねぇ! 攻め切るのみだ! うらぁぁぁぁぁっ!」
【猫耳少女A】「くくくくっ、必殺技で締めくくるのが軍師の美学じゃ。ぬかりはない! さあ小さいの! 次はお前の必殺技を見せてみるのじゃ! 行けぇぇぇぇっ!」
【キオ】「おーっ! 行っくぞー!」
【ネロ】「あっ! あのチビいつの間に!」
 キオはこっそりと女王ゴブールの背後の岩場に移動していた。大ジャンプで頭上から女王ゴブールを強襲する。ピキッ、ピキッ、ピキッと魔法石が三つ砕ける音がした。
【キオ】「美味しいところ・・・・・・いただきぃぃぃぃ!!」
 防御を顧みず、ジャンプ・回転・重力を総動員し攻撃力に全振り。自らもダメージを受ける玉砕覚悟の必殺技が女王ゴブールに襲いかかる。その名も『キオ・ミサイル』。
【女王ゴブール】「ギャッ!?」
 女王ゴブールが頭上のキオに気付いた時には、すでに回避不可能な状況だった。一撃は女王の頭を縦に割った。
【女王ゴブール】「ンガッ!」
 女王ゴブールは短い断末魔を上げて、仰向けに倒れた。
【キオ】「やった~!」
【ネロ】「ぎゃあああっ!? チビ、てめぇ! 俺様の獲物を! なんて事をしやがる!」

【猫耳少女A】「パワー系の必殺技とは思っていたのじゃが、随分と危なっかしい技じゃな。あれは決められなかったら隙だらけになるぞ」
【ミミル】「でも、威力はすごいです。五ツ星クラスなのです」
【猫耳少女A】「当たればじゃな・・・・・・目立つし簡単に避けられてしまいそうじゃ。そして、魔法石を三つ消費、燃費が悪い。むぅ・・・・・・四ツ星には足りないかのぅ」
【ミミル】「くすくすなのです。あんみつ楽しみなのです」
 猫耳少女二人の賭けは、正規戦士に採用される時にキオに与えられるランク付けが三ツ星か四ツ星か。二人は判定者がいる空を見上げた。
【猫耳少女A】「おっと、それは後回しじゃ。おーい、小さいの!」
【キオ】「小さいの言うなー! あまり変わらないぞ」
【ミミル】「猫族は猿族にくらべて小さいのです」
【キオ】「えっ? わっ、猫耳だ! ところで誰?」
【猫耳少女A】「そんなのあとあと。まずは勝鬨じゃ! 勝鬨をあげよ!」
【ミミル】「女王ゴブールを倒したこととパーティー名、自分の名を皆に示すのです」
【キオ】「パーティー名? ないぞ!」
【猫耳少女A】「だったらお主の村の名前でも入れておくといい」
【キオ】「おー、わかった! すぅぅぅ・・・・・・・・・・・・勝ったぞ! 女王ゴブールを倒したぞ! ナタネ村のキオが女王ゴブールを倒したぞ───!!」
 再びキオの声が山中に響き渡る。

 ▼

 山の東側・麓。
 ナトウとキララ。
【キララ】「まさかの大穴! キオです!」
【ナトウ】「わははは! ホント読めないヤツだ!」

 近くのパーティー。
「おっ、あの声は若者パーティーの小さいヤツだな!」
「おおっ、あいつがやったのか! ナタネムラ? 聞いたことのないパーティー名だな」
「いや、この近所の村だ。あいつら見習いだったのかよ」
「ああ、ヒーラーも連れていないと思ったらそういう事か。無茶しやがって」
「将来有望じゃねーか。俺たちも負けてられないぜ! ほら、敵さんの一団が来たぞ!」
「蹴散らせぇぇぇぇ!」

 遠くのパーティー。
「よっしゃ! 後は雑魚退治だ!」
「ちゃちゃっと終わらせて、酒だ!」
「おおおおおっ! 俺たちの勝利だ! 雑魚ども、覚悟しやがれ!」
「ギャギャッ!」
 戦士たちの歓声が上がる。逆にゴブールたちは活気付いた戦士を見て状況を察したのか、女王が殺されたことを知る術があったのか、抵抗を止め敗走する。
「逃がすな! 根こそぎだ!」

 ▼

 巣(ハイブ)前。

【猫耳少女A】「すごい歓声じゃな」
【ミミル】「盛り上がっているのです!」
【猫耳少女A】「一番首を獲った時はこうするのじゃ。その前に一番首を発見した時は狼煙を上げる。まあ戦場をこなせば憶えていくじゃろう」
【キオ】「うん、ありがとう! ところで誰? 軍師? 星いくつ?」
【猫耳少女A】「儂らはただの通りすがりの五ツ星軍師の美少女コンビじゃ」
【ミミル】「なのです」
 キオに声を掛けられ、軍師の猫耳少女二人がが胸を張ってポーズを決める。なお、二人ともささやかな胸のサイズである。
【アキラ】(たしかに二人とも美少女だけど自分で言っちゃうんだ~)
 言葉には出さなかったアキラだった。
【キオ】「すげー! 二人とも五ツ星なんだ! 小さいのに!」
【猫耳少女A=ナーナ】「だから猫族は猿族にくらべて小さいのじゃって。儂はナーナ。ここの中将と同じ名じゃ。憶えやすかろう」
【ミミル】「私はミミルなのです」
【アキラ】「五ツ星軍師か~。納得、すごく的確な作戦で助かったよ~。僕たちだけじゃ勝てなかったと思うよ~」
【ナーナ】「お主らも良くやったのじゃ。キオと・・・・・・お主は?」
【アキラ】「僕はアキラ~。あっちのガラが悪いのがネロだよ~」
【ネロ】「くそが、くそが、くそが、てめぇ、俺様に倒されやがれ! なんでキオになんか!」
 ネロは既に息絶えている女王ゴブールにグサグサと剣を突き立てて八つ当たりをしていた。
【ナーナ】「トドメは念入りにとアドバイスをしようと思ったのだが、心配はなさそうじゃな。そやつらも神の犠牲者。丁重に扱ってやれ」
【ミミル】「キオ、アキラ、ネロなのですね。いい星が付くと思うのです。期待していいと思うのです」
【ナーナ】「さて、儂らは本来の配置に戻る。敵はまだいる、油断せぬよう。でわな」
【ミミル】「またなのです」
 素早い身のこなしで、二人の猫耳少女は山の中に駆けていく。くるっと向けたお尻に、猫族特有のしなやかな尻尾が揺れていた。
【キオ】「おー、またな!」
【アキラ】「またね~。さて、僕たちはどうしようか~?」
【キオ】「お腹空いた! 帰ろう!」
【アキラ】「そうだね~。お~い、ネロ~。帰るよ~」
【ネロ】「だぁぁぁ───っ! くそがぁぁぁぁ!」



◆1-4 魔法石

 翌日。ゴブールの子供一匹、卵一個さえも残さず殲滅。このコロニーは完全に絶滅する。山の上の天使が去り、赤い光の柱が消えたことが本作戦の終了を告げていた。

「ゴブールは心臓の裏っ側に魔法石があるんだ」
 付近の村人も参加し、魔法石採取が始まる。
「ゴブールの赤ちゃんも殺されてる。なんかかわいそー」
「神が殺せと言ってるんだもの、仕方ないよ」

 狩る者である『人』、ゴブールなどの狩られる生物『魔獣』を分けたのは、生命活動にアリエルを消費する生物か否かである。アリエルを消費する生物は、その力を魔法石として体内に溜め込み魔法として活用する。よって呪文などを必要とせずに魔法が使える。

 おさらいをしよう。『アリエル』とは存在する意思であり存在するためのエネルギー。神の意思であり、神のエネルギーであり、万物の元である。しかし、アリエルが不足しているために、膨張している宇宙はやがて縮小に転じ、最期には存在を終える。神はアリエルを増やすために、『存在する意思』を生み出すことのできる存在『生物』を作り出す。

 神は自然法則では足りない部分をアリエルで補い生物を作る。最初に作られた生物『天使』は『存在を思考』し効率良くアリエルを生み出すが、誕生も生命活動も完全にアリエルに頼っていた。
 神は試行錯誤し、生物は死んでいい、それ以上に自然に増殖すればいいというアイデアにたどり着く。生物でありながら死んでもいいとは、どれほどのブレイク・スルーだっただろうか。このアイデアにより生物は惑星中に広がる。

 神に二つの目的ができる。
 一つはアリエル・ノーコストで増殖、生命維持をする生物により、生態系を永続的に維持すること。もう一つは、更にはノーコストで天使のように『存在を思考』できる生物を作ること。二つの目的は達成に至り、後者はのちに『人』と呼ばれる。
 しかし目的に届かず、生命活動にアリエルを消費する生物も多々残っていた。不要な種ではあるが、アリエル収支が大きくプラスに傾いていた事もあり、処分にもコストがかかるためわざわざ処分する事を見送る。
 神は自らのアリエル消費を抑えるために休眠して様子見する事にした。

 神の休眠の間に、人は魔法と科学により宇宙に出られるほどの高度文明期を迎え、人にとっては無限にも思えるエネルギー『アリエル』を発見する。そしてその力を、よりによって戦争利用で大量浪費した。
 神は激怒した。約5千年前のその事件は『大神罰』と歴史に刻まれる。文明は一ヶ月を要せず神により破壊され、人類は1/10以下に数を減らした。
 神が人を完全に滅ぼさなかったのは慈悲などではない。神はアリエル収支改善のために人を利用することにした。その一つがアリエルを消費している不要種『魔獣』の処分である。

「見て見て、このでっかい魔法石!」
「おお、これは高く売れるぞ」
 魔法石からアリエルに戻すことは不可能。よって人が魔法石をエネルギー利用することは許されている。またゴブールの肉は食用、革は道具に。神の命令による魔獣狩りだが、人にとっても実入りのあることだった。

 神の意から離れている事を『魔』と言い、『魔法』『魔獣』『悪魔』などと使われる。余談ではあるが、神の力を『神の魔法』などと言うのはよくある誤用である。



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