退魔の領域 第03話 伊吹咲菜③ 領域突入①

咲菜はついにリーリエの領域へとその一歩目を進める。

壁についた真っ白なシミに右足を沈める。

 

「っぅう...!」

 

脚から伝わる感触は最悪だった。

まるで腐った肉を踏むような捉えどころのない感覚が爪先を包み、ヒールブーツからサイハイニードックスに伝わり、腰、淫紋へと伝搬する。

そのおぞましくも淫らな感触に、体中の力が抜け、奮い立たせた気力がなえそうになった。

力が抜けそうになる。

 

ここで止まったら、また心が萎えてしまう。

咲菜はおぞましい感覚を無視し、一気に飛び込んだ。

 

「ふぁぁ...!」

(こ、この感覚...!だ、だめぇ...力が抜ける...)

 

脚から伝わっていた感覚が今度は全身を舐めていく。思わず声が漏れる。

咲菜は歯を食いしばり、その感覚に抗い、歩を進める。

身体が完全にこの感覚に包まれたのを感じた。

視界は真っ白になっており、周囲の状況はまったくわからない。

二歩目を踏み出す。

プールのそこを歩くような感覚だった。

身体はふわふわとしているが、踏み出す脚には負荷がかかり、咲菜が先に進むのを遮る。

止まったら進めなくなる!

咲菜はなんとか体中の感覚をなんとか無視しようとする。

三歩目。

全身からの感覚は無視するには大きすぎた。

まるで、身体がじわじわと腐って行くようだ。

異常に柔らかい何かに触れる感触が体中を包む。

 

(は、はやく終わって...ぇ〜〜〜〜っ!)

 

リーリエの気配を横に感じる。

まだ、領域の入り口をくぐっただけなのだ。ここで脚を止め、リーリエに無様な姿を見せるわけにはいかない。萎えそうになる脚に鞭を打つ。

四歩目

 

「ふ、ふぁぁああぁ...!」

 

体中を水のように包む安心感とおぞましさの二律背反。

考えるよりも先にまた脚を踏み出した。何かを考えると踏み出せなくなりそうだ。

すると、全身から入力された感覚が右足だけ途絶えるのを感じた。

 

(こ、これでおわるっ...!!!!)

 

咲菜は転げるように身体を投げ出した。

視界が開ける。

咲菜は倒れるように入り口を抜けると膝から崩れ落ち、両手をつき、四つん這いの姿勢で乱れきった呼吸を整える。

 

「咲菜ちゃんおつかれ〜〜〜。もしかして入り口でイっちゃうんじゃないかとヒヤヒヤしたったぁ」

 

リーリエの嬉しそうな声が聞こえるが、今の咲菜にすぐ顔を上げる余裕はなかった。

がっくりと首を落とし、呼吸を整えるのに専念する。

シルバーピンクに染まったサイドテールもそれに合わせて上下する。

乳首は軽くピッタリと身体に張り付いたインナースーツ状の狩衣からもはっきりその様子が伺えた。

股間の生地は薄っすらとその色を濃くしている。

狩衣の霊力強化の効果により、淫紋の効果をかなり押さえ込んでいるのにこの始末だ。

唯一の救いは、耐水コートを着て、前をピッタリと閉めているため、自分の発情した身体の様子がリーリエには見えないことだ。

 

(もし狩衣がなかったら...)

 

咲菜は自分の包むぴっちりとして衣装に感謝した。

 

「は…ぁあっぁ…は……あ…っぁ…、お、おかげさまでね...」

 

咲菜は情けない四つん這いの状態のまま、かろうじでそれだけいい返す。

 

(ま、まだ入り口なのに...)

 

自分どれだけ劣悪な環境に身をおいているのか咲菜は身を持って自覚した。

これ以上、じっとしているのは得策ではない。

なんとか呼吸を落ち着け、顔を上げる。

 

「な、なによこれは...!」

 

咲菜は思わず絶句した。

 

「ようこそ咲菜ちゃん!私のおうちへ!」

 

リーリエがその様子をうれしそうに見ながら言う。

 

咲菜はまだ本当の意味で自分の置かれた立場を自覚などしてなかった。

目の前の光景はそれをまざまざと思い知らせてきた。

 

咲菜の目の前に広がっていたのは肉の世界だ。

どくどくと脈動するピンク色の肉の壁で構成される広大な薄暗いホール。

その肉で構成された床は、ボコボコと二十メートル程度の隆起し、肉の丘を作る。

それが連続し、肉の丘陵を形成している。

丘の間は白濁した粘度の高い粘液がドロドロと流れ、粘液の川を作っている。

川は何かが泳いでるのだろう。時折大きくうねる。何が泳いでるのかは想像もしたくない。そして、大気は腐った果実のように甘く、数十メートル先はピンク色の霞がかかったようにおぼろげだ。

視線も感じる。

それは、つまり動物程度に知性のある存在が咲菜を認識し、今この瞬間もこちらを狙っている存在がいるということだ。きっと視線を隠す頭の回るものもいるだろう。

 

この世のものとは思えない光景に絶句している咲菜の思考を促すように、左目につけたHMDが狩衣の霊子センサーから得られた周囲の情報を表示してくる。

 

ホールの直径は十キロ程度、咲菜がいる位置からちょうど反対側に、いくつかの分かれ道がある。別れ道は奥に向かうつれ、傾斜しているようで、白濁液の川に流れる白濁液を供給し続けている。咲菜は停止しそうになる頭でなんとかそれらの情報を読み取った。

 

「ところで咲菜ちゃん、障壁張らないで大丈夫?だいぶ呼吸しちゃったみたいだけど?」

 

リーリエがさも不思議そうに訪ねてくる。

 

「えぅ...?どういう ...」

 

咲菜は、それ以上言葉を続けられなかった。

 

いきなり領域の入り口に現れたリーリエに煽られ、その勢いで突入。

入り口では思わぬ快感に翻弄された。

流れに飲まれての突入だったため、彼女は十分な手順を取ってなかった。

領域内部にいるにもかかわらず、自発的に障壁を張っていなかった。

 

彼女は乱れた呼吸を整えるために領域内の空気を狩衣の最低限の障壁だけで深く呼吸してしまった。

咲菜はリーリエの言葉でそれに気づいたときには遅かった。

意識した瞬間、領域内の呼気に含まれる媚薬成分が一気に咲菜の身体へ牙を剥いた。

 

「あっ...?あ…ぁああっ、う……ううぅっぁ!わ…ぁ…ああああ…ああぁぁああ…ぁっあ……ぁぁぁあ〜〜〜〜〜!?!?!?」

 

咲菜は、喉を抑えて悶え狂った。

呼吸が熱い。領域内の大気をほぼ生身で呼吸してしまったせいだ。

身体中が燃えるようだった。落ち着くべきだが、身体を襲う掴みどころのない快感がそれをゆるさない。とにかくじっとしていられない。

四つん這いの姿勢から体中の力が抜け、肉の床に崩れ落ちる。。

 

(こ、こんなに一瞬で!?しょ、障壁...!障壁を張らないとぉ!!!)

 

「しょ、しょうへき!...っぅうう〜〜〜〜!!!あ、あ、あ、だめぇ!!!」

 

(そ、そんな!術が、うまく、うまく発動しないぃ!?集中がぁ〜〜〜!)

 

霊力の運用はそれ相応の集中力が必要だ。

身体に媚薬が廻り、快感を感じている状態では、いつものように術を発動する霊力の運用はできない。

水中で溺れるダイバーがいつもどおりに行動できないのと同じだ。

 

「あらあらあらぁ〜。咲菜ちゃん、威勢がよかった割にはもしかしてなんにもせずにゲームオーバーかしらぁ〜〜〜?」

 

リーリエは肉の床を転げ回る咲菜を、その様子を高い身長から見下ろしてニヤニヤとしている。

 

「う、うるさぃ〜〜〜っ!!!あっ...くぅぅあはあぁぁあ〜〜〜!」

 

咲菜は横目でリーリエを睨みつけ、反論しようとするが言葉にならない。

そんなことをしている場合ではないのだ。まずは、障壁を貼り、領域からの侵食を止めなければならない。だが、今の咲菜は混乱状態で冷静な対応ができない。

 

「ふぁぁ!?あ、あ、あ、あ、あぁくぅ〜〜〜〜〜!?」

 

その時、咲菜の悶えかたが変化した。転げ回ったいたが、より強い快感によりそれを止められる。目を見開いた仰向けの体勢で、何かを耐えるように身体を弓のようにピンと伸ばし背筋を震わせている。

 

「あらっ!障壁張れたじゃない」

 

リーリエが少し不満そうな様子でいう。

咲菜の身体が一瞬淡く光った。霊力による障壁だ。領域内部での魔力により生成された媚薬効果や催淫効果を軽減してくれる。

 

「あぅぅぅぅ〜〜〜〜〜〜っ!!!!????くぅううううぅうう〜〜〜〜!!!!」

 

「でもなんでかまだ苦しそうね。おーい、咲菜ちゃん大丈夫〜〜〜?」

 

障壁は発動したが、咲菜は未だ仰向けの状態で脚を揃えてピンと身体を反らし、羽織った耐水コートを振り乱しながら、眉根を寄せ力いっぱい握った拳で肉の床を叩き、なんとか身体を襲う快感をのがそうと悶えていた。

 

(霊!力…、強…制…!的……にいぃぃ狩衣……!にいぃ吸…わああ…れ…ぇぇ…えっ!て…え……る…ぅうっ!。こぉおれぇ!、吸…!わあぁああぁ…っれえぇるぅ…!の………っ!だぁあ…め…ぇ…え…え!ぇ…!)

 

原因は狩衣が発動した障壁だった。

咲菜はリーリエの刻んだ淫紋の侵食により、霊力を放出すると快感を感じる身体に改造されてしまっていた。だが、咲菜のそんな恥ずかしい異常体質のことなど知らない狩衣は、咲菜を領域の淫らな効果から守るためにセーフティ機能に従い彼女の霊力を強制的に吸い上げて障壁を発動してしまった。

 

咲菜は優れた霊力を持つ。その霊力が拡散しないようにするためには彼女が瞬間的に放出できる霊力量の帯域の約半分を常に障壁へと使わなければならない。

だが、咲菜にとってこれは性的な拷問と変わらない。常に霊力を放出するということは、常に快感に襲われるということを意味する。そして、咲菜が放出し続けなければならない霊力量は通常の退魔師よりはるかに多い。

 

彼女はその優れた退魔師の資質故に今苦しめられていた。

 

「はああああっ!ぁ…っ!あぁ…!ああぁっ!ああ……あぁっ〜〜〜〜〜!?!?」

 

(あぁあ…ぁ!、あぁぁぁ!、ああぁあ、抜……けぇぇてえ……!くぅぅ…感…!覚……だ…ぁぁ…め…えぇ…!狩衣着装するときの比じゃなぃぃぃ〜〜〜!?)

 

今回は、霊力の放出は自分の意志でなく、完全に狩衣によって行われた。それが特に彼女を乱れさせる。

自分のペースでオナニーさせてもらえずに、いきなり他人によって強制的にそれが行われているようなものだ。強制的に行われ拒否権のない快感は自分で得る快感とは比較にならないほど精神を削る。

 

咲菜は両手で自分の身体を抱くように掻きむしる。

そのせいで、ぴったりと閉じられていた膝まである耐水コートは前がはだけて中に隠していた発情した身体がさらけ出されてしまった。

ピッタリと張り付いたスーツ越しにはっきり見える勃起した乳首や濡れた股間。

黒い極薄生地に隠されずわずかに除く鼠径部や太腿の生肌は赤く染まり、汗にぬれてテカテカと光っている。

 

少しでも快感を逃がすために、サイハイニーソックスを履いた美脚をこすり合わせるのがやめられず、ぴっちりと身体に張り付いたレオタード状の狩衣を同様に極薄素材のグローブで包まれた手で掻きむしるのもやめられない。

その間も、狩衣による強制的な霊力の吸い上げはもちろん止まらない。

 

咲菜が股間や乳首に手を伸ばさなかったのは最後の意地だ。

 

「あらあらあら〜〜〜!咲菜ちゃんの身体、コートで見えないから不満だったんだけど、ちょっと見ないうちに随分と美味しそうになってるじゃない〜〜〜!今すぐにでも食べちゃいたいくらいよ?閉じておいてから開けてみるのもいいわねぇ〜!」

 

リーリエは仰向けで悶え苦しみ、コートがはだけ、汗まみれで悶絶する咲菜の身体をよく見るために、すぐ横にしゃがみ込み、舐めるようにその恥態を干渉している。

 

「ぅう……ぅ…!る…っ!さあ…ぁ..!だ、だま、れ…えっ…!っう…う〜〜〜〜!?」

 

咲菜は愉快でたまらないという様子を隠すこともせず舐めるように自分の身体を見続けるリーリエを悶えながら睨んだ。だが、柳眉は情けなく下がり、迫力はまったくない。

 

彼女は気づいていないが、リーリエはこういった咲菜の様子も好きでたまらない。制御できない快感で悶えるぴっちりスーツを着た美少女が涙を目にため、精一杯の去勢を張って鋭い視線で自分を睨んでくるのだ。加虐を心情にする淫魔にとって、これほどのご褒美もない。

 

だが、咲菜はスーツからの霊力吸収による快感に手一杯でそんなことには全く気づかない。

咲菜はその視線から逃れるために、はだけたコートの前を一刻も早く閉じたかった。

だが、無駄だとわかっていても、どうしてもピッタリと身体に張り付き今の苦しみの原因になっている狩衣を掻きむしる手を止めることができなかった。

 

そして、その手の動きを見ていたリーリエが咲菜の異常の原因に気づく。

 

「あ〜〜〜っ!わかったぁ〜〜〜!このぴっちりスーツに強制的に霊力を吸われて術を使うのが気持ちイィのねぇ〜〜〜!私の淫紋のせいで霊力使うのとっても気持ちいものねぇ?気持ちいいこと自分のペースでできないのはつらいよねぇ〜。正義のぴっちりスーツに悶えさせられる気持ちはどう〜〜?どう〜〜?」

 

リーリエは咲菜が陸で溺れるように悶え苦しんでいる原因に気づき、愉快でたまらない様子で横にしゃがみこんでその様子を眺めている。

淫魔からしたら、自分たちを討伐するための装備のせいで、退魔師が悶え苦しんでいるのは愉快で愉快でたまらないことだろう。

 

「は…あ…あ…!ぁ…あ…あ…ぁあ〜〜〜〜〜〜〜!?う、うるさぃ…うぁああああ〜〜〜っ!?!?!?」

 

(き、気づかれたっ〜〜〜〜!?くう…ぅ…っ〜〜〜〜!?は…あっず…ううう…か……!し…す…ぅぅ!ぎいるぅう〜〜〜!!!でも、手も脚も止められないぃぃいい〜〜〜!!!)

 

自分のぴっちりスーツに責められているという恥ずかしい現状がリーリエに悟られたことが恥ずかしくてたまらない。目尻に悔し涙をためながら悶える。

 

「うううぅう…う!わぁあ…あっーーーーー〜〜〜〜〜っ!?」

 

咲菜はその後、ほぼ生身で吸ってしまった領域内の呼気の媚薬効果が完全に分解されるまでの数分間、狩衣による強制的な霊力の吸い上げという変質的な快感に悶え苦しみ続ける様をリーリエに無防備に晒す羽目になった。




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