第36章

◆第36章 鬼◆

◆36-1 鬼族とは

 ウエスタ王国レキノ区レキノ市。またの名をギャンブル都市。
 コロシアム前の広場に魔法テレビの置かれたステージがある。テレビと言っても映像は静止画のみ。音声は司会者ライブである。
 賭けの報告だけでなく空いている時間は色んな催しをやっている。

【ポップル】「お馴染み『歌って踊れるアイドル解説者・ポップル』です。好評の暇つぶし企画『世界の色々な人種』のコーナーです。今日のお題は『鬼族』。まずは会場のみなさんに“鬼”についてのイメージを聞いてみましょう」
 と、魔法テレビに鬼のイラストが映写される。

【男】「ああ、笑いながら人を喰らうってね。恐いよな」
【女】「他種族を犯して子供を作るんだって。滅びてしまえばいいのに」
【子供】「悪いことをすると鬼が来るんだよ」
【子供】「うわーん、恐いよー!」
【剣士】「とにかく強いって話だな。龍を一人で倒したとんでもない鬼の伝承を知ってるだろ?」
【軍師】「指揮官が大雑把に配置を決めるために使う戦闘力値を知ってるか? 例えばミノタウルのハーレムキングは200で計算するのだが、鬼はなんと5000。やり合うことはないと思うが、やりたくない相手だな」
【超人レキノ】「超人と鬼、どっちが強いかじゃと? うーん、普段のワシじゃからっきし敵わんじゃろう。暴走時ならなんとかなると思うが、どっちにしても街がメチャクチャになってしまうのぉ」
【ココ】「鬼とは龍の力を取り込み、異常なまま人に進化してしまった種族と考えられています。
 かつて神が作った実験的な生物で、捕食進化───捕食により他者の性質を取り込んで進化する生物がいました。それが原人を取り込み原人の性質を全面的に出して進化。その後、龍を取り込みます。
 生殖しないはず龍が生殖力を持ったとも言えます。こうして鬼族の始祖が誕生し子孫を増やしました。幸い捕食進化は遺伝しなかったのと、龍の力は血が薄くなるほど弱くなっていき、始祖級の化物が無尽蔵に増えることは免れました。
 その後、鬼族が生息していた北部の火山地帯が噴火により陸の孤島となります。激しい生存競争により強い鬼族ばかりが生き残り、共食いと近親交配が鬼を異常にしていきます。
 習慣的な共食いにより、脳が欠損していくという病気が蔓延します。この時代、まだ“人”は未完成で生存をアリエルに頼っていました。そのために、脳の欠損を他人の脳を食べて補うなどという無理がまかり通りってしまいます。
 また近親交配のために多くの奇形児が誕生しました。ですが生殖もアリエルに頼っていたことにより異常なまま誕生、そして生存してしまいました。
 やがて他の人類と同様、アリエルに頼らずに生存・生殖可能な“人”として安定します。
 龍に起因する超人並みの強靭な体、異常な容姿、人を食し脳の欠損を補完する、同族同士では妊娠率が悪く他人種に子を産ませる───そんな特徴の種族となり、火山の活動が収まると、食料と繁殖を求め世界に進出し、他人種にとっては歴史に長く刻まる脅威となります。
 遥か時を経て、高度文明期の大規模な鬼退治により、とうとう鬼に現在まで続く協定を結ばせるに至ります。簡単に言うと『満足な生活を与える代わりに、この地より出てくるな』という協定です。鬼たちは北西部の“修羅の国”と呼ばれる土地で静かに暮らしています。
 脳の欠損について補足すると、苦痛とともに段々と記憶や正常な思考を失いますが、他者の脳を食べると症状がなくなるだけではなく快楽を伴うそうです。よって本能的だけでなく快楽的に人食をします。
 鬼の最大の脅威は、他種族のことを餌である下位種族、自分たちを上位種族と思っているところにあると・・・・・・おっと、悪い癖でつい話が長くなってしまいました。ところでゾンビ・ダンジョンはこの方角ですか?」
【ポップル】「あ、ありがとうございました! 通りすがりの専門家さんのおかげで、用意していた台本以上の濃い話が聞くことができました。時間がオーバーしてますので、続いて今日のデスゲームの結果に───」



◆36-2 鬼の子

 南ユキボウシ山。

【2つ目鬼】「人間を食ったのは、一週間くらい前だ」
【1つ目鬼】「ニシシシ。次に食うのはもう一週間後だ。ビビらなくていいニ」

【戦士】「や、やっぱり鬼は人を喰うのか」
【戦士】「だが毎日食うわけじゃないんだな」
【戦士】「人間しか食わないかと思ってた」

【2つ目鬼】「勝手に人間食うとかーちゃんにめちゃくちゃ怒られるしなー」
【1つ目鬼】「尻を叩かれるニ。おかげで2つに割れたニ」
【2つ目鬼】「げらげら! アホ、最初から割れてるよ」

【キアル】「斬っていい? 鬼斬る。オニギリ? キ・・・・・・んぐっ!」
【エルチア】「し、しーっ! 大地の力と魂の開放を。シールド解除」
【キアル】「・・・・・・・・・・・・お、鬼っ。きゃぁぁ」
 キルキルちゃんはエルチアの背中に隠れてブルブルと震えた。

【3つ目鬼】「二人とも、初めましての相手には自己紹介をするのが人間の習わしですよ。初めましてみなさん、私はマキです。見ての通り平凡な鬼娘です」
【2つ目鬼】「おいらはドンキ。よろしくな」
【1つ目鬼】「ミルキはミルキだ!」

『1つ目鬼ミルキ』
 鬼の特徴を除けばまだ幼さの残る少女。大きな目が1つ。赤みの強い肌。赤い髪、短いツインテール。角は2本だが左側は折れている。語尾に「ニ」が付いたり付かなかったり。武器は剣。

『2つ目鬼ドンキ』
 目は2つ、角1本、右腕が極端に太く長い、身長2メートルほどの巨体。肌は青く髪は金色。年齢不詳だが表情が柔和で若さを感じさせる。武器は棍棒。

『3つ目鬼マキ』
 美しく成長する未来を感じさせる少女、目は3つ、人の通常の位置に2つと額に1つ。角は2本。肌は白っぽく黒髪ロング。穏やかに敬語で話す。武器は棍棒。

【1つ目鬼ミルキ】「さぁ、人間たちも自己紹介するニ」
【3つ目鬼マキ】「この人数を憶えられるのですか?」
【2つ目鬼ドンキ】「無理だろ、アホだから」
【1つ目鬼ミルキ】「無理だな、アホだから。やっぱ自己紹介はいいニ」

【モノフ中将】「それじゃ、俺が代表として挨拶させてもらおう。この連中を指揮しているモノフだ」
【2つ目鬼ドンキ】「おお、よろしくな、モノフ! 強そうだな、お前」
【モノフ中将】「で、お前らここで何をしている? 鬼と人の協定のことを知らねぇのか?」
【1つ目鬼ミルキ】「子供だからよくわからないニ!」
【2つ目鬼ドンキ】「子供だから知らん!」
【3つ目鬼マキ】「子供ですので仕方ないですね」
【モノフ中将】「ああ、察した。子供だから許されると思って飛び出して来た訳だな」
【1つ目鬼ミルキ】「そうだ!」
【2つ目鬼ドンキ】「そういうことだ」
【戦士たち】(素直だ)
【戦士たち】(素直だな)
【モノフ中将】「で、目的は遊ぼう───要は俺たちと戦いてぇと」
【2つ目鬼ドンキ】「おう! 遊ぼうぜ」
【1つ目鬼ミルキ】「そうだニ!」
【3つ目鬼マキ】「3人の中で誰が一番強いか?という話になったのですが、真剣に殺し合う訳にも行かず、誰が人間を相手に一番早く10人斬りが出来るか、という話になりました。お手数ですがお付き合い下さい」

【モノフ中将】「そいつはちょっと無理だな。鬼と真剣勝負をするにゃ、俺たちじゃ力不足だ。ルールを作らないと」
【1つ目鬼ミルキ】「どんなルールだ?」
【モノフ中将】「俺たちが強いヤツを選ぶのに使っているルールだ。戦うのは1人対1人。仲間を5人までサポートメンバーにできる。ただし仲間は味方を応援できるが敵を攻撃してはいけない」

【キオ】「あっ」
【エンジ】「北部剣聖選抜のルールでござるな」

【2つ目鬼ドンキ】「仲間? おいらたちは3人しかいないけど・・・・・・いらねっか」
【1つ目鬼ミルキ】「応援する気なんてないニ! 勝つのはミルキだ!」
【モノフ中将】「相手を戦闘不能にするかギブアップさせたら勝ちだ。
 それと10人斬りか。大体均等になるように、10人ずつを選ばないといけねぇな。こりゃ少し時間がかかりそうだ。開始は明日の昼からにしねぇか? どうせなら盛大に祭りにしたいじゃねーか」
【2つ目鬼ドンキ】「祭り! 祭りは好きだ!」
【1つ目鬼ミルキ】「祭りニ!」
【3つ目鬼マキ】「ではそうお願いします」

 ▼

 作戦本部のテント。

【モノフ中将】「上手く時間を稼げたぜ」
【ケンザキ少将】「修羅の国の監視所から使いが来るとしたら、ひーふーみー、3日掛かるッスかね」
【ポムモモ准将】「それまで足止めをしないとぽむ」
【モノフ中将】「ああ、あんなのに自由にうろつかれたらパニックになる。怒らせたら何をしでかすかわからんし、足止めしないと行けない。ああ、面倒だ」
【ポムモモ准将】「“面白そう”と顔に書いてあるぽむ、中将」
【ケンザキ少将】「おっ、もしかして自ら出る気ッスか? だったら俺ッチも俺ッチも」
【モノフ中将】「フッ。軍師どもを集めろ。作戦会議だ! 帰ったやつは報酬抜きとも伝えてくれ」



◆36-3 鬼対抗戦

 翌朝。

【戦士】「こいつはでっかいなー」
【戦士】「さすが巨大古代生物」
【1つ目鬼ミルキ】「おー、魔法石か? でっかいニ」
【戦士】「あ、ああ」
【2つ目鬼ドンキ】「なーなー、これって食べられるのか?」
【戦士】「えっ? どうだろうな」
【戦士】「古代生物って食べられるのか?」
【戦士】「さあ・・・・・・考えたこともない」
【戦士】「くんくん。魚っぽいか?」
【1つ目鬼ミルキ】「食ってみればわかるニ。もぐもぐ。おお、意外と美味いぞ!」
【3つ目鬼マキ】「あむっ・・・・・・海の方の食べ物の味ですね」
【2つ目鬼ドンキ】「いけるいける。朝飯、これでいいな」
【戦士】「へぇ、そんなに美味いんだ。ちょっと食ってみるか?」
【戦士】「おい、生はやめておけ」
【戦士】「そうだな。ちょっと焚き火で炙って。もぐもぐ。なるほど! 美味いぞ、これ。」
【1つ目鬼ミルキ】「ミルキにも焼かせるニ」
【2つ目鬼ドンキ】「おお、焼いたの美味そうだな」
【3つ目鬼マキ】「これは焼いたほうが美味しいですね」
【戦士】「もぐもぐ、こりこりしたイカって感じだな・・・・・・ちょっとピリッとした感じが刺激的で・・・・・・んぐっ!? ぶくぶくっ」
【戦士】「お、おい! 泡を吹いて倒れたぞ!」
【戦士】「ヒ、ヒーラー!」
【2つ目鬼ドンキ】「なんだ、毒にやられたのか?」
【1つ目鬼ミルキ】「このくらいの毒でニ? 人間は弱いニ」
【3つ目鬼マキ】「ピリピリして美味しいのに」
【戦士】「毒があっても大丈夫なのか~」
【戦士】「さすがだな鬼族は」

 ▼

 昼。
 ルール説明が行われる。

【1つ目鬼ミルキ】「3人別々に戦うのニ?」
【2つ目鬼ドンキ】「よーいどんで戦わないと、誰が一番早く10人倒せるかわからないぞ」
【モノフ中将】「それは大丈夫だ。このストップウォッチという道具で正確に時間を計れる」
 ストップウォッチと言ってもデジタルではなくアナログで置き時計くらいの大きさがある。
【3つ目鬼マキ】「時計みたいなものですね」
【2つ目鬼ドンキ】「くじを引いて、3人、3人、4人で10人抜き?」
【1つ目鬼ミルキ】「ルールが面倒くさいニ!」
【3つ目鬼マキ】「とにかくくじを引けばいいのですよ。私が1番です」
【2つ目鬼ドンキ】「あっ、ずりい。俺は3番だ」
【1つ目鬼ミルキ】「2番ニ」

【モノフ中将】「対戦相手はこちらだ」
 1番の札の前に3人の戦士。2番の札の前に3人の戦士。3番の札の前に3人の戦士。

【モノフ中将】「まずは第1戦。くじで1番を引いた者はこの1番札の3人と1番目に戦って貰う。2番は2番目に2番札の3人、3番は3番目に3番札の3人。難しくないだろ?」
【3つ目鬼マキ】「試合順と対戦相手がくじで同時に決まるということです」
【1つ目鬼ミルキ】「なんだ簡単ニ」
【2つ目鬼ドンキ】「とにかく、そいつらを速く倒せばいいんだな」
【モノフ中将】「第2戦も始める前にくじを引いて決める。第3戦は対戦相手が4人になるが同様だ。不公平をなくすために組み合わせと順番はくじ運次第にした。運も実力の内という訳だ」
【1つ目鬼ミルキ】「つまり、くじを引いて倒すだけニ。簡単ニ」
【2つ目鬼ドンキ】「早速、始めようぜ」
【3つ目鬼マキ】「いつでも、いいですよ」

 第1戦・1番札。
『堅実な騎士・オルム』五ツ星騎士。
『小さな竜巻・キオ』四ツ星剣士。
『マンズ村の怪力王・タートン』五ツ星斧使い。

 第1戦・2番札。
『細切れに刻む鞭・ラビアン』五ツ星鞭使い。
『火と水に愛されし者・アギア』五ツ星魔法剣士。
『ピンズ村の怪力王・ラード』五ツ星斧使い。

 第1戦・3番札。
『雷の暴走・エルマ』五ツ星魔法剣士。
『理性ある野獣・ハギ』五ツ星闘士。
『ソウズ村の怪力王・トム』五ツ星斧使い。

【ガンスロット】「各札、防御に優れた者でまずは敵戦力の分析、変わり種、パワータイプという順に割り振った感じでがんすかね?」
【ポムモモ准将】「飽きられて暴れたりされると困るぽむ。楽しんで貰えるようなタイプの戦士を選んだぽむ」
【ガンスロット】「解説は『人間データベース・ガンスロット』と」
【ポムモモ准将】「『准将・背後に潜む目と耳・ポムモモ』でお送りするぽむ」

『人間データベース・ガンスロット』五ツ星軍師。
 スペック24歳男、イタチ族。東部で有名な解説者。

【ガンスロット】「第1戦の見どころは───熊族の村、マンズ村、ピンズ村、ソウズ村出身の三人の怪力王が勢揃いでがんす。いずれも武器は斧。もしも剣ならば剣聖選抜に出ておかしくないと噂される実力者でがんす。鬼族を相手にパワーで挑めると思うでがんす」
【ポムモモ准将】「準備が整ったみたいぽむ。第1戦・1番札・1人目は───」

『堅実な騎士・オルム』五ツ星騎士。
 スペック24歳男、豹族。イスタン王国の客員騎士。

【ポムモモ准将】「客員騎士とは戦士資格と騎士資格を持ち、基本は戦士として活動をし、緊急時などには騎士として招集される戦士のことぽむ」
【ガンスロット】「安定高給職の騎士よりも実力で収入が決まる戦士職を選んだということでがんす。実力は推して知るべしでがんす」

【オルム】「頼むぞ、みんな」
【パーティーメンバー】「ああ」
【パーティーメンバー】「私たちの目のオルムの目」
【パーティーメンバー】「死角はない」

【ガンスロット】「パーティー全員が騎士。よって騎士結束が働くでがんす。結束によるバフだけでなく、共有感覚こそが騎士結束の真髄。極めると仲間が知らせる危険を感じることができるらしいでがんす」
【ポムモモ准将】「そして、対戦相手は3人の鬼族の中から、3つ目鬼のマキさん。見た目は18歳くらいぽむ?」

【3つ目鬼マキ】「17歳です」
【1つ目鬼ミルキ】「ミルキは12歳ニ」
【2つ目鬼ドンキ】「おいら何歳だっけ?」
【3つ目鬼マキ】「15歳ですよ」
【2つ目鬼ドンキ】「おお、そのくらい!」

【ガンスロット】「女鬼2人は大体見た目くらいの歳でがんすね。男鬼は意外?」
【ポムモモ准将】「顔だけ見るとベービーフェイスでかわいいぽむ」
【ガンスロット】「やはり年相応でがんすかね。まずは、第1戦の対戦相手、3つ目鬼のマキ選手に注目してみるでがんす」
【ポムモモ准将】「出る所は出ている細身、将来有望そうなスタイルぽむ。しかし女性らしい見た目からは意外な棍棒が武器ぽむ。イボイボ付きで殴られたら痛そうぽむ。軽々と振り回しているけど、鉄製と思われるぽむ」

【ケンザキ少将】「ご両者、準備はいいっスか? そいじゃ、試合開始っス!」
 ゴォーンと銅鑼を鳴らし、試合開始となる。

【3つ目鬼マキ】「さて、まずは様子を見ましょう」
【オルム】「では、こちらから行かせてもらいましょう」
【3つ目鬼マキ】「あら、速い。えっ、こっち?」
 オルム、ジグザグした動きからフェイントを掛け、マキの死角に入り込む。
【オルム】「まずは、一打!」
【3つ目鬼マキ】「いたたっ」
【オルム】「はっ! こっちこっち! こっち!」
【3つ目鬼マキ】「いたたたたっ。これは困りましたね。え~いっ!」
【オルム】「おっと」
 マキ、棍棒を振り回して距離を取る。
【3つ目鬼マキ】「ふぅ、いつもアホみたいに突進してくる二人を相手にしているのでやりづらいです」
【1つ目鬼ミルキ】「誰がアホニ!」
【2つ目鬼ドンキ】「あははは、ミルキのことか」
【1つ目鬼ミルキ】「お前もだアホ!」

【ポムモモ准将】「軽いダメージで、すでに回復しているぽむ」
 ポムモモは指を輪っかにして3つ目鬼マキを見る。
【ガンスロット】「解説をしておくと、鬼は一部の魔獣のように天然のシールドをまとっている状態でがんす。天然シールドは能力者の状態によって防御力自体が強弱するでがんす。気合を入れていれば強い攻撃に耐えられる、気を抜いていると怪我を負うこともある、という感じでがんす」
【ポムモモ准将】「天然の場合はシールド切れで気絶することはないぽむ。天然シールドを持つ相手に勝つには、シールドを越えて肉体に実ダメージを与えることぽむ」
【キオ】「鬼って魔獣なの?」
【ガンスロット】「鬼も“人”としての進化を踏んでるから、最終的にはアリエル不要に進化したでがんす。でも龍の自然界からエネルギーを取り入れる能力は残っているので、アリエル不要で魔法石を作れるでがんす」
【キオ】「へー」
【1つ目鬼ミルキ】「体のどこかに魔法石があるのかニ?」
【2つ目鬼ドンキ】「どこだ、どこだ?」
【3つ目鬼マキ】「頭の中という話ですよ。見ようとか思っては駄目ですよ。さすがに何日も動けなくなります」
【2つ目鬼ドンキ】「それは痛いだろ」
【1つ目鬼ミルキ】「さすがにそれはしないニ」
【キオ】「え、ええっ! 痛いで済むの!?」
【ガンスロット】「それは知らなかったでがんす」
【ポムモモ准将】「鬼の強靭さ、予想以上ぽむ」

【パーティーメンバー】「回復入れておくよ。大地の力と魂の呼応を───シールド回復!」
【オルム】「サンキュー、助かった」
【1つ目鬼ミルキ】「人間は仲間に頼らないといけないから面倒くさいニ」
【2つ目鬼ドンキ】「シールドが切れると気絶するしな」
【3つ目鬼マキ】「でも、シールドが残っている間は滅多に大怪我をすることがないと言うから便利ですよ」
【1つ目鬼ミルキ】「怪我なんてすぐに治るニ」
【3つ目鬼マキ】「人間は簡単に治らないんですよ」

【オルム】「仲間に頼るのはシールドの回復だけではありませんよ。仕掛けるぞ!」
【パーティーメンバー】「行くよ! 大地の力と魂の呼応を───力を鎧に───シールド強化!」
【パーティーメンバー】「猛れ、戦士たちよ! ───ブーストアップ!」
【パーティーメンバー】「猛れ、戦士たちよ! ───ブーストアップ!」
【パーティーメンバー】「風よ、背中を押せ! ───ブーストアップ!」
【パーティーメンバー】「風よ、背中を押せ! ───ブーストアップ!」
【オルム】「行くぜ、流転迅雷!(るてんじんらい)」
 ピキピキッと魔法石が2つ弾ける。弧を描いた高速移動でマキの背後に回り込み死角からの強打を放つ。
【3つ目鬼マキ】「速い! ───だけでなく、重い!」
 それを棍棒で受ける。
【オルム】「受けた! ならば二の太刀!」
【3つ目鬼マキ】「この強打で連撃!? くっ!」
 棍棒で受けるが、弾かれてバランスを大きく崩す。
【オルム】「三の───太刀!」
【3つ目鬼マキ】「これが本命の一撃! くっ! いたたた」
 三打目は脇腹を打たれる。転がり間合いを取る。

【ガンスロット】「攻撃バフ4重掛けからの必殺技の三連撃! 私の知っている限り、オルム選手のこの必殺技が、初見で2撃も防がれたのは初めてでがんす。3撃目も自ら飛んで威力を殺したように見えたでがんす」
【ポムモモ准将】「マキ選手の3つ目の目、額の目に要注意ぽむ。他の目とは逆に動いていたりするぽむ」
【ガンスロット】「死角が常人とは少し違うのでがんすかね」

【オルム】「正直、丈夫で力が強いだけと侮っていました。剣術を習った経験がありますね?」
【3つ目鬼マキ】「私も侮っていました。なるほど、人は力を合わせて戦うと、こうも強くなれるのですね。ふふふっ」
 マキの目が赤く光る。笑みとは裏腹に今まで見せていた隙はなくなる。

【ガンスロット】「“気”が明らかに目に見えるでがんす」
【ポムモモ准将】「冷気ぽむ。周囲の温度が下がったぽむ」

【オルム】「・・・・・・これはすごいプレッシャーですね。せめて楽しんでいただいてから散りましょうか」
【パーティーメンバー】「ブーストアップ!」
 再び多重バフ。
【オルム】「行くぞ! 超・流転迅雷!」
 ピキピキピキッと魔法石が3つ弾ける。

【ガンスロット】「攻撃に全振り! 防御を捨てた攻撃5重バフでがんす!」
【ポムモモ准将】「そして、オルム選手の真必殺技───!」

【オルム】「一の太刀!」
【3つ目鬼マキ】「はあっ!」
 剣撃を棍棒で弾く。
【オルム】「! 二の太刀!」
 弾かれた勢いを利用し反転しての剣撃。
【3つ目鬼マキ】「はあっ!」
 棍棒で弾く。
【オルム】「三の太刀っ!」
 また弾かれた勢いを利用し反転しての剣撃。
【3つ目鬼マキ】「これは! 力を利用されている!? それならば」
 今度は受け流す。だが受け流された勢いに逆らわずにオルムは加速する。
【オルム】「まだ終わりませんよ!」
【3つ目鬼マキ】「四撃目!?」
【ガンスロット】「オルム選手。受けられても、流されても、加速していくでがんす」
【オルム】「四の太刀!」
【3つ目鬼マキ】「ならば、向かい撃つ! はぁぁぁっ!」
【オルム】「くっ! さすがは鬼の強撃!」
【ガンスロット】「マキ選手、正面から両手打ちの強打でオルム選手の剣を弾いたでがんす!」
【ポムモモ准将】「しかしオルム選手、その反動でさらに加速ぽむ!」
【オルム】「これが真必殺の五の太刀ッッッ!」
【3つ目鬼マキ】「真後ろに! くっ!」
【ガンスロット】「マキ選手、バランスを崩しての片手棍棒! オルム選手の強打が迫るでがんす!」
 ガキンッ!
【ポムモモ准将】「弾き飛ばされたぽむ!」
【オルム】「くっ!」
【ガンスロット】「弾き飛ばされたのはオルム選手の剣の方でがんす! 必殺技、超・流転迅雷、不発でがんす!」
【3つ目鬼マキ】「ふ~、危なかったです。四撃目、思い切って迎え撃ったのが正解だったみたいです」
【オルム】「それで手が痺れて、握力が持ちませんでした。やれやれまだ修行不足です。参りました」
 オルムは両手を上げる。
【ケンザキ少将】「勝者、マキ選手!」
 ゴォォンと銅鑼が鳴らされる。
【3つ目鬼マキ】「お粗末様です」

【ガンスロット】「勝敗は予想通りでがんすが、内容は互いに予想を越えたのではないでがんすか?」
【ポムモモ准将】「鬼って人間離れしたパワー頼りの戦い方をすると思っていたぽむ。確実に剣術の心得を持っているぽむ」
【ガンスロット】「一方、オルム選手。そんな鬼を相手に大健闘でがんす。最後の一撃が決まっていたら、鬼とは言えど相当なダメージを受けたと思うでがんす」

【2つ目鬼ドンキ】「人間、意外と強いぞ!」
【1つ目鬼ミルキ】「早く戦いたいニ! マキ、早く交代ニ!」

【キオ】「・・・・・・かぶった」
【エンジ】「はははは、かぶったでござるな」
 一方、次の対戦相手のキオは苦い顔をしていた。



◆36-4 マキvsキオ

【ガンスロット】「第1戦・1番札・2人目は『小さな竜巻・キオ』でがんす。四ツ星剣士でありながら、声の大きな元気な伝令係として有名になりつつある戦士でがんす。先の西部のケンタウロス討伐戦でも大活躍だったでがんす」

【観客】「あー、あの子か」
【観客】「子供っぽい声だとは思っていたが、本当に小さいな」
【ポムモモ准将】「今回選ばれた30人の中では唯一の四ツ星ぽむ」
【ガンスロット】「本当は同パーティーの五ツ星忍者であり、猿忍者頭首の弟である『猿忍者・山の隊隊長・エンジ』氏が指名されたのでがんすが」

【エンジ】「忍者のしきたりにより、表立った試合は辞退させてもらうでござる。にんにん」

【ガンスロット】「と言う事で同パーティーの『小さな竜巻・キオ』選手が推薦されたでがんす」
【ポムモモ准将】「自信のありそうな推薦だったぽむ。・・・・・・でも、苦笑しているぽむ?」
【エンジ】「ははははっ。試合順が悪かったでござる」

【キオ】「えーいっ!」
【3つ目鬼マキ】「なかなかいい攻撃です。でも・・・・・・」

【ガンスロット】「回転を基本に、敵の攻防を利用して自らの攻撃力を上げて行くでがんす。これは・・・・・・」
【ポムモモ准将】「オルム選手の戦い方とかぶってしまったぽむ。しかもオルム選手は五ツ星、しかもバフ乗せまくりの必殺技だったぽむ」

【キオ】「えいっ、えいっ、とうっ!!」
【3つ目鬼マキ】「いたたた。あれ? 意外とやり辛い?」
【ガンスロット】「どうしたことでがんしょ」
【ポムモモ准将】「意外とヒットしているぽむ?」
【3つ目鬼マキ】「さっきの方は段々と速くなって行ったのですが、この子は速くなったり遅くなったりムラがあって。いたたたっ」
【エンジ】「ムラじゃなくて緩急でござるよ」
【ガンスロット】「なるほどでがんす。体を小さく畳んだ回転は速さ重視───」
【ポムモモ准将】「加速して大きく体を使った強打を打ち込むぽむ」
【3つ目鬼マキ】「いたたた! でも、攻略法は同じですね? えいっ!」
【キオ】「わっ!」
 マキ、キオの攻撃に棍棒を合わせる。ジ~ンと効果音が聞こえそうなほどに、キオの腕が痺れた。
【3つ目鬼マキ】「はい、はいっ!」
【キオ】「受けちゃ駄目だ! 避けないと・・・・・・無理っ! 流しっ! ひぃ~」
 ジ~ンと効果音が以下略。
【エンジ】「はははは、気付かれてしまったでござるな。握力が無くなる前に、華々しく散るでござるか」
【モリー】「みんな、準備を」
【フーコ】「オッケー姉御」
【オックス】「姉御に合わせて行くぞ」
 フーコ、オックスはオルル王国・南西部野盗討伐作(総指揮・ライカ少将)で名前が出てきた軍師。以降、名前は出てなかったがモリー・パーティーとは一緒に行動している。モリーとは同門でモリーが先輩の関係。今回はバフ持ちとヒーラーを借りて、キオのサポートに特化したパーティーを組んでいた。

【キオ】「とうっ! 良し、距離を取ったぞ! エンジ師匠、あれを試してみていい!?」
【エンジ】「うーん、この際、思い切って行ってみるでござる」

【モリー】「行くぞ! 猛れ、戦士たちよ! ───ブーストアップ!」
【フーコ】「猛れ、戦士たちよ! ───ブーストアップ!」
【オックス】「猛れ、戦士たちよ! ───ブーストアップ!」
【パーティーメンバー】「大地の力と魂の呼応を力に! ───ブーストアップ!」
【パーティーメンバー】「風よ、背中を押せ! ───ブーストアップ!」
【キオ】「いっくぞ───! 美味しいところ───とおっ!!!」

【ガンスロット】「魔法石の消費3つの特攻技。威力は五ツ星クラスと定評があるでがんす。───が、違うでがんす!?」
【ポムモモ准将】「それを跳躍に使ったぽむ!」

【キオ】「キオ・ミサイル・ダブルッッッ!! 美味しいところ───いただきぃぃぃぃ!!」
【ガンスロット】「魔法石の消費3つの大技を二重がけでがんす!」
【ポムモモ准将】「おお、これはすごそうぽむ!」
【エンジ】「それが、試してみて失敗だった技でござる。1割程度パワーアップというところでござるな」
【ガンスロット】「10%のバフに魔法石3つでがんすか」
【ポムモモ准将】「贅沢な魔法石の使い方ぽむ。というか無駄」

【3つ目鬼マキ】「避ければ済んでしまいそうですが・・・・・・折角ですので受けて立ちましょう! はぁぁっ!」
【キオ】「うぉぉぉぉ───っ!」
 ガキィィィィィンと剣と棍棒がぶつかる。
【キオ】「ぬぬぬぬぬぬぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
【3つ目鬼マキ】「むぅっ──────ぅぅぅぅ!! はぁぁっ!」
 マキの目が赤く光を放つ。
【キオ】「うわぁぁっ!! ぎゃっ!」
【ガンスロット】「弾き飛ばされキオ選手、地面に叩きつけられたでがんす」
【ケンザキ少将】「気絶確認ッス。勝者、マキ選手!」
 ゴォォンと銅鑼が鳴らされる。
【3つ目鬼マキ】「あ、あらあら。いい攻撃だったから、つい本気でやってしまいました。大丈夫ですか!?」
【ホルン】「うん。怪我もなくただの気絶~」
【モリー】「大丈夫、この子、丈夫だから」
【オルム】「最後まで剣を離さないとは、見上げた根性」
【エンジ】「はははは、そうでござるな」
【キオ】「きゅう~」




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